JICA海外協力隊の世界日記

私,ジブチほっとけんし!!

ディキル保健センターの子どもたち  【ある兄弟の話】

 マヒセー二(アッファール語で「おはよう」)。JICAボランティアのはばのです。私のジブチでの活動も残り約3か月となってしまいました。この世界日記もあとわずかとなるので,ちょっとスピードアップして頻繁に更新できるよう頑張ろうと思っています。

 今回は,私の配属先であるディキル保健センターの子どもたちのことを紹介したいと思います。当保健センターは私の住んでいるディキル州内で唯一の病院であり,ディキル州内及び隣国エチオピアから患者さんがやってきます。病気になった子どもたちもたくさん来ています。子どもたちに多い病気は,下痢・呼吸器の炎症・栄養失調(重度の低栄養)です。症状が重いとそのまま入院になります。

 

 子どもが入院する場合,ほとんどが母親もしくは親族の女性が付き添っています。そんな中,家族のいない兄弟が入院しています。今、私はこの兄弟のことがとても気にかかっており,この兄弟についてお伝えしたいと思います。兄弟はエチオピアからやってきました。16歳くらいの兄と10歳の弟の兄弟です(冒頭の写真)。国籍はエチオピアですが、アッファール族であり、ディキル州内にいる民族と同じ民族です。

 そもそも,なぜ隣国のエチオピアから当保健センターに患者さんがやってくるかというと,一番の理由は当保健センターだと無料で診てもらえるからです。当保健センターは国立病院であり,入院患者の診察や薬代は無料となっています。また,地理的にもエチオピア国内の病院まで行くより当保健センターの方が近いということもあるようです。中には3日かけて歩いてくる患者さんもいますが…3日間歩いて病院へ行くという日本では考えられない厳しい現実がここにはあります。

 さて,この兄弟ですが。兄弟ともに結核にかかっているため,現在結核病棟に入院しています。お兄ちゃんの方は結核を患ってはいるものの,身体を動かすことができ,日常生活は自力で送れています。問題は弟くんの方です(下の写真)。結核と重度の栄養失調であり,自分で動くことが出来ず寝たきりだったようです。そのため足とおしりにが床ずれ(褥瘡)が出来ており,かなりひどい皮膚の状態になっています。通常,当保健センターでは重症の患者さんは首都や隣の州の大きな病院に搬送しています。この弟くんの状態は悪いのですが,なぜか搬送されずに2か月がたっていました。同僚に首都へ搬送しないのかと聞いたところ,両親や家族がいないこととお金を持っていないことから搬送することは出来ないとのこと…。

 今,同僚と一緒に弟くんの足とおしりにできている床ずれの手当を毎日していますが,新たな床ずれも出来ていました。一日中,ベッドで横になっているのは良くないので,お兄ちゃんが弟くんを車いすに乗せて座らせていますが…状況は思わしくありません。でも,お兄ちゃんは弟くんの面倒をよくみており,毎日身体を洗ってあげています。時々,弟くんが薬を飲むことを拒否してお兄ちゃんが怒ったりと兄弟喧嘩もしていますが,この子にとってお兄ちゃんの存在はかなり大きな精神的な支えになっていると思います。

 この先この兄弟がどうなるのか,毎日やりきれない気持ちになっています。このような厳しい現実に立たされている子どもたちは世界中に大勢いるんだと思います。今,目の前にいるこの子の現実を知ったところで何も出来ない無力さや何か出来ることはないのか紋々と考えては…答えは出ず…という日々を過ごしています。これがアフリカの田舎の医療現場の限界なのだとも感じています。

 

 私にはたいしたことは何も出来ていませんが,とりあえず毎日弟くんに朝と帰るときに挨拶をしています。最初は私の姿を見るだけで泣いていましたが、今では挨拶を返してくれることもあれば、手を振ってくれるようになりました。やはり子どもの笑顔は最強ですね!この兄弟の為に私が出来ることは何も無いのですが…この厳しい現実を生きている彼らをしっかり受け止め,向き合っていきたいと思います。今はただ,弟くんの栄養状態と床ずれが良くなるよう,床ずれについてもっと勉強し,何か出来ることがないか同僚と日々試行錯誤していこうと思います。

 当保健センターでの他の活動については,またご紹介したいと思います。

 では今回はこの辺で。

幅野由樹子

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