JICA海外協力隊の世界日記

Petit à petit(ぷてぃたぷてぃ)ベナン協力隊記

Petit à petit 鮮魚宅配プロジェクト

人や荷物を乗せたバイクタクシーが数多く行き交う。...そんなベナンの経済首都コトヌーには、同国唯一の漁港があります。鮮魚の宅配プロジェクトとは、ベナンで普及しているSNSとバイクタクシーを利用し、消費者が注文した鮮魚を宅配するサービスです。漁港活性化のために、託児所の活動と併せて取り組んでいたのですが、世界的なCOVID-19拡大により道半ばで帰国することになってしまいました。

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取り組みの背景

ベナンに住む人々は魚を良く食べます。特に海で獲れる魚は、身が大きくて柔らかいと評判で、大きな需要があります(※1)。しかし、同僚である衛生管理担当者は「消費者は鮮度よりも価格を重視する傾向があるので、販売側も鮮度に対する意識が高くない」と言っていました。そこで、要請内容が「漁港の活性化」だった私は、「鮮度が低くても安い魚を買う消費者」ではなく、「値段が高くても鮮度が良い魚を買う消費者」に向けたサービスの確立を活動の目標にしました。

貴重な海洋資源でもある魚が、今までよりも高く売れることで漁港で働く人々の収入が向上し、鮮度や品質が良い魚が手に入るようになることで消費者も満足する売り手と買い手とがWin-winの関係になるサービスを目指しました。日々、託児所運営の仕事をしながらも、魚を売る人、買う人、漁港で働く人々、料理人色々な人から話を聞き、同僚や仲買人女性組合と何度もミーティングを重ねました。

フェーズ1:宅配サービス

値段が高くても鮮魚を買うというターゲット層にアプローチするために、まずは、「便利さ」という付加価値を提供する宅配サービスから取り組むことにしました。しかし、国に”住所”が整備されていなかったり、そもそも資本金があるわけでもなく、人を雇うこともできなかったりするなど、様々な課題がありました。だったらあるものでやるしかない…注目したのが、バイクタクシーと、WhatsApp(※2)でした。

20円で取得した宅配専用の電話番号を、ポスター(1枚目の写真)やFacebookなどで宣伝して消費者に登録してもらいます。漁港を管理する事務所の職員がその番号を管理し、WhatsAppを通じて魚の注文があれば、知り合いのバイクタクシーのドライバーに宅配してもらう。サービス利用者は、電話でドライバーに配達先を説明する必要がありますが、サービス利用料と片道分の運賃を負担してもらうことで、わざわざ漁港に来なくても新鮮な魚が手に入ります。実際に、隊員やベナン在住の邦人、現地の友人にサービスを試してもらい、大きな手応えを感じることができました。

フェーズ2:免許制度

「便利さ」の次は、いよいよ鮮度、即ち「食の安全に対する保障」です。宅配サービスでは、私が鮮度を確認していましたが、私の帰国後も鮮度が確認され続けなければいけません。隊員になる前は物流企業に勤めていた私は、その経験から下記のような「免許制度」を思いつきました。これなら利用者の増加に合わせて、発行する免許数を少しずつ増やすと言った調整も可能です。

  • ①衛生管理担当の同僚が、国のガイドラインから独自の品質基準を策定。
  • ②一定期間、基準を満たし続けた販売人に免許を発行。
  • ③免許保持者は、宅配サービスを使って鮮魚を販売できる。

まとめ

結局、魚の宅配プロジェクトは、実証実験までしか取り組むことができず、悔しい思いがあります。しかし、「メッセージ一本で漁港から鮮魚が宅配されるサービスの実現」という大きな目標に挑戦できたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。帰国後はこの経験を活かし、COVID-19によって変革してしまった社会に貢献していきたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございました。

1:ベナンの水産物の国内需要約20万トン/年に対し、漁獲量は約4万トン/年(海面漁業が1トン、内水面漁業が3トン)。出典:第14回参議院政府開発援助(ODA)調査派遣報告書(20183月)

2:WhatsApp(ワッツアップ)とは、日本人がよく使うLINEのようなサービスです。電話番号とアカウントが直結しているのが特徴で、相手方の電話番号をスマホの電話帳に登録し、なおかつ自分と相手がWhatsAppを利用していれば、電話帳からWhatsApp経由で電話をかけたり、ショートメッセージや写真を送ることができます。

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