2025/01/21 Tue
文化 生活
冠婚葬祭に欠かせない豚
10日以上の離島出張から戻るといつも同僚に聞かれる質問のひとつ
「お葬式参加した?」
そうなんです。2週間近くひとつのコミュニティ(村)に滞在していると誰かしらのお葬式に遭遇するんです。
村の重鎮の家にホームステイしていた私たちも参列することになりました。普段住んでいるビチレブ島でもお葬式には伺ったことがありますが、離島であるモアラ島では少し習わしが違いました。
遺体安置室もなく、冷却するものもないため、亡くなった当日にお葬式と土葬を済ませます。一般的にはレングレング(Reguregu)と呼ばれる通夜のようなものが先にあり、翌日にお葬式が執り行われるようですが、今回はお葬式が先、その翌日がレングレングでした。
参列する人たちは様々な品を持参します。日本でいう香典の代わりのようなものでしょうか。ワカ(ヤンゴナという胡椒科の植物の根。伝統儀式でのカバという飲み物になる。)やパンダナスの葉で編んだマット(ゴザ)、束ねたタロ芋、豚、鶏、魚など。
その中でも欠かせないもののひとつが豚です。ここフィジー、特に田舎では豚を育てている家庭がたくさんあるのですが、その多くが商業用ではなく冠婚葬祭用です。
この日も生きている豚が脚から逆さに吊るされた状態で次々に運ばれてきました。そして合計5匹の豚が屠殺されました。
前脚、後ろ脚それぞれを紐で拘束した状態で頭部を思い切り叩いて脳震盪を起こさせます。ギャーーーーーと泣き叫ぶ声が響き渡ります。まだパワーのある豚は身動きが取れないながらも必死で体を動かして暴れまわります。
ある程度おとなしくなったら喉をナイフでひと突き。すかさず手を突っ込んで咽頭部を引きちぎり、息の根を止めます。
その後、殺虫スプレーの噴霧口に点火したものを使って毛を燃やし、その毛を丁寧に削り落とします。まさか殺虫スプレーにそのような用途があったとは!
その後、お腹側を空に向けて開腹。肛門部を切り、腹部を開いて内臓を次々に取り出します。
ここで興味深いのが血塗りです。豚の皮膚表面全体に真っ赤になるまで血を塗布するのです。
そしてココナッツの葉で包み、弔問客が集まっているテントへと運びます。
タロ芋などと共に供物を並べ、カバを飲み交わした後、豚は頭部と四肢、胴体に分けて解体。弔問客の名前を書いた紙を見ながら仕分けをします。
ある男性がその様子を見ながら話してくれました。
「今晩は魚が食えるぞ!」
その男性によると、こういう時、海側から訪れる人は魚を、山側から訪れる人は豚を持ってきて、海側の人は豚を、山側の人は魚を持ち帰るのだそうです。
ホームステイ先から毎日美しい海を眺めていた私のその日の夜ご飯は言うまでもなく豚肉でした。
ちなみに、なぜ血塗りするのかをその場にいた人たちに質問したのですが、誰も理由は知らず...誰もが口を揃えて「それがここのお葬式の伝統」と言っていました。
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