2026/01/28 Wed
活動
農村部における理科教育支援の現場から
2024年度1次隊、理科教育で派遣されている池田です。
南アフリカ共和国北東部、リンポポ州の農村地域に位置するVuwani Science Resource Centre(ヴワニ科学資源センター)を拠点に、私は理科教育支援活動に従事しています。
赤土の道を車で走り、周辺の学校を訪問する日々は、日本で教壇に立っていた頃とは大きく異なる環境にあります。
当地の学校では、実験器具や薬品が整っていない場合がほとんどで、「実験を行う」という行為そのものが、決して当たり前ではありません。
ビーカーなどの器具、実験に使う薬品などは基本的には学校にないので、私の職場であるヴワニ科学資源センターから学校にそれらをもっていき、出張型の実験を行っています。
生徒たちは限られた環境の中で、目を輝かせながら実験に取り組み、変化の一つひとつに素直な驚きと関心を示してくれます。
実験後には、何人もの生徒が近寄ってきて「Thank you, Sir」と声をかけてくれます。
日本では決して珍しくない一言かもしれませんが、この地においては、教育への感謝や学びへの喜びが率直に表現されることが多く、その言葉一つひとつが、日々の活動の大きな励みとなっています。
また、様々な地域の学校を訪問し、理科の実験を演示するサイエンスショーを行ってきました。
泡が突然激しく発生するエレファントトゥースペースト、炎の色が変わる炎色反応、空気砲など、日本でもよく知られた演示実験であっても、生徒たちにとっては初めて目にする現象である場合がほとんどです。
泡が噴き出す瞬間や、炎の色が変わる瞬間には、教室や校庭がまるでスタジアムのような歓声に包まれます。
これらの活動は、単なる「見せ物」ではなく、
「理科は難しいもの」から「理科は面白いもの」へと認識を転換させるための入口であると考えています。
質疑応答の中で、「もっと知りたい」「なぜそうなるのか」という声が上がるたびに、理科教育の可能性を改めて実感しています。

私の活動するセンターの機材管理が十分に整っていないことも、日々の課題の一つです。
必要な器具がどこにあるのか分からず、倉庫を探し回ることも珍しくありません。
しかし、そうした状況だからこそ、現地の同僚と協力しながら、
「何がどこにあるのか」
「次に使う人が困らないようにどう整理するか」
といった点を一緒に考え、少しずつ改善を試みています。
教材面では、現地の設備や資源の制約を踏まえ、低コストで実施可能なサイエンスショーマニュアルの作成にも取り組んでいます。
Materials (使用する器具や試薬)/ Preparation(実施前の準備) / Procedure(実施の手順) / Explanation(実験の説明) の形式で整理し、現地で働く人々が継続的に活用できる形を目指しています。
日本の理科教育で当たり前とされている実験も、この地では貴重な教材となり得ます。
活動を通じて強く感じるのは、理科教育が単なる知識伝達ではなく、
「考える力」
「問いを持つ力」
「自分の言葉で説明する力」
を育てる営みであるということです。
限られた環境であっても、実験という体験を通じて、生徒たちは確実に何かを掴み取っています。
実験後にお礼を言いに来る生徒の姿や、
サイエンスショーでの大きな反応を見るたびに、
「この場所で理科を教える意味」を理解しつつあります。
日本しか知らなかった頃の自分からは、想像もできなかった現在の姿がここにあります。
赤い大地の上で理科を教え、現地の人々と共に試行錯誤を重ねる日々を、今では誇りに思っています。
この経験を「一過性のものに終わらせるのではなく、現地に根付く形で何を残せるのか」
その問いを胸に、今日もまた次の実験の準備を進めています。
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