JICA海外協力隊の世界日記

パラオの歩く食べログ

#18 Taiwan nutritionist(台湾)

 今回の記事は、同僚の台湾栄養士Graceにインタビューを行いました。ちょうど私がパラオに来て約1年経った頃の去年の6月にGraceがパラオに来て、同じ職場でボランティアという同じような立場で活動しています。私が着任した頃は前任の台湾栄養士ボランティアがいて、3ヶ月ほど一緒に働くことができました。そのあとは半年ほど配属先で1人の栄養士として活動してきましたあの頃を思い返すと今でも本当によくやってこれたなという気持ちになります・・・
 Graceが赴任してからも、これまでたくさんの環境の変化もあり、苦境を一緒に乗り越えてきました。今では、戦友でもあり、家族のような存在です。
 そんなGraceの任期は5月までということで、ラストスパートに差し掛かる彼女にインタビューさせていただきました!
(※インタビューの回答は中国語を翻訳したものになりますので、日本語に少し違和感がある部分があるかもしれません。)

Q. 台湾でも日本と同じように大学卒業後に管理栄養士の国家試験を受けますか?

A. はい。台湾で栄養士国家試験を受験するには、大学で栄養学を学び卒業証書を取得すること、インターンシップの単位を取得することの2つの条件を満たす必要があります。栄養士試験は年に2回あり、これまでは全科目手書き問題(医療系国家試験の中で最難関ともいえる)でしたが、2024年1月1日からは全て選択問題に変更となります。 台湾の栄養士の分野に大きな影響を与える政策改革となりました。

Q.なぜ栄養士になろうと思ったのですか?

A. 私は、若い頃、スナックやジャンクフードを食べるのが大好きでした。食べ物に好き嫌いはありませんでした。どのくらいの量の食べ物を食べるべきかという概念はありませんでした。食べたいものをただ食べていました。その結果、子供の頃は太っていました。しかし、大人になってから自分がどう食べてきて自分の体に影響してきたか気付きました。その経験を経て、最初は食事をコントロールしようとしましたが、後に「正しく食べて、健康的に食べる」ことが本当に重要であることに気づきました。 "You are what you eat"(あなたは食べたもので決まる)という言葉がとても好きで、10代の頃に実感しました。栄養士になって、この概念をみんなに伝える時期が来たのです(笑)。また、料理が好きで医療分野にも興味があったので、上記の理由から医科大学栄養学科を選びました!

Q.台湾の学校給食はどうですか?

A. 25歳以上の多くの台湾人に学校給食について尋ねると、おそらくほとんどの人が美味しくないと答えるでしょう(笑)!これは台湾人の共通認識です。私が学校給食に携わっていた頃、よくこんな冗談を自分に言い聞かせていました。でも、私が以前勤めていた会社は外注メーカー(日本でいう給食委託会社)で、他のメーカーと競合しているので、私が勤めていた会社は美味しさは保証されていると思います!しかし最近では、物価高騰が続き、厳しい状況になっています。また、どの学校にも調理室があるわけではないため、セントラルキッチンで調理して運ぶという工程が必要となり、これらは給食の美味しさに影響します。そして、最近の子どもたちは私たちの年齢に比べて外食の機会が増え、子どもたちの味覚は私たちと同じではなくなってきています。栄養価の高い給食に対するルールや制限は今後ますます増えていくので、その制限と栄養価とコストのバランスをとるということが今、台湾の学校給食に携わっている栄養士が奮闘していることだと思います。私は学校ではなく会社で働いてたので、チアコさんとの学校給食を運営する目的が少し違います。この問題を一言で簡単に説明するのは難しいです。興味のある方はぜひ台湾に来て実際に試してみてくださいね(笑)。それと、台湾と日本の給食の違いは、台湾の利点は野菜や果物の多様性にあると思いますが、日本には非常に富んだ牛乳資源があると思います。

Q. 日本人の栄養士(私)と一緒に働くことでカルチャーショックは何でしたか?

A. これが典型的な日本人の性格なのか、チアコの個人的な特性なのかはわかりませんが(笑)、日本人は多くのことをきっちりしようとしていたり、または非常に正確に計算しようとしたりしており、この部分が最も異なると思います。私たちにとって大量調理に関する計算を細かくする必要はない(もちろん大雑把ではありませんよ!)ですが、実際に日本の給食では厳密にやっているとは驚きです。しかし、チアコと一緒に過ごす時間を重ねて理解してきましたが、あなたの国ではこのガイドラインが普通であり、日本は台湾よりも栄養価の高い給食の歴史が長いのです。 「一定の品質や結果」を大切に、あらゆる面でコントロールしないといけないような厳しい環境だということがわかりました。
どの国にも学ぶ価値のあるものはあります。どちらが優れている、劣っているという二分法で比較すべきではありません。異なる環境や歴史的背景があれば、本質的に異なる文化が生まれます。栄養価の高い学校給食を開発してきた長い歴史を持つ国として、日本は台湾にいる私たちにとって参考になりますが、台湾では適用しにくい部分もあるかもしれません。例えば、チアコからお仕事の経験談を聞いて、私も日本で学校給食栄養士として働くのは難しいと感じました(笑) 1年を一緒に過ごし、私たちはお互いから多くのことを学んだように思います。お互いの文化の利点を吸収しながら、自分の国の文化とのアイデンティティも維持しています。この経験を経て、より良い栄養士になれることを願っています。

Q. パラオの学校給食についてどう思いますか?

A. パラオのシステムはまだ開発中であることは知っていたので、最初に見たときはそれほど驚きませんでした。 調理員たちも同僚たちのことも、どの役職の皆さんも尊敬していますし、感謝しています。朝食システムのスタートや人事異動があり、コロナ明けのこの2年間で環境が大きく変わってしまいましたが、全員が努力しようとする限り、まだこれからも改善することはできると思います。できる限り最善を尽くしてほしいと思います。つまり、このプロジェクトにはまだ進展の期待があるということです。

Q. パラオの学校給食の将来にどのような期待を持っていますか?

A. 人材不足や予算の問題を改善し、健康的で多様な料理を安定的に供給できること。この1年間の私自身の経験ですが、私が願うことは、これからもパラオ政府や今後私たちの部署にボランティアを派遣する団体や組織などが、メニューの改善だけに着目するのでなく、私たちの配属先であるチームメンバーや調理員たちの健康面にも考慮し、あらゆる改善が見られることを願っています。それぞれの問題点や環境下に配慮した上で、健康でおいしい食事を安定的に生産できるようになることが、私が最も期待している成長です。結局、食べるものがあるのは調理員のおかげなので、彼らを大切にしなければ、パラオの学校給食の開発を安定的かつ効果的に進めることは難しいと思います。

Q. パラオでの私生活はどうですか?

A. 最初にパラオに来ることを決めたとき、美しい景色を楽しみ、 ワークライフバランスを実現したいと考えていました。私はあまり期待もアイデアも持たずにここに来ました。私はあまりアウトドアが好きな方ではなく、プライベートな時間を静かに過ごすのが好きで、良い景色を見ると気分も良くなります。パラオの自然は本当に美しいですね!言うまでもなく、海はとても澄んでいて、海に出ると海の色の変化を見るのが大好きです。パラオの空も必見の美しい風景の一つで、夕日、日の出、満月など、故郷の台湾でもよく見る風景です。また、 バベルダオブ(パラオの地方)の地には様々な熱帯植物や地形があり、都市部の光害のない夜に咲く星空もあり、パラオがさらに好きになりました。

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