JICA海外協力隊の世界日記

コンピュータと絵本

コンピュータと絵本プロジェクト1

 昔、日本でエンジニアをしていたころ、ホームページ作成の技術には自信があったのですが、それだけではだめだなあ、といつも思っていました。インターネットがどんどん普及して、コンピュータ技術が、一部のエンジニアだけのものでなくなっていく過程を体験しながら、すぐに陳腐化する技術を追いかけることに疲れるとともに、プログラマーやエンジニアは使い捨てられるようになった、と感じました。その技術をベースとして、その上に載せるサービスやコンテンツを構築するセンスみたいなものが必要だと思いました。そのセンスがあれば、技術力がなくても、技術者を使えばいいのです。

 今、私はアフリカまで来て、そんな風に使い捨てられるエンジニアを育てようとしているのでしょうか。技術を利用するセンスは、教えようと思って教えられるものではないし、私にそのセンスがあるわけでもありません。ただ、私がプログラミングを学び始めたころ、覚えたばかりの限られた知識でも、そこに自分だけの仮想空間をつくれる面白さを感じたのです。それを感じてもらえる機会を提供したい、と思ってやってきたのです。

 しかし、私の思いは空回り空振りの連続でした。この虚しさを、日本語クラブや、絵本の読み聞かせで紛らわせていたのです。日本語クラブを始めるとき、みんなが子供の時に親しんだお話や本があったら、それを日本語にしてみよう、と呼びかけていました。日本のお話をいっしょに読むうちに、自分が昔読んだ絵本を持ってきてくれる学生や、モザンビークの昔話を教えてくれる学生が出てきました。

 コンピュータ技術を教える活動と、絵本の読み聞かせは関係ありません。関係づける必要もありません。でも、もし、学生達とモザンビークの絵本をつくることができたら、どんなにいいだろう、大学のサーバーで公開できる、ウェブ絵本をつくれたらいいのに、と思っていました。関係ないふたつの活動を関係づける方法を模索していたのです。そうしたら、日本語クラブの学生達の中に、絵を描くのが趣味だ、という学生が何人かいたのです。彼らはアニメやコンピュータゲームのファンなので、その方面から絵を描くことに興味を持ったのでしょう。その絵を見せてもらったら、とても素敵なのです。しかも、彼らはデジタルで絵を描きます。絵具や絵筆や画用紙ががなくても、スマホやコンピュータで絵が描けるのです。絵を描く道具は普及しなくても、スマホはどんどん普及しています。

 彼らに絵を描いてもらえば、ウェブ絵本をつくれる、と思いました。ちょうど、簡単なゲームプログラミングを教えていたので、ウェブ絵本にゲームを付け加えることを思いつきました。ゲームに必要なちょっとした画像も、学生がデザインしてくれるでしょう。日本語クラブの学生と、情報学部の学生がチームを組んで、モザンビークの昔話をウェブ絵本にして、そこにゲームを載せるプロジェクトを、立ち上げてみることにしました。このプロジェクトがうまくいくかどうか、これから、このブログで報告します。ハッピーエンドを期待しないでください。挫折する可能性も大いにあります。

 このプロジェクトは、学生にとって学位に関係ないクラブ活動です。この国の学生生活に、クラブ活動という概念はありません。そういう活動の意義がわからない学生も多いでしょう。だから、どうやって、このプロジェクトに興味を持ってもらうか。これが第一関門です。最悪の場合、情報学部の学生が集まらず、私と日本語クラブの学生達だけのプロジェクト、ということになるでしょう。それを覚悟して、とにかくやってみることにしました。

 上の画像は、大学のサーバーに上げてもらった、プロジェクトのプロモーションページの一部です。モグラたたき、ならぬ、ネコたたきゲームです。とりあえず、ペイントツールで描いたネコの絵を使ってます。そのうち、学生に、もっと素敵な画像をつくってもらいます。

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