JICA海外協力隊の世界日記

セネガル便り

助産師/キツネの言葉を思い出せばいい

アフリカ大陸の西側にあるセネガルへは日本から約14000km(最西端から東京までは13110kmらしい)。

とっても遠いけど、長年憧れていた青年海外協力隊としてこの地に来られることが嬉しくて仕方なかった。自分には何もないから協力隊にはなれないと思っていたけど、あきらめきれずに社会人から助産師を目指してやっとここまで来たのだ。各国の『星の王子様』を集めている私にとってサン=テグジュペリが滞在していた国が任国になるなんて運命だと思った。セネガルが第2に故郷になるくらい、一生懸命がんばろう。そう思っていたはずなのに、セネガルで1年が経つ頃にはセネガルで過ごすことがつらくなっていた。活動が思っていたように進まないことよりも、毎日「結婚しよう」「お金ちょうだい」「まだフランス語話せないの?」「ウォロフ語はわからないんだね。」って言われることに心が削られていった。悪気がないのもわかっているし、ただの雑談で言っているのもわかる。『気にしなくてもいい』、『聞き流せ』と繰り返し自分に言い聞かせることにも疲れてしまった。

疲れすぎて、フランス語を聞くことすら辛くなってしまって、誰にも会わない日はほっとした。そうすると『何しにここに来たんだっけ…』という思いが頭をグルグル回りだす。先輩隊員が任国外旅行で「なんだか吹っ切れた。」と言っていたのを思い出し、自分も行くことにした。

そこはタンザニア。そう、キリマンジャロに登ることにしたのだ。

キリマンジャロは5895mもあって、セネガルに来るまで素人の自分が登れるとも登ろうとも思っていなかったのに。登山経験もなければ普段まったく運動もしていないし、登山道具も持ってきていない(全部レンタルした)。ただ、「何かを吹っ切るため」だけに4日かけて登る。登れば登るほど植物は姿を消していき、夜には星が、手が届きそうなくらい近くに見えた。山頂アタックは夜の0時に出発する。止まれば寒いのに、空気が薄いから5歩歩いただけで休まないと次の一歩が踏み出せない。なんで高いツアー代を払って、こんな辛い思いをしなきゃいけないんだ…と何度も後悔した。そんな中で見る夜明けの太陽はとてもきれいだった。

太陽なんて、毎日昇るし、どこにいたって同じはずなのに。もうきれいなモノしか見たくない、って心の底から思った。そしてセネガルのことを思い出してみた。セネガルのきれいなモノってなんだろう。

思い出すのは優しい人たちのことだった。もう一生きれいなモノしか見たくないし、意地悪な目にもあいたくない。だからこそ、セネガルの人たちのキラキラしたところをもっともっと見ていこう。理想と違うことばっかりに気をとられて、表面的なことしか見えていなかった気がする。大切なことは目には見えないとキツネが言っていたことを思い出す。もう一度、セネガルでがんばってみようと思えた。もしかしたらセネガルのことを好きになれないまま終わるかもしれない。でも、任国外旅行に行く前に比べて、セネガルに根をはれた気がする。あと1年、ここで生きていく。嫌な目にもあうし、デリカシーのない言葉に傷つくことも変わりないけれど、セネガル人の優しい気持ちを見逃さなければ、大丈夫な気がする。1年後、どんな気持ちでここを離れるかはわからないけど、きれいなモノをいっぱい見て過ごしたいと思う。道を歩いていると声をかけてくれる人や、うるさいくらいに手を振ってくれる子ども達や、はにかみながら握手してくれるちびっこ達がいるセネガルで今日も過ごす。日本に帰ってからも思い出すであろう、たくさんのきれいなモノたちと、今日という日を生きている。ウォロフ語の『星の王子様』を読みながら。

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