JICA海外協力隊の世界日記

青森県庁林業職員の元気もりもり『森×森』活動記!!

【人】旧日本兵の御遺骨

 今回は旧日本兵の御遺骨についてお話します。

<歴史>
 第二次世界大戦中の1942年以降、ソロモン諸島では旧日本軍と米軍による戦闘が続きました。特に「ガダルカナル島の戦い」では旧日本軍約3万人のうち死者・行方不明者は約2万人にも上りましたが、その多くは餓死とマラリア等による戦病死だったと推察されています。
 当時、旧日本軍が作った滑走路は現在のホニアラ国際空港や、私の任地であるムンダ空港として運用されているほか、国内には戦争の痕跡が今なお数多く残されています。
 日本から遠く南へ約5,000キロメートルも離れた「ソロモン諸島」の名前を聞いても、今日の日本人はいったいどこに位置する国なのかわからない人が多いと思います、現に私もそうでした。確かに、近隣国や先進主要国と比べると決して馴染み深い国ではないかもしれませんが、こうした過去の背景を踏まえると、南太平洋の海に囲まれた単なる群島国の一つであるだけではなく、歴史的に見て非常に重要な国であるように思います。

<地元の人からのお誘い~洞窟散策~>
 本年5月、私が活動するウェスタン州ムンダの街を歩いていると、近所の若いお兄さんに声をかけられました。
 「エビナ、旧日本軍の御遺骨がある洞窟を紹介する、今度見に行こう」
 そうして、首都ホニアラからも隊員が遊びに来てくれたタイミングに合わせて、青年海外協力隊員3名と地元のソロモン人数名とで洞窟散策に向かいました。目標の洞窟は、なんと私の住居の裏山を超えて1時間半ほど歩いた地点にありました。普段足を踏み入れることがない場所でしたが、それほど遠くはない場所だっただけに驚きました。
 洞窟は入口と出口がつながっている、長さ20~30メートル程度の鍾乳洞のようでした。日本では岩手県の龍泉洞や安家洞などの鍾乳洞に入ったことはありましたが、もちろん、海外での洞窟散策は初めてのことでした。
 コウモリが頭上を飛び交い、恐る恐る洞窟内を歩くことになりました。ソロモン諸島では狂犬病は無いと言われているものの、媒介者の一種であるコウモリがたくさん飛び交う閉鎖的な空間を歩くというのは、なかなか良い心地がしません。
 さてこの洞窟、紹介してくれたお兄さんが言うには、「かつて、入口はお手製の扉でふさがれていて、この中に防空壕として旧日本兵が隠れていたらしい。米兵から手榴弾等によって爆破されたからか、入口と出口付近の上部は破壊されており、それぞれの周辺に1体ずつの旧日本兵のものとみられる御遺骨を発見した。」とのことでした。
 今回は、入口付近で1体の御遺骨の一部を発見し、持ち帰りさせていただきました。周辺には、今なお多数の遺留品が残っていました。飲み物を入れていたであろう水筒や銃撃戦の跡とみられる穴の開いたドラム缶、薬などが入っていたであろう容器、日本語で書かれた一升瓶やビール瓶(「ルービンリキ」と記載。逆から読むと「キリンビール」)。
 巨大な岩の下敷きになっている御遺骨もあるものと想定され、周辺を詳しく調べるとさらに御遺骨を発見できるものと予想されますが、多くの労務や多少の機械も必要と思われることから、我々だけではこれ以上の作業は困難でした。
 また、今回確認した洞窟のほか、さらに奥地へ歩いていくと数か所の洞窟がほかにもあり、そちらも旧日本兵が使用したと考えられる洞窟であるとのことでした。
 今回発見した御遺骨については、首都ホニアラにある在ソロモン日本国大使館へ届け出て、その後「日本青年遺骨収集団(JYMA)」を通じて日本へと帰還する予定です。

<これから>
 私がソロモン諸島へ赴任してから、首都ホニアラの街中のほか、任地ムンダ近郊の海域でも不発弾の処理が行われることがありました。直接の戦争当事者ではないソロモン諸島の人々の手によって、戦後74年を迎える今日においても戦争の後処理がなされる状況というのは、日本人として非常に複雑な思いを抱きます。
 ソロモン諸島には未だに7000柱を超す御遺骨の故郷への帰還が叶っていないとのこと。当地にて犠牲となられた方々に対して心より哀悼の誠を捧げるとともに、多くの英霊が祖国日本に帰れる日が一日でも早く来ることを祈っております。

<写真の説明>
【写真①】ウェスタン州ムンダ近郊にある洞窟の入り口
【写真②】同洞窟内部(狭いが、歩けるほどのスペースもある)
【写真③】同洞窟の出口

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