JICA海外協力隊の世界日記

薬剤師のウガンダ秘境滞在日記

薬の流通について

 上の写真は、カプチョルワ病院の医薬品・診療材料のストア(倉庫)です。日本の病院では薬局で一括して医薬品を管理しているので、倉庫はありません。

 今回は、医師によって処方される医療用医薬品について、病院から患者さんの手に薬がわたるまでの流れを日本とウガンダで比べてみたいと思います。

 まず、日本についてお話しします。

 医薬品卸売業者が各製薬会社から薬を仕入れます。

 病院、処方せん受付薬局は医薬品卸売業者から薬を購入します。

 そして患者さんは医療費の3割を自己負担し(高齢者等では負担額が異なります)薬を入手します。

 薬剤師は病院・薬局での薬の仕入れや在庫管理を担当しています。

 複数社ある卸売業者からどの薬を仕入れるか決定します。

 私が勤務していた病院では、平日の午前と午後の2回、卸売業者に医薬品を発注し納品してもらっていました。どの薬を仕入れるかは、医師と協議の上決定します。

 もし仕入れた薬が期限切れになると病院にとって損益となるため、 不良在庫を抱えないように、でも患者さんに必要な薬がなくならないよう、在庫管理をする必要がありました。

 「医療に突発的な出来事はつきもの!」ではありますが、 医薬品卸売業者と密なコミュニケーションは必要不可欠だと痛感させられました。(本当にその節はお世話になりました)

 以下、ウガンダの公立病院についです。

 NMS(National Medicine Store)と呼ばれる国内唯一の医薬品卸売業者が、国内全ての公立医療施設に薬と診療材料を配送しています。

 先月、見学に行かせてもらったのですが、全ての製品がバーコードでコンピューターシステム管理されていました!(上の写真)

 各病院は2ヶ月ごとに薬を発注します。ウガンダ保健省が各医療施設ごとに予算を割り当てており、病院はその予算内でNMSから医薬品を仕入れます。

 そして2ヶ月ごとにNMSから多くの医薬品が配送されてきます(下の写真)。

 配送された薬はまず、病院の倉庫に保管され、そこから院内薬局や病棟に払い出されて、患者さんの治療に使われます。

 ウガンダでは、患者さんは無料で薬をもらうことができます!

「日本では患者さんも薬代を負担するよ。」とウガンダ人に説明したところ、
「無料で治療を受けられるウガンダの方が日本より良いシステムだね!」と言われました。

 「うーーん。一概にそうとも言い切れない。」

 というのが率直な感想でした。

 なぜなら予算の上限が決まっているため、患者さんの数が多くなるにつれ、必要な薬が買い足せないという問題が発生します。
 そして、発注明細通りに配送されないという現状も抱えています。

 注文通りに配送されない理由として、薬を国内国生産していないため輸入や取引に時間がかかることが挙げられます。

 ウガンダには製薬会社が少ないので、国内で生産されていない医薬品は諸外国から輸入する必要があります。

 また日本のように外資系製薬会社の支部も少ないため、隣国のケニア支部から...というようにウガンダ国内で完結できないことも理由の一つです。

 マラリアやARV(抗HIV薬)などの薬は政府の財源だけではなく、他国の支援機関に依存しており、その影響も強く受けます。

 そして、仕入れた限られた医薬品をどの病院に割り当てるかも、大きな課題です。

 きっとこのような様々な問題が積み重なり、配送されなくなるのだと思いました。

 もちろん日本でも配送指定日に薬が届かないこともあります。

 使用頻度の低い薬で、卸売業者の倉庫にも在庫がない場合などは、配送が遅れることもありました。

 その際には卸売業者から遅延連絡があり、薬剤師は患者の治療状況をみて医師と調整します。本当に緊急で必要な場合は、卸売業者さんが探して届けてくれたこともありました。

 しかし、ウガンダでは事前連絡を入れる習慣もありません。

 そのため、余計に在庫状況の把握が難しくなっています。

 薬が届かなかければ当然、病院では在庫切れになります。

 その時患者さんは、私営の薬局に全額自己負担で薬を買いに行かなければなりません。現金収入の少ない現地の人にとっては大きな負担です。

 なぜ私営の薬局には薬があるかというと、JMS(Joint Medical Store)という私営施設を対象にした医薬品卸売業者の別の流通経路があるからです。

(驚くことにウガンダでは、医療用医薬品が町中の薬局で簡単に買えてしまいます)

 このように日本とウガンダで医療制度が異なるため、どうすればウガンダに適した在庫管理ができるのか...と日々迷走しています。

 とりあえず、「何の薬が届かなかったの?」と聞いても

「So Many!!」としか返答がないため、まずはリストアップし、誰にでも在庫状況が分かり易いようなシステムの構築に努めています。
 そして今後は、その仕組みを病院、管轄の県保健局、NMSで情報共有し、包括的な薬剤の在庫管理が出来るようになれば、と試行錯誤を続けています。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 ケイタボン(現地語で”ありがとう”の意)。

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