2026/09/23 Wed
畜産
【ウガンダの畜産】#45 ウガンダの畜産と伝染病

Orirota!
ニャンコレ語で「おはよう」です。 前回に引き続き、2024年2次隊、獣医・衛生の中森がお送りします。
これは牛の出荷トラックの様子です。 毎度のことながら、その迫力には圧倒されます。

今回は、動物の感染症についてのお話です。 こちらは以前訪問した家畜市場。
定期市場の一角で、牛や羊、ヤギなどが売買されています。牛については、行政の獣医師が臨床所見を確認し、病気の有無や輸送経路をチェックします。 ところが、この市場は現在開催されていません。 口蹄疫が発生し、感染拡大を防ぐために家畜の移動が制限されているからです。

口蹄疫をご存じでしょうか? 牛、豚、羊、ヤギなどの偶蹄類が感染する、非常に感染力の強い家畜伝染病です。口や舌、蹄の周囲、乳頭などに水疱が形成され、水疱が破れてびらんになることで、口腔内の痛みや強い跛行(歩行困難)を引き起こします。そのため、食欲が低下したり、動くことを嫌がったりするようになります。 また、乳量の低下、体重減少、発育遅延など、生産性にも大きな影響を及ぼします。 そして何より恐ろしいのが、その感染力の強さです。 日本でも2010年に宮崎県で大規模な発生がありました。日本は口蹄疫の清浄国だったため、感染拡大を防ぐために多くの家畜が殺処分されました。
一方、ウガンダは口蹄疫の常在国です。 地域によって発生状況は異なり、清浄地域と非清浄地域があります。非清浄地域では、ワクチン接種や家畜の移動制限など、感染拡大を防ぐための対策が行われています。 私が活動しているヌトンガモ県も、以前は清浄な地域でした。 しかし、今年5月頃に口蹄疫が発生。 感染地域となったことで、家畜だけでなく、畜産物の移動も制限されました。これらが感染源となり、感染拡大の一因となる可能性があるためです。町のレストランからは牛肉や豚肉などが姿を消し、人々の生活にも影響が出ています。短期間で規制が解除されるとの見込みとは裏腹に、感染地域は拡大し、規制も長期化しています。
では、なぜ感染を抑えることが難しいのでしょうか。 ウガンダでは、ワクチン接種や移動制限などによって感染拡大を抑えます。一方、日本のような大規模な殺処分は基本的に行われません。処分したところで、金銭保証はありません。 口蹄疫は、子豚や子牛では感染による死亡率が高い一方、成体では死亡することはまれで、多くの場合、時間の経過とともに回復します。しかし、回復するまでの間もウイルスを排出し続けるため、他の家畜への感染を広げる可能性があります。 さらに、人や車両、道路、市場なども感染拡大の要因となります。 現地の獣医師は、消毒や移動制限の重要性を理解しています。 しかし、その重要性が農家の行動にまでつながるとは限りません。 病気が発生していないときに、消毒薬や消毒設備にお金をかけることは、農家にとって簡単なことではないからです。 「明日の生活にもお金が必要なのに、まだ起きていない病気のために消毒薬を買うのか?」 これが、現地で感染症対策を行う難しさの一つです。 もちろん、農家の意識だけの問題ではありません。経済的な負担や、行政による支援、地域全体で感染を防ぐ仕組みなど、さまざまな課題があります。 だからこそ、感染症対策では、「発生してから対応する」のではなく、「発生する前に持ち込まない」ことが重要なのです。
人や物が国境を越えて行き交う今、海外で発生している家畜伝染病が日本に持ち込まれる可能性は、決して遠い話ではありません。 実際に先日、新千歳空港で海外から持ち込まれたヤギ肉から、感染性のある口蹄疫ウイルスが検出されるというニュースがありました。 「海外の病気だから日本には関係ない」とは言えません。人や物の移動を通じて、口蹄疫は私たちのすぐ近くまで入り込む可能性があります。 海外で農場や家畜市場を訪れた方は、帰国時に靴や衣類、荷物などを介して病原体を持ち込まないよう、十分注意してください。 空港などでは靴底消毒を行い、必要に応じて動物検疫所へ相談・申告しましょう。 海外から病気を持ち込まない。 そして、日本から病気を持ち出さない。 現地で感染症対策の難しさを目の当たりにしているからこそ、私は、日本にいる私たち一人ひとりの「持ち込まない」という意識が大切だと感じています。 小さな行動が、日本の畜産を守ることにつながります。
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