JICA海外協力隊の世界日記

みんなあのねのセネガル便り

みんなあのね、「小人が鳥になったよ」

サンルイの朝は、まだまだ肌寒い日が続いている。

私は、パーカーやカーディガンを羽織って活動へ向かう。

驚くかもしれないが、

ダウンジャケットを着ているセネガル人もいるくらいだ。

私は朝7時半頃に家を出る。

薄暗く風の強い朝は、自然と背中が丸まる。

カフェトゥーバというセネガルでよく飲まれている

甘いコーヒーを飲みながら幼稚園へ急ぐ。

サンルイは、海から涼しい風が入る一方で、

サヘルと呼ばれるサハラ砂漠南部に広がる

半乾燥地域に位置することから、

激しい砂嵐に見舞われることもしばしば。

そのような日は家から出たくなくなってしまう。

さて、子どもの手を小人たちに見立て、

「ようこそサンルイへ!」というポスターを作ってから

3か月ほどが経過した。

そこで、第二弾のポスター作りをした。

今回は、子どもの手のひらを鳥に見立てての制作だ。

セネガルの図工の時間では、お手本があり、

そのお手本を忠実に再現していくことが良いとされている。

先生方は、お手本に近づけるために子どもの作品に

勝手に手を加えてしまうことがある。

「ここは、こうよ。」なんていうように。

だから今回、私は授業の前に

「でもね、子どもたちには、私たちの想像以上に

できることがいっぱいあるよ」と伝え、

「子どもたちが想像したことを

表現する力も養っていこうよ」とも伝え、

「だから、アドバイスは口頭のみ!」と

いつも以上に口酸っぱく先生方にお願いした。

私がポスター制作を図工の時間に取り入れ、

それを町に掲示する理由はそこにある。

町を歩く人がポスターを見て、教育者でない第三者が評価する。

サンルイは、世界遺産を有する観光地であるため、

ほかのセネガルの都市に比べて旅行者が多い。

海外から来た人たちがどのように評価しているのかを、

先生方に知ってほしいという思いがある。

青少年活動という職種は、本当にざっくりと言えば、

子どもたちの健全な育成に寄与することが目的である。

もちろん、活動の主役は子どもたちであるが、

先生方も主人公だ。

むしろ先生方を夢中にさせたほうが、活動は軌道に乗る。

大人のホビークラブもそのような意図から始めた活動だ。

今回の制作は、年長クラスだ。

顔つきがお兄さんになってきたようで、感慨深い。

もうすぐ、小学生か。

月日が流れるのは本当に早い。

真剣な顔つきで画用紙に向き合う子どもたちを見ていると、

なんだかこちらが誇らしい気持ちになってしまう。

いろいろなことが思い出せる。

子どもたちの笑顔と先生方の笑顔。

3月。日本では卒園、卒業の季節。

切なくて、悲しくて、それでも期待もあって、

私が好きな季節だ。

子どもたち、一人一人が思い描く夢に、

一歩一歩、歩んでいってほしい。

セネガルの子どもたちは、もう少し幼稚園にいてくれる。

でも、もう少し。

卒園まで、カウントダウン。

先生方は、手を加えたくてうずうずしていたようだったが、

子どもたちの力で作品が無事に仕上げられた。

子どもたちの「できた!」という達成感を大切にしたいと思う。

子どもたちの「できた!」は、たとえ小さな一歩であっても、

子どもたちにとって自信になり、

その自信は、挑戦する心を支えてくれる。

子どもたちは、遊びの天才だと思うことがある。

つまらないことを、いかに楽しくやるか考える天才だ。

大人は、子どもたちの姿から学ぶことがたくさんある。

私も、日々学びの連続だ。

「図工の時間」に、私たち先生は、

どれだけ子どもたちの可能性を見つけ、

それを大きくしていけるのだろうか。

先生方と、大切にしているもの、

大切にしたいもの、譲りたくないもの、

たくさんのことを分かち合いながら、活動をしていく。

完成したポスターは、前回と同じように町に飾られ、

子どもの手が鳥になって観光客をお迎えしている。

ようこそ、サンルイへ!

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