JICA海外協力隊の世界日記

ジャマイカよ、めざせコミュニティ防災 2016-2018

環境美化活動「GarbieWalkie」

今年に入ってから、環境美化活動に継続して取り組んでいます。
防災・災害対策という職種である私が環境関連の活動に取り組む難しさと面白さ、その意義とやりがいについて簡単に紹介します。

今から遡ること4年前。

2014年6月のある日、一人のシニア海外ボランティアが、キングストンの道路沿いで、ウォーキングしながら路上のゴミを拾いました。
記録をとってみると、お弁当を入れるのに良く使われる発泡スチロールの容器とペットボトルがゴミの5割近くを占めていました。

ゴミを拾い終わった彼は、簡単な報告書を作りながらこう考えました。


<ゴミのポイ捨て禁止キャンペーンをやればごみの数量は半減する!!>


ここまでなら割に良くある話です。
良さそうな思いつきを得て、実現できた時のこと思い描くのは、誰にでもあること。
ちょっと違ったのは、彼の「行動力」と「巻き込む力」でした。


ポイ捨て禁止を訴える手始めとして、ゴミ拾いを繰り返したところ、参加する人数が段々と増えていきます。
JICAボランティアだけでなく、ジャマイカ人の方や、ジャマイカに住んでいる他の国籍の方も参加し始めます。
2014年は延べ18人の参加に留まりましたが、2015年は204人、2016年は286人と、年を追うごとに大規模に。
いつの間にか「GarbieWalkie」という名前がつき、毎月月末の土曜日に、海岸や公園で定期的に行われるようになりました。

つい先日、7月に行われたのは38回目の集まり。
参加者は14人と、いつもより少な目だったものの、可燃ゴミ8袋にペットボトル17袋と、人数辺りの成果の大きい活動を行うことができました。


また、5月にはキングストンから40km南西にあるフリータウンという町の小学校で、ゴミ拾いをした後、学校の生徒さんを対象に環境を守ることの重要性について、簡単なプレゼンテーションを行いました。
環境保護啓発活動の一環として学校に木を寄贈し実際に植えてみたりと、単なる「ゴミのポイ捨て防止キャンぺーン」からさまざまな活動へと広がりを見せています。

参加してくれる方々にとっては日本人との異文化交流の場にもなっている模様。
JICAボランティアにとっても、日々の活動では出会えない人たちと出会う貴重なチャンスとなっています。

私がGarbieWalkieに関わりはじめたきっかけはそれまでコーディネーターとして関係機関との調整を担っていたJICAボランティアの帰国でした。
それまで調整役だった方はとても魅力的な環境教育隊員で、女性を中心に絶大な人望がありました。
その上、幅広い人脈を持ち、国籍問わず誰にでも愛されるキャラクター。

そんな方の後任ということで、

「前の人の時はこうだった」

と当たり前のように言われてしまうこともありました。

それでも、たくさんの人たちに助けられながら継続的に取り組むうちに、どうにか形になっていきました。

以前から集まりの告知用チラシを作ってくれていた、デザイン関係に強い別のJICAボランティアの方に何度も助けられつつ、自分にとって初めてのGarbieWalkieを開催できた時には感慨深いものがありました。

とは言うものの、調整役をやっていて難しいことよりも、良かったと思うことの方が多いです。
GarbieWalkieに参加することで、いろいろな場所に行けたのもその一つ。
貯水池や植物園、海岸や大学など、普段の活動では足が向かないところに行って気分を変えられるのは、任地に閉じこもりがちな自分にとって大きな利点でした。

また、ジャマイカ人のコーディネーターや、GarbieWalkieの集まりの実施候補地を所有・管理している団体の担当者と折衝することで、ジャマイカのことが今までよりももっと理解できるようになりました。


特に、同じGarbieWalkieのコーディネーターの方たちとは、頻繁に連絡を取ってチーム作りをしたことで、深くわかりあえたように感じています。
最初からいい関係だったわけではなく、綿密にコミュニケーションを取り続けた結果として、いいチームを作れたのは、自分にとって大きな自信となりました。

20180710-3.JPG

その他にも、GarbieWalkieの集まりを通じて知り合った方から、私自身の活動につながるお話をいただけることも。

この前の6月には、GarbieWalkieの参加者に招いてもらって、ジャマイカ赤十字社セント・アンドリュー教区およびキングストン教区支部での防災会議でプレゼンテーションをさせてもらいました。

主な会議の参加者は、日本でいうところの防災ボランティアに当たる方々だったため、防災に関わる内容を中心にしたのですが、もともとはGarbieWalkieでできたご縁。

折角なのでGarbieWalkieのアピールも兼ねて、最後の時間で少しだけ環境保護と災害対策にかかわる話をさせてもらいました。

GarbieWalkie自体は環境教育の活動ですが、ジャマイカに限って言えば、防災・災害対策にも大きな意味を持っています。

路上に捨てられたゴミが都市の排水路を塞ぎ、大雨が降った時に局所的な洪水を引き起こすという事態が、毎年ジャマイカ各地で起こっています。

2017年12月に、ジャマイカで2番目に大きい都市モンテゴ・ベイを襲った洪水に関するレポートでも、水の流れを塞ぐゴミが捨てられるのを止める必要があると明記されています。

「都市の排水機能の維持管理は、地味だけど、とても重要な活動です。

GarbieWalkieは小さな子どもさんを主な対象に、排水を詰まらせる原因となっているゴミのポイ捨て防止のための啓発活動に取り組んでいます。

みなさんのように、防災に対する当事者意識を強く持っていて、なおかつ地域の人たちへの影響力が強い人たちに参加してもらえたら嬉しいです」

私のような外国人が、ジャマイカの問題を口にすることに対して、反発を受けるかねないと思いつつも、踏み込んだ内容をお伝えしたところ、思った以上に好意的な反応をいただきました。

実際に、次のGarbieWalkieの集まりに参加して下さった方もおられたりと、終わってみれば非常に有意義なプレゼンテーションに。

<一見、元々の要請とは関係のないことが、後になって自分の活動に大きな意味を持つようになる>

JICAボランティアにはそういうことが往々にして起こると、隊員訓練所で聞いていた内容を、身を持って体験する機会となりました。

毎月1回実施しているGarbieWalkie。
帰国までにあと何回か開催できそうです。
自分が日本に帰った後の調整役探しも含めて、できることは精一杯やっていく予定です。

もしこの記事を読んで興味をもたれた方は、本記事末尾のURLから飛んで、GarbieWalkieのFacebookページを是非閲覧してみてください。

私も残り短い滞在期間だけでなく、可能であれば帰国後も、ジャマイカに少しずつ環境保護の意識が広まっていくのを見続けていくつもりです。

参考:

Macro Socio-Economic and Environmental Impact Assessment of the Damage and Loss caused by the March to June Rains 2017

(2017年上半期のジャマイカの大雨に関して政府機関がとりまとめたレポート。ゴミのポイ捨てと洪水の関連にかんする記述あり)

https://www.pioj.gov.jm/Portals/0/Sustainable_Development/Macro%20Socio-economic%20and%20Environmental%20Impact%20Assessment%20of%20the%20Damage%20and%20Loss%20caused%20by%20the%20March%20to%20June%202017%20Rains.i.pdf

GarbieWalkie Facebookページ

https://www.facebook.com/garbiewalkie/

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