JICA海外協力隊の世界日記

青年海外協力隊 セネガル滞在記 ~Pas à pas~

あそびを取り入れた算数の授業

先日、村の学校で行った算数の授業です。

ここの学校は校長先生と男の先生2人だけで教えている学校です。先生方は、学校の近くに2人で住んでいます。

クラスは複式学級で、C1,CP,CE1,CE2クラス(1~4年生)とCM1,CM2(5~6年生)クラスに分かれています。複式学級にもかかわらず、1クラス20~30人程いるのでとても大変そうです。

校長会議の際に、「今年度は、算数やフランス語に情操教育の要素を取り入れた授業を提案していきたい、子どもたちがよりよく理解できるように授業を工夫していくことを先生方と一緒に考えていきたい」ということをお話しました。

その話をここの校長先生はちゃんと覚えていてくれて、私が教室を訪ねてあいさつをした時に、みんなにそのことを伝えてくれて、「そうだったよね」というようにこちらに確認してくれました。

話を覚えていてくれたことが本当にうれしく、また提案内容を受け入れてくれているのだということがわかり、胸が熱くなりました。

最初は、授業見学をしながら、先生の授業の補助に入りました。

その後、休み時間を利用して、先生方にこんな授業はどうだろうかという提案をしてみました。

先生たちは熱心に聴いてくれました。

昨年度1年間、情操教育にかかわらず、算数やフランス語などの授業もずっと見させていただいてきました。

そこで主に感じたのは、算数では「数を量として捉える力が弱いこと」、フランス語では「フランス語がわからないと、他の授業全部がわからなくなってしまうこと」などです。

情操教育の要素を取り入れながら、子どもたちの理解をもっと促せるような授業を工夫する必要があるのではないか、と考えています。

先生方の教え方は、どこの学校もみんな同じで、統一されているかのように思えますが、そのやり方だけではない、目の前にいる子どもたちが理解できるようになるにはどうしたらいいか、私は授業について先生方に投げかけながら一緒に考えていく時間をつくれたらと思っています。

今回授業実施したのは、「数の仲間探しゲーム」と「集合ゲーム」です。

算数と図工や体育を組み合わせた授業として提案しました。

授業の流れを説明した後は、先生方が授業をどんどん進めてくれました。

まずは、「数の仲間探しゲーム」

子どもたちがいつも使っているミニ黒板に、例えばリンゴ1つ、また鉛筆2本など、そのものの量を表す絵を描きます。今回は初めてなので1~3までの量の絵を描きました。

それから、ミニ黒板をもって歩きまわります。先生の合図「仲間をみつけて!」という声が聞こえたら、同じ数の量の絵をもっている子(例えばリンゴ2つと鉛筆2本)をみつけ、みつかったら座ります。

始めは先生も入りながら行い、徐々に子どもたちだけでできるようになってきました。

「ちゃんと仲間同士で集まることができたかな」と答えをみんなで確認した後に、合っていた仲間に拍手を自然に送ることができていたのが、とても印象的でした。

間違った子たちも、みんなで答えあわせをした後に、自分で気づいて仲間をみつけることができていたのでよかったです。

次は「集合ゲーム」

先生が叩く音の数を聞いて、その数の人数で集まって座ります。最初は、ただ早く座りたくてその数でなくても友達の側にくっついて座ってしまう子もいましたが、ルールを理解していく中で、友達同士声をかけあったり、「こっちだよ」と教えあったりする様子も見られました。

子どもたちも先生たちも笑顔で行っていたので、初めての試みでしたがまずは一安心です。

授業後、先生方に今日の授業についてどう感じたか、聴き取りをしました。

「とてもよい授業だと思った。具体物(人やもの)と抽象的なもの(数)を同時に理解していくことができる。あそびを取り入れて楽しみながら学んだことは忘れない。また、こんな授業もできるのではないか。掛け算にしてみたり、学年によってやり方を変えたりすることもできる。」

もう一人の先生は、「数についてよりよく理解できるよい授業だと思った。図工や体育と算数を組み合わせるのは新しい方法だ。楽しい授業で学んだことは、よりよく覚えられる。子どもたち全員が参加できる授業だった。数を大きくするなど、他の方法もできる。また授業の流れは今日より改善していくことができる。他の先生たちにも教えたい。」

先生方が今日の授業について感じたことをたくさん話してくれたことがとてもうれしかったです。また、授業の感想を聞いた後に「次回この授業をやるときはどのように改善していったらいいと思うか」という質問をしようと思っていたのですが、ここの先生たちは自分から次はこうしていったらいいと思うという話をしてくれたので、次につながるものができたのではないかと思いました。

「授業を実施するだけが全てではない、先生たちの意識がどのように変化したかを見ていけたらいい」というような内容のアドバイスをフィールド調査団のメンバーからもらったことがあります。

(協力隊フィールド調査団は、自身の活動に沿ったテーマ設定を行い、メンターと呼ばれる専門家などの支援を受けながら、設定テーマに沿って自身の周辺状況・環境を掘り下げて分析し、結論を得る調査を行っています。詳しいフィールド調査団の説明については、以前の投稿記事をご参照ください)

先生方と授業について考える、そして振り返る時間を通して聴き取った先生方の考えをまとめ、新聞などを通して他の先生たちにも伝えていきたいです。

そうしていくことで、よりよい授業づくりの輪が広がっていけばいいと思います。

今年度が始まって、他の学校でも授業提案していたのですが、なかなか広めることは難しいのではないか・・と感じていたので、この学校を起点に今回の学校の様子を写真やビデオで伝えながら他の学校にも広めていけるようにしたいです。

「社会運動はどうやって起こすか」

誰かが何か提案したことに対して、一番にそれにのってくれた最初のフォロワーの存在が大切だということを聞いたことがあります。

先生たちは「うれしかった、ありがとう」という言葉をたくさんかけてくれました。こちらこそうれしい気持ちでいっぱいでした。

この貴重な出会いを大切に、これからの活動もがんばっていきたいです。

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