JICA海外協力隊の世界日記

Dive into Jamaica

EFR講習に参加しました

みなさんこんにちは、

最近、職場の海でオニイトマキエイ(通称マンタ)の目撃例が出ました。私はまだ見ていません。マダラトビエイをぼちぼち見かけるくらいです。もともとマダラトビエイもかなり珍しいと思って生きてきたのですが、普通に見られるので有り難みが少しなくなりました。他に見た珍しい生き物と言えば、テヅルモヅル、イルカ、タツノオトシゴ、ニシレモンザメ、アカウミガメ、密漁者くらいです。
多種のアナサンゴモドキや棘皮動物、八放サンゴなど貴重な生物が多いジャマイカですが、この状態が続けばなと切に願います。もちろん密漁者以外ですが。

最近、職場で応急処置講習のコースに参加してくれと頼まれて職場で開催した漁師やMPA管理官など漁業関係者向けの応急処置講習(Emergency First Response)に参加しました。自動車教習所や協力隊の訓練などで、意外と触れる機会があるEFRですが、英語での講習は初めてで、内容が少し違うことに驚きました。
例えば、講習の最初に「良きサマリア人の法」に従えと言われます。
簡単に言うと「命に関わる緊急時において窮地に立たされた人を救う為に起こした行動に良識的で瑕疵が認められない場合、失敗してもその結果の責任を問われない」というルールです。ジャマイカはこれを立法化していないのですが、アメリカ式に則って罪に問わないらしいです。また、最初に訴訟対策に自分の名前とEFR処置者であることを宣言してから処置するというのもルールとして存在します。欧米式ならではの方法ですね。


同時にダイビングに関する講習会も行ったのですが、減圧症についての講習でした。
潜水病という名前で知られている病気ですが、わかりやすく言うと長く・深く潜っていると身体の中に窒素が溜まって気泡を作り、窒素が血管を詰める病気です。非常に危険なので予防のために基本はダイブテーブルというルールに従って潜水を行うのですが、こちらの漁師は一味違いました。
まず一般的なルールとして水深30mくらいは30分くらいしか留まることができません。その事を漁師に話すと「それじゃ仕事にならんから5・6時間はいるよ」と普通に答えていました。
一同ドン引き。
彼らの殆どはタンクを背負わずにコンプレッサーという空気を送る機械で船から直接空気を送ってもらう方法で漁をしているのですが、これ自体も非常に危険です。粗悪な機械だとフィルターがないので一酸化炭素を含んだ空気を吸う危険性があります。こういった事の背景にはコンプレッサーやダイビング機材が安く手に入りやすくなったということがあると思います。
専門的な話になってしまいますが、レギュレーターがついていない工務店で買えるようなただのホースを直に加えて潜るダイバーもいるそうです。また、隣国の密猟者は密漁がバレたら繋いでいるホースを切ってダイバーを見捨てて逃げ出すなど、なんとも世紀末な内容を多く聞かせてもらいました。実際にその現場では一年にどのくらいの人間が死んでいるのかというのが把握できないそうです。
減圧症治療のための再圧チャンバー施設はジャマイカで唯一、私の職場ディスカバリーベイマリンラボにあるのですが、患者の9割以上がジャマイカの漁師です。彼らは陸上に浮上して下半身が動かなくなったり意識障害が現れて運ばれてきます。私が言う減圧症は「手足や末端が痺れる」というのが定義だと思っていたのですが、彼らにとっての減圧症はまさしく死の一歩手前がその定義でした。
そのような危険を冒して獲る魚で得られる利益は1日で120US程度と非常に安いです。つまりリスクに対して得られる利益が全く釣り合っていないのです。それでも1000を超える漁師がその潜水法で今も漁をしているという事が現実問題として存在しています。やはりジャマイカの漁業のこれからを考えるとそこまで明るくなれないというのが本音です。
養殖などの育てる漁業に移行して持続性を高めたり、立地を活かしてエコツーリズムなど他業種にシフトするなどが解決法としてあげられますが、ジャマイカの漁師にそのような柔軟性を試される日が遠からず来るかもしれません。

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