2017/04/09 Sun
教育 文化 活動 音楽
スリランカで西洋音楽教育の普及...たいへんです。
日本では当たり前だと思っていたことが、他の国では当たり前じゃなかった…ってことはよくありますが、スリランカの音楽教育だけを見ても、そういうことがたくさんあります。
まず、音楽は芸術科目の1つで、選択科目なので、全員必修ではありません。また、芸術科目には、美術、ダンス、演劇、東洋音楽、そして西洋音楽の5教科があり、私がお手伝いする西洋音楽は、これらの科目の中で一番歴史が浅く、スリランカの人になじみがありません。
なので、選択する子どもが少ない→教えられる人が育たない→子ども達が学べない→やはり教えられる人が育たない→……
また、なじみがないので西洋音楽を勉強しても仕事がない→親は子どもに勧めない→子どもは勉強したくても勉強の場がない、先生がいない→音楽ではない勉強、仕事へ……
という流れから、なかなか抜け出せません。
私のカウンターパートは、日本だったら文科省の音楽科の一番上の人という立場の人ですが、秘書が1人か2人いらっしゃるだけ。カリキュラムについての研究所のようなところはあるけれど、そこでも退職された先生他数人の先生方で仕事していらっしゃるくらいで、教科書もなく、教科書会社もなく、全国コンクールを開催してくれる団体があるわけでもなく。…なので、カリキュラム作成はもちろん、教科書を作るのもコンクールを開催するのも、先生方の採用、研修に関する仕事も、全国統一テストも、青年オーケストラの運営まで、ほとんどお一人で行ってみえます。
私がこの国に来て2ヶ月目。全国コンクールを見せていただきました。
コンクールに出てくる学校は、歌もうまいし、振り付けがついているとドキドキさせてもらえたりもしました。
吹奏楽をできるほど、高価な楽器がそろっている学校は少ないようですが、そのかわり、鍵盤ハーモニカでの一糸乱れぬ演奏は、日本ではなかなか巡り会えない素晴らしさだと思いました。
そんな中で、一番驚いたことは、演奏されていた曲についてでした。
コンクールで、いろんな学校がいろんな曲を演奏していく中で、ある学校が聞き覚えのある曲を演奏しました。
「これは…? え? なぜ??」
その曲は、日本でかなり以前に流行した『瀬戸の花嫁』でした。それを、とてもよく練習し、アレンジも加えてあり、立派な演奏に仕上げていました。
提出された楽譜を見ると、すべて手書きで、何度もコピーされているようでした。
スリランカには、長年にわたり、音楽のみでなく小学校などにボランティアが関わってきました。
だから、これはきっと何年も前にボランティアが置いていったもの…のコピーなんでしょう。
スリランカでは、楽器屋さんへ行くと、ほとんどが民族楽器、ギター、バイオリン、小さなドラム…などを扱っています。ピアノ屋さんではピアノだけ。ヤマハも全国で1件だけありますが、ピカピカの楽器だけ置いてあって、楽譜はありません。きっと売れないからです。
ということで、この国では楽譜がとても手に入りにくいです。だから、手書きでも、楽譜を大事に使っていらっしゃいます。
私は今まで、職場はもちろん自宅でも楽譜をたくさん所有していました。近所に楽器屋さんも何件かあり、新しい楽譜を手に入れることも簡単です。その環境が、今までの私の当たり前だったので、この『瀬戸の花嫁』の楽譜と演奏は私にとって衝撃でした。
日本では、楽譜のみでなく、楽器だって学校でいろいろ触らせてもらえます。専門の勉強をしたければ音楽教室や大学もあります。
スリランカでは、楽器を独学で学んだという人が少なくありません。
日本人は、たいていリコーダーなら吹け、ある程度楽譜も読めます。これってすごいことなんだ…と初めて思いました。
スリランカでは、最近、西洋音楽の先生をたくさん採用する動きがありました。
写真は私のカウンターパートが全国の西洋音楽の先生と「歌いましょう!」と伴奏を弾かれるところです。
カウンターパートは、毎日いくつものカバンとPCを携え、「昨夜は〇時まで仕事してたわ…。」なんて言われ、まるで日本人のような働き方をされています。
この国の西洋音楽教育の発展のためにできること…それは多過ぎてどこから手をつけたらいいのかわからなくなりそうですが、微力ながら私もよく考えてお手伝いさせていただこうと思います。
SHARE