JICA海外協力隊の世界日記

Dive into Jamaica

大西洋の外来種

皆さんは侵略的外来種という言葉をご存知でしょうか?侵略的外来種とはその土地に生息していなかった生物が人を介して侵入し、特に経済的、生態学的に大きな影響を起こすものを指します。例えば日本では、河川のブラックバスや沖縄のマングースが有名ですね。逆に日本から世界への外来種は鯉や植物の葛、海洋生物だとワカメが世界中で猛威を振るっています。

カリブ大西洋域で非常に有名な侵略的外来種はハナミノカサゴという魚です。英語でLionfishと呼ばれジャマイカでも大繁殖をしています。5-6cmの小型個体は主に甲殻類を食べ、大きくなるにつれ魚を食い荒らします。

ジャマイカには天敵となる捕食者が多く存在しません。爆発的な繁殖力と旺盛な食欲で最悪の外来種とも言われています。

魚を食い荒らすことによる生態的・経済的な被害だけでなくミノカサゴには危険性があります。この写真のようにヒレに棘を隠しています。

棘にはタンパク毒が含まれていて、刺された人に強烈な痛みを引き起こさせます。ミノカサゴは鑑賞する分には非常に優雅に泳ぎとても美しいですが、それとは裏腹に強烈な毒を持ちその見た目から「綺麗な薔薇には棘がある」という事を想起させられます。実際に、彼らを取り扱う際に刺されてしまい、二、三日鋭い痛みと腫れが引きませんでした。

余談ですがジャマイカに派遣され勉強になった英語の一つに「毒」という単語がありました。なんの気もなしに職場に修学旅行に来る子供達にこれは毒を持った魚だよと伝えようとした際に「They are poisonous fish」と伝えようとしたところ、子供達から「じゃあ食べられないの?」と聞き返されました。

日本語では毒という単語は一括りにされていますが、英語ではカエルが分泌する毒液やフグ毒のような接触や摂取すると発症するものをpoisonと呼び、ヘビやこのミノカサゴのような棘や牙から注入されるタイプの毒はvenomと呼びます。つまりミノカサゴはvenomous fishと説明するべきでした。

現在ジャマイカではミノカサゴの駆除対策として捕獲キャンペーンをしています。自分の配属先である海洋研究所でも4月にミノカサゴ駆除大会を開催しました。一番大きな個体を獲ってきたチームにはボートのエンジンをプレゼントするというかなり思い切った企画でした。

ミノカサゴは美味しくいただけるのでジャマイカでは棘と内臓、鱗をのぞいてフライにしたり、アルミに包んでホイル焼きにして食べます。私もたまに海で捕まえてきて夕飯の一品にしています。

ミノカサゴはジャマイカ全域で確認されているため、その資源量を推測する必要があります。私の業務の一つにも漁民へのアンケートからミノカサゴの資源量を推定する事が目標の一つになっています。

美しいカリブ海を守るために自分ができる事があるというのは非常に光栄な事です。このような活動からジャマイカとその自然に貢献できればと思います。

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