2026/09/09 Wed
PCインストラクター 教員 教育
PCインストラクターが日本の高校とオンライン交流してみた

はじめに
Malo. サモア語で「やぁ」くらいの意味です。PCインストラクターのTakuです。首都アピアのSt. Joseph’s Collegeで教員をしています。サモアのCollegeは大学生でなく中高生が通います。自分は、小1から数えて第10学年(つまり高1)の約100名(全4クラス)のコンピュータの授業を受け持っています。サモアの学校は1月から12月を年度としています。概ね12月いっぱいは年末のお休みです。11月もほぼ試験だけで終わります。つまり、間もなく10月ですが、もうすぐ年内の授業が終了します。という区切りのタイミングで今年1年のサモア教員生活を振り返ってみたくなりました。色々なことに挑戦しましたが、一番やってよかったと思うのが日薩生徒のオンライン交流です(とある本邦私立高校に協力いただきました)。ポイントは、一般的な単発交流に留まっていないという点です。複数回にわたり異なるテーマで相手国のことを深く学べる機会を、自ら設計して提供できました。将来的に相手国に関連する仕事がしたいと思う生徒が両国から出てくればいいなぁという思いです。我ながら良い取組だったと思っているので本記事にて深堀します。一般邦人読者の皆さまには「Taku、サモアで頑張っているな」「自分もサモアに行ってみたいな」「いきなり協力隊はハードル高いけどサモアの学校と交流してみたい/させたい」「サモアとは関係ないかもしれないけど将来なにかに挑戦したい」などと思っていただければ嬉しいです。
Why? 日本の高校と交流する道を選んだ理由
一言で答えるなら、任国だけでなく本邦の教育界にも貢献したいという気持ちがあったからです。私は三十余年前に株価時価総額が世界一位だった国内大手企業の現役社員です(職種はAI研究開発)。父親の背中を追って同じ会社に入社しましたが、時期が遅かった。平成の終わり頃です。相対論ですが、国内企業が世界に与えられるインパクトが父親の時代と比べて小さくなってしまったこと(米中の二番煎じ感)を悲しく思った時期もあったものです。すごく簡略化して言うと、国内の基準でリスク回避を優先してきた結果、壁にぶち当たってしまったわけですね。これは弊社だけの問題じゃない。日本全体の問題だ。それで、長くなるのを避けるために話を飛躍させますけど、特に重要なのが日本国民の海外に対する関心の醸成というか外国アレルギー(例:異国の言語や見た目の違う人に対する恐怖心)の緩和だという持論に行きつきました。こういうことには大人より未成年者の方が柔軟ですね。そして、未成年者は同年代との方が仲良くなりやすいですね。つまり、自分もその年齢層にアプローチすべきなんです。だから、大人を相手に専門性を発揮する技術職での海外赴任にも将来的には関心ありますが、専門外でも海外で教育職に携われる協力隊への現職参加をひとまず志したわけです。実際にSt. Joseph’sに来てみると有難いことに生徒の本邦への興味関心は想定以上のものでした(アニメ等のお陰です)。この興味関心の大きさを日本の中高生にも伝えたいなぁと思っていた矢先に良い話が舞い込んできました。在サモア日本大使館の職員さんからです。大阪万博でサモアに縁があった私立高校が英語の実践演習も兼ねてサモアの交流先(当面のオンライン交流+将来的な相互訪問)を探していると。しかも、探究学習科目※の一環での実施を検討しているとのこと、探究科目であればサモアのことを深く学んでくれるだけの環境も整っているだろうなぁと思って二つ返事で引き受けたのでした。
※高校における「総合的な探究の時間」は、社会の変化に主体的に対応できる資質・能力の育成を背景に2022年度から必修化された科目です。課題設定・情報収集分析・表現の一連の工程に生徒が主体的に取り組みます。(文科省)
What? 交流は文書交換形式にした
