2017/11/24 Fri
文化
モザンビークの昔話1
学生に教えてもらったモザンビークの昔話を、絵の好きなルーベンが描いてくれた絵とともに紹介します。ドラマ仕立てにして、ちょっと脚色してます。この日本語は、学生が演じやすいように、なるべく簡単な表現にしてます。
ねずみと猟師
昔、罠を仕掛けて獲物をとる猟師がいた。彼には目の見えない妻と3人の小さな息子がいた。ある日、彼が罠を見て回っていると、ライオンが話しかけてきた。
ライオン: おい、おまえ。ここで何をしているんだ。
猟師: 獲物がとれたかどうか、罠を見て回っています。
ライオン: そうか。ここは俺のナワバリだ。
おまえの次の獲物を俺にくれ。
猟師: ううん、しかたない。わかりました。
しばらくして、猟師は少し離れた町へ友を訪ねて出かけた。その日のうちにはもどらなかった。家では、食べ物がつきて、家族は困っていた。
妻: ああ、食べ物がない。どうしよう。夫は出かけていないし、
私は目が見えない。ああ、どうしよう。
こども1: おかあさん、おなかすいた。
こども2: おかあさん、おなかペコペコだよ。
こども3: おかあさん、何か食べたいよ。
妻: わかった、わかった。ちょっと待って。
何か食べ物がないかしら。
何か罠にかかってるかもしれない。
キャー!
妻は目が見えないので、罠に落ちてしまった。その様子を、ライオンは藪の中から見ていた。これで、猟師がもどったら、約束通り獲物をもらえる、とライオンは思った。
ライオン: 見ろ、俺の獲物だ。
猟師: ああ、おまえ。どうしたんだ。
妻: あなた、助けてえ。
猟師: あれは私の妻です。獲物じゃない。
ライオン: でも、罠に落ちてる。俺にくれ。
猟師: ううん、困った!
そこへねずみがやってきて、どうしたんだ、ときくので、ライオンが説明すると、ねずみはしかたない、と言う。
ねずみ: しかたないですよ。約束は約束です。
猟師: 何だ、ねずみ!? おまえは関係ない!
ねずみは、ライオンからちょっと離れて、猟師の耳にささやいた。
ねずみ: 大丈夫ですよ。助けてあげます。
猟師: 何、本当か?
ねずみ: わかった、と言って、帰ってください。
猟師はねずみの言う通りにすることにした。
猟師: ライオンさん、わかりました。私は帰ります。
妻: ええ!? あなた、帰っちゃうのお!!
ライオン: ううん、うまそうな人間だ。
ねずみ: ライオンさん、ライオンさん、自分で罠をつくれば、
獲物は全てあなたのものですよ。
ライオン: お、そうだな。
ねずみ: こちらへどうぞ。ほら、これを見てください。
ライオン: 何だ何だ。
ガシャーン!
突然罠の扉が閉まり、ライオンは檻の中になってしまった。
ライオン: わあ、ねずみ、俺をだましたな!
ねずみ: さあ、おくさん、帰りましょう。
妻: ああ、ねずみさん、ありがとう。
妻はねずみといっしょに家に帰り、それからねずみは、その家に住んで、家族が食べるものは何でも食べるようになった。以来、ねずみは人の家に住み、何でもかじるようになったとさ。
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