JICA海外協力隊の世界日記

ウズベキスタン便り

日本の職場と比べて悩むこともあるかもしれないけれども、今働いている人にやっぱりおすすめしたい協力隊というキャリア~現職参加のススメ~


(執筆:JICA海外協力隊 コミュニティ開発 小原瑠夏)


1. はじめに:協力隊をキャリアの一つとして考えているあなたへ

今回は、仕事を続けるか、協力隊に行くか悩んでいる人に向けて、少しでも参考になればと思い、現職参加という形で協力隊に参加した経緯と感じたことを綴ります

現職参加とは、現在お勤めの方が、休職などの形で所属先に籍を残したまま協力隊として参加する仕組みです。詳細はJICA海外協力隊のページをご参照ください。

https://www.jica.go.jp/volunteer/application/support_system/incumbent_participation/


2. 私の現職参加のかたち:積水化学からウズベキスタンへ

私は現在、積水化学工業株式会社を休職し、ウズベキスタンのイノベーションセンターで活動をしています。派遣前訓練+派遣期間で約2年間の期間を休職扱いにできる制度のうち、私は訓練期間を除いた派遣期間2年間の休職を選びました。会社での初事例にもかかわらず、訓練期間を含む約2年半の休職を認めてもらい、ウズベキスタンへの渡航に背中を教えてくれた同僚や上司、そして会社には感謝の気持ちでいっぱいです。


3. 応募のきっかけ:今の仕事とつながる「イノベーション」というキーワード

私は派遣前、イノベーション推進グループという部署で、社内アクセラ(社員と一緒に新規事業を創出&成長を加速させるプログラム)の設計と運営を担当していました。たまたま目にした協力隊の募集で、「イノベーションに関わる立案や啓蒙活動に関する業務」を見つけ、まさに自分のスキルと重なる分野で貢献できるのではないとひらめきました。今後どんな組織でも、社会に新たな価値を生み出せる人材になりたいというキャリア感をもっていたため、協力隊への応募を心に決めました。


4. 現職参加のメリット:挑戦できる安心感とつながり

いざ協力隊の道を検討し始めて驚いたのは、会社にはJICA海外協力隊に参加している間休職を認める制度があるいうことです。この休職規定は、新しい地で挑戦してみようという気持ちに拍車をかけました。好きな仕事にピリオドを打たずに、また様々な経験を積んだのちに帰る場所があることは、私の挑戦の後押しをしてくれました。実際活動中も、一緒に働いていた仲間たちと定期的にやりとりをしており、ウズベキスタンまで訪ねてきてくれる人もいます。こうした繋がりは、私の大きな心の支えとなっています。

JICAHPによると、現職参加の派遣実績のある企業・団体は、延べ2,000団体以上。もしあなたが今、仕事を辞めるか悩んでいるなら、一度会社の休職規定を確認してみてください。交渉は必要ですが、会社と繋がりを保ちながら、新たな挑戦や経験を積めるのは、現職参加ならではのメリットだと思います。


5. 海外での戸惑い:日本とのギャップに悩む日々

もちろん、現職参加の身分で協力隊に参加してみて、良いことばかりではありません。これは現職参加に限りませんが、日本の職場で当たり前だった仕事の進め方や価値観が、現地では全く通用しないことも多々あります。「こんな働き方しかできないのは、海外経験を積んだとは言えないのではないか?」「同僚たちは日本でプロジェクトをまわし、新規事業を立ち上げ着々と成果を出しているのに、自分はいったい何をしているのだろう?」と、焦ったり不安になったことも正直あります。また、目標向かって一緒に働ける人がいること、信頼できるチームがある職場環境が、いかに貴重だったのかを実感し、「日本に戻って働きたい」という言葉が口癖になっていた時期もありました。


6. 「働く」だけじゃない協力隊:思いがけない出会いと活動

それでも、協力隊の本質は「日本と同じように働くこと」「駐在員のように働くこと」ではありません。「働く」を越えた多様な活動を、他の隊員と共に創り上げることに協力隊の醍醐味があると気づいたのです。例えば、

・地元の小学生と一緒にクラブ活動でおにぎり作り

・大学生に日本の経済を紹介する

・とある学会で日本のイノベーションについてスピーチ

・研究者に日本語を教える

・研究者とチームビルディングで巻き寿司作り

・中央アジアの若者とユースフォーラムに参加

・がんと闘う子供たちと共にレクリエーション

をウズベキスタンで経験したことをここに書き示したら、枚挙にいとまがありませんが、これらはすべてウズベキスタンで体験してきたことです。日本で一つの会社に勤めていたら経験できなかったであろうかけがえのない経験を、他の隊員と共に築いています。

協力隊は決して一人で活動するのではありません。隊員の配属先に訪問したり、時には隊員に手伝ってもらったり、隊員同士の協力により、「働く」を越えた多様な活動が可能になるということを学びました。


7. 協力隊経験が職場に与える価値:救われた上司の言葉

帰国後、はたしての協力隊での経験が仕事の役に立つのか不安に思っていた時、日本の上司がかけてくれた言葉が、今も心に残っています。

「今は答えや結果を求めすぎなくていいし、結果が出ないことに焦る必要もないと思う。こはるか(筆者)の体験談や感じたことを遠い場所にいる人たち(日本の職場)に伝えることが最大の価値だと思う。」

協力隊の経験は、自分自身の成長だけでなく、職場や周囲に新たな視点をもたらすきっかけにもなっていることにはっとさせられ、この言葉に救われました。


8. おわりに:今、悩んでいるあなたへ

もし、今の仕事が好きで、でも海外で挑戦してみたい気持ちが少しでもあるなら、「現職参加」という選択肢をぜひ検討してみてほしいです。辞めなくても挑戦できる道があります。そしてその経験は、あなた自身にも、きっと今の職場にも新たな価値をもたらすと信じています。

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