MS WordやPowerPointで作成した文書等を相互に送付するという形態に落ち着きました(一部、学校機材不足の関係で生徒が手書きしたものを私が私物のiPadでスキャンしたものもあります)。そうなった経緯について詳しく書いてみます。最大の課題は、日本とサモアで時間を合わせることでした。もちろん、時差の話もあります。でも、メインの課題はそこではないです。当地はのんびり楽園の南の島です。時間に対する概念が日本とは違います。日本のように綿密に計画を立てて準備してそれどおりに実行することは少ないです。人々はとても柔軟に生きています。何かあれば学校全体で授業を中止して集会などを行います。つまり、「何月何日何時にオンラインで会いましょう」と約束しても、それが急に果たせなくなる虞があるのです。サモアの人々にとってドタキャンは失礼に当たらないケースがあります。しかし、それでは日本の高校に対して大迷惑を掛けてしまいかねません。そこで、ビデオ通話でなく文書を主媒体とした交流を提案したわけです。もちろん、私がコンピュータ教員ということで、WordやPPTやウェブ検索の練習という任国学習指導要領に沿った名目を持たせて校長の承認を取りやすくしたという話もあります。あとは、喋りより手紙の方が英語初学者の邦人高校生にはハードルが低いかもという観点もあります。
How? 交流文書の作成方法
最初の頃は、あまりテーマを絞り込まず、自己紹介や自分の国の好きなところなどについて生徒一人ひとりに手紙を書かせました。先方の生徒さんも手紙一件いっけんについて返事をくれました。これを2~3往復ほど続けました。しかし、自分として段々手紙の振り分けコストが気になるようになってきたことに加え、生徒も文通のマンネリ化に苦しんでいる様子が観て取れました。そこで、先方が探究の時間を使っていることを思い出し、次のような提案をしたのです。班ごとにサモアに関する意義のある探究テーマを立てて軽く下調べしたうえで不明点を本校生徒に質問する形にしていただけないかと。ポイントは手紙を量的に減らしつつ質的に深めることです。先方の窓口の先生は私の意図を正確に理解してくれました。6つの班から、スポーツ・学校生活・食事・娯楽・週末の過ごし方・気候の各テーマで日本の実態を紹介する資料を頂戴しました。この資料を活用して本校生徒たちには日本の高校生の生活をよりリアルに伝えることができました。また、資料中には先方生徒さんからのサモアの実態に関する質問事項に加え、その調査を行う社会的意義に関する僅かな説明も含まれていました。私の方で意義や課題を多少推測補強しながら質問事項をアンケート形式に再構成する形でフレーミングを行い、本校生徒に回答させました(一部は選択式;一部は自由記述)。共有したアンケート結果を先方生徒さんが探究学習の一助にしてもらえれば幸いです。実際に学習に生かしてくれるかは未だ分かりませんが、少なくとも喜んではもらえているとのことなので、それだけでも隊員冥利に尽きます。私の本業は研究職ですから、十年来の社会人経験で培った研究や探究の遂行方法に関する自身のノウハウを活用できたのも本望です。国内勤務先は大きい企業なので復職後は研究所に限らず今回と同じような喜びを味わえる部署や職場を探していきたいです。
おわりに
今年は私にとって任期中盤の重要な1年でした。自分の協力隊参加動機のひとつであった本邦教育界への接近に踏み込めた点に満足しています。サモアは小さい国です。人口は日本の中核都市程度(例:帯広市・甲府市・福井市・鳥取市など)しかありません。国土面積も東京都と同程度しかありません。でも、日本大使館があります。大洋州として初の隊員派遣国でもあります。OB会の活動も活発です。つまり、Team Japanの連携が取りやすいということです。さらに、特に中学以降は公教育が主に英語で行われるので、英語を強化したい本邦教育機関ともマッチしやすいです(サモア以外の協力隊派遣国の多くではスペイン語やフランス語などが使われています)。その環境のおかげでここまで来ることができました。サモアらしいことが出来たかな~。JICAサモアは未来の協力隊員を募集しています。協力隊への応募を検討中の方、第一希望にサモアの要請をご検討ください。もう少し現役隊員数が増えると活動の幅がより広がりそうなんですよね~。はい、宣伝のために記事を書きました。でも、学び盛り働き盛り育て盛りの全ての皆さんが誇りを持って生活できる日本や世界であることを願っているのも本心です。
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