2019/04/05 Fri
生活
【生活】ゴルフ場か牧場か?~森林伐採の現状~
<ごあいさつ>
Vea si goi?(地域言語で「How are you? ~調子はどうだい?~」)
今回は森林伐採の現状について、簡単にお話します。
<空から眺めてみよう~飛行機から見える景色~>
2019年3月、国内線の飛行機を利用して首都ホニアラの空港まで移動する途中、窓から見えた景色が気になり写真を撮影しました。
パッと見た瞬間は、「まるでゴルフ場か牧場か?」といった印象を抱かせる地域が多々見受けられます。確かに、首都ホニアラには1か所のゴルフ場があるものの、奥山ではなく海辺に立地しています。また、ソロモン諸島国内では牧場経営が盛んに行われているわけではありません。
それではこの「はげ山~樹木の無くなった山~」の正体は何か?樹木が生い茂る緑豊かな山から、大木が消え去った原因の多くは「森林伐採~ロギング:Logging~」によるものです。
<進む森林伐採>
ソロモン諸島の主要な輸出品目の一つであり、経済的にも大きな柱となっているのが森林資源です。なかでも、マレーシアを中心とする海外資本の伐採企業(ロギングカンパニー)がソロモン諸島国内で活発に操業しており、伐採した丸太の約90%以上は中国へと輸出されています。この木材輸出に係る関税や伐採企業のライセンス料はソロモン諸島における重要な収入源となっていることから、安易に森林伐採を取りやめることができない現状です。
国内では、標高400m以上の山林における森林伐採は原則禁止とされていることから、安易に過大な森林伐採が進んでいく恐れは少ないものと考えられていますが、ここ数年で森林伐採が確実に増加している状況は、丸太輸出量などの統計データによって説明できます。
また、伐採方法も重要なポイントです。以前であれば「択伐~selection cutting~」と呼ばれ、母樹(マザーツリー)となる木を残しながら抜き切りする手法が多くとられていましたが、近年では収益増加などを目的として「皆伐~clear cutting~」と呼ばれる、文字どおり森林内の樹木を全て伐採する手法がとられています。したがって、飛行機から見る光景はまるで「ゴルフ場や牧場?」のように全くもって樹木の見当たらない山林だったようです。
※皆伐作業を行ったとしても、土壌中に含まれる様々な種子が発芽し、将来的には森林が復旧していくこともあります(天然更新と呼びます)。しかし、迅速な土砂災害防止対策や周辺地域における生態系保全の観点からも、伐採跡地はただ単に放置するだけでなく、適切な保育管理のほか有用樹種の人工造林も併せて進めていくことが求められます。
<急速な都市化の進行>
首都ホニアラの都市化が急速に進行していることも森林伐採の一つの理由となっているようです。中心市街地には十分な土地スペースが無いほか、地上数階建てのビルを建設できるほどの技術力や資金力は簡単には得られないため、郊外で徐々に土地開発が進められているようです。
人口増加による森林環境への悪影響も懸念されますので、バランスのとれた都市環境の整備も必要となってきているように感じられます。
<写真の説明>
いずれも首都ホニアラ上空を撮影した写真(ガダルカナル島)
【写真①】首都ホニアラ西部の森林伐採状況
【写真②】森林伐採後の林内路網も目視できる
【写真③】都市部からさらに郊外に向かって開発が進む(写真上部)
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