2017/03/31 Fri
活動
・フィラリア症と集団投薬(MDA)について
つい先日、リンパ系フィラリア症に対する集団投薬(MDA、Mass Drug Administration)の活動に参加してきました。
リンパ系フィラリア症とは、蚊を媒介とする寄生虫が体内に入りこむことで、体のあちこちで悪さをする病気です。「リンパ系組織に障害を起こし、身体の一部に、痛み、重度の身体障害、社会的偏見などの原因となる異常な腫脹をもたらします」(厚生省検疫所のHPより)。どのような症状がでるかは、「フィラリア」と検索してもらえば具体的なものを見ることができます。足が象のようにパンパンに膨らんでしまったりします。このことから象皮病と呼ばれることもあります。
「世界54か国の約9億4,700万人が、リンパ系フィラリア症の脅威にさらされており、この寄生虫の広がりを阻止するための予防的化学療法を必要としています」(同上)
この予防的化学療法というのが、集団投薬(MDA)のことです。体内にある寄生虫を殺す薬を数年間にわたって、継続的に投与することで、寄生虫の脅威を無くしてしまおうというものです。蚊が血を吸うことで寄生虫が広まっていくので、そもそも血の中に寄生虫がいなくなれば、病気が広まらないというわけです。
詳しくは厚生省検疫所がWHOのファクトシートを翻訳しています。http://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2017/03231141.html
ちなみに、かつては日本の沖縄などでもあった病気のようですが、既に制圧されています(ウィキペディアより)
・ティモールでの状況
ティモールでは、フィラリア症のことをルンブリンガとも読んでいます。この病気はまだまだよくみられる病気だそうです。
保健局で働く現地のスタッフから聞いた話ですが、ほんと山間部にいくと、鼻から虫が出てきてしまっている人を見たとか(こわい)。
また今回の集団投薬で学校を回った人の中には、生徒がトイレにいったら、薬の効果で虫がお尻から出てきた人がいたとか(これまた怖い)。
ちなみにここで猛威を振るっているフィラリア寄生虫の名前は、「ティモール糸状虫」。そうティモールって名前がつくくらい、ここやお隣のインドネシアではポピュラーな病気なわけです。
すでにほかの途上国では、かなりの程度、薬の投与が進んでおり、カンボジアやスリランカでは制圧されたそうです。ティモールは投薬が始まってまだ1年(今回が2回目になります)、ようやく制圧に向けて進んだばかりです。
・JICAボランティアが作ったポスターとステッカー
私が住んでいる首都のディリ。昨年の投薬では、ディリはわずか52%の接種率でした。WHOは最低65%を目標にしていますから。まだまだ非常に少ないわけです。東ティモール内の他の県に比べても、一番低い数字だったということです。
このような状況では、いけないだろうということで、JICAの隊員がお手伝いすることになりました。
ディリ県保健局で働いていた西田織帆隊員(すでに帰国)がバングラディッシュの事例をもとに、ポスターやステッカーなどの案を作ってくれました。バングラディッシュでは、JICAのボランティアがポスターなどの作成で協力した実績があったのです。バングラでは、そのかいもあって、集団投薬はかなり進み、ほぼ制圧の状況にあるそうです。
西田隊員のアイデアのもと、私が実際にパソコンをいじってデザイン案を作りました。ディリ保健局の長壁総一郎隊員が実際に使う際の調整をしてくれました。現地スタッフとの折衝や、印刷会社との交渉です(一番大変な部分ですね)。2枚目の写真で子供たちが熱心に見ているのが、僕らの作ったポスターです。
当初はIDカードや誰が薬を飲んだのか記録するシートなども準備する予定でしたが、すでにWHOやKOICAなど、ほかの団体がすでに作っていたりしました。
というわけで今回は集団投薬を周知させるポスターとステッカーを使うことになりました。
・実際のMDA当日の様子
参加といっても、写真撮影して記録する係としてですが。
式典への参加や、学校での薬の配分や個別訪問に付いていって、活動の記録をしてきました。
全国の学校で集団投与が行われました。学校では生徒たちを集めてまとめて薬を配布します。
まだ学校いってない子供やお母さんたちのために、保健省のボランティアたちが個別に自宅を訪問して、薬を配布します(もう、大変そうだ。。。)
留守の場合ももちろんあるわけで、そんな人たちのために「後で診療所に連絡くださいね」というのをお知らせするステッカーも作りました。
モニタリングにもついていきました。村々を回って、薬をきちんと飲んだのか、配布の様子はどうだったのかなどを聞き取りするためです(3枚目の写真がモニタリングの様子。一番右端にいるのが長壁隊員です)
また学校以外には、多くのボランティアが個別に家を訪問して、薬を配りました。
薬の配布中。大変だなあ。寄生虫怖いなあ。。。ってっ見ていたら。
「お兄さん、あんたも飲まなあかんで!」と知り合いの感染症課の課長さんから、いわれました。飲んで大丈夫なの?と思ったのですが、長壁隊員によると、「問題ナッシング。でも副作用あるけどね!」といわれ、ヨッシャこれは1つ、みんなと同じ経験をしなくては。ということで、4粒もごくり。副作用は、人によっては眠くなったり、また気分が悪くなったりするそうです。特に子供のほうが顕著に副作用がでるということです。
(長壁隊員のもとにも、学校で活動するほかの隊員から「生徒が気分悪くなっているんだけど、大丈夫?」と問い合わせの電話がきていました)
副作用って。どんな感じかしらと、ハラハラしながら待っていると。
きました、きました。。眠い!すごい眠い!もう強烈に眠いのです。
昼休みに自宅に帰ったら、がっつり寝ました。午後の仕事に遅刻しそうになるほど寝ました。
ということで、2日にわたる集団投薬が終わりました。
いろいろ問題もありました。平日だから働きにいってる人はなかなか会えない。配布期間がわずか2日間しかない(たくさんのボランティアを動員しましたが、徒歩やバイクで回るわけですから、なかなか大変です)。ボランティアがたくさんの家を訪問しなくてはならないので、薬や病気についての説明がおなざりになってしまっていた。現場の診療所の人からは「ほかの予防接種やビタミン剤の配布などと一緒に行った方がよかったのではないか」という意見もありました。
今後、WHOが今回の結果について詳細なレポートを出すことになると思います。その結果をもとに来年の集団投薬について、きちんと対策を考える必要があるでしょう。
SHARE