JICA海外協力隊の世界日記

Dive into Jamaica

魅惑の刺胞動物 〜クラゲから考えさせられる命名者のロマン〜

ジャマイカに来て早くも半年が過ぎようとしています。業務の関係で他の隊員より少し多く海の生物と触れ合う機会があるのでどうしても海洋生物に焦点が当たってしまいます。そのため今回は少しだけマニアックな内容を投稿しようと思います。

皆さんは学名をご存知でしょうか?学名とは簡単にいうと世界中で通じる生物の学術的な名前です。そしてラテン語で書く事が基本です。例えば我々人間、ヒトは学名で記すとHomo sapiensと記載され何度かこの呼び名を聞いた事はあると思います。このラテン語の名称が世界的に通用する科学的な名前になっています(ちなみに意味は「賢い人間」です)。

なぜこんなまどろっこしい話をしたかというと、今回は派遣先のディスカバリーベイで最初に見つけたこの写真のクラゲとその学名が今回の投稿に深く関わっているからです。

このはクラゲはサカサクラゲの一種でジャマイカではUpside down jellyfishと呼ばれています。ディスカバリーベイではそこら中で見かける普通種のクラゲです。その名の通り逆さに泳いでいるからサカサクラゲ。非常に分かりやすい名前ですね。

最初に海底で見つけた時は沖縄で危険生物として知られるハナブサイソギンチャクに似ていたため避けていましたが、よーく見てみると地面に張り付くように傘の部分を下にして泳いでいるではありませんか。特徴的なので初めて見たときは見入ってしまいました。

このクラゲは褐虫藻と呼ばれる藻類を体内に飼っており、その褐虫藻が太陽光から光合成を行います。褐虫藻はそこで得たエネルギーの余剰分を宿主のサカサクラゲに提供する面白い生態をしています。人間でいうところのマンションの大家と借主の関係に近いですね。

この方法以外にもサカサクラゲは触手についてる刺胞を使って海中に漂っているプランクトンを痺れさせ、捕食する方法でエネルギーを得ています。

このサカサクラゲはCassiopea andromedaという学名を持っています。カタカナ表記にするとカシオペア・アンドロメダ。クラゲの名前というよりも星座やギリシャ神話を想起させられる名前ですね。それもそのはず、この学名は星座から取られた名前だからです。

カシオペア・アンドロメダはどちらもギリシャ神話で有名な親子の名前です。このカシオペア座は北極星に対して宙吊りの様に位置しています。この逆さになっていることからカシオペアの名前がつけられました。アンドロメダはカシオペアの娘で親子に肖ってつけたのではないでしょうか。

ちなみにこの名前がつけられたのは18世紀にまで遡ります。このクラゲ1匹にもこの様な趣深い由来があると、ある種のロマンチシズムを感じます。

他の隊員と比べて人と接する機会よりも自然やそこに生息する生物と接する事が多い私の職種ではこういった事から多くの学びを得る機会があります。改めてジャマイカでの活動は自分自身の勉強の場でもあると再認識させられます。

ちなみにこのサカサクラゲ、大きい個体だとドンブリ茶碗くらいの大きさで、最小の個体だと写真の通り小指の爪ほどの大きさが見られます。

しかし勿論クラゲだけあって余計なちょっかいをかけると触手から刺胞がちぎれて刺されます。ハブクラゲやカツオノエボシといった超猛毒のクラゲほどの強い毒は持ちませんが3、4時間ほど痛痒い目にあいます。あまり動かないクラゲなので遠くから見ている分には危険はありませんが、インスタ映えと称して顔に近づけて自撮りを狙うなんて真似は絶対にしないでください。顔面にブスブス刺胞が刺さってSNS炎上ならぬ顔面炎症で笑えない話になってしまいます。

皆さんも海で見かけても触らない様にしましょう。思ったより痛かったです。

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