ジャマイカよ、めざせコミュニティ防災 2016-2018

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笹森 賢一
(愛知県)

ボランティア/職種
青年海外協力隊
防災・災害対策
派遣国
中南米
ジャマイカ セント・アン教区 セント・アンズ・ベイ
一言メッセージ
ジャマイカ北部のセント・アン教区で、コミュニティ防災(Community-Based Disaster Risk Management:CBDRM)に取り組む様子を報告します。

 

災害対応計画づくりワークショップ

2018.04.25

活動

先般、地震対策の訓練を実施した小学校で、災害対応計画づくりのワークショップを実施しました。
実用的な計画とするための方法を考えるだけでなく、限られた時間と資源を効率的に回してよりよく多くの成果物を作るかを考えた結果、私自身にとっても学びの多いワークショップとなりました。


2月の記事で紹介した、地震・津波対応訓練をさせてもらった小学校。
校長先生と「ぜひ災害対応計画をつくりましょう」という話をしていたのですが、配属先での研修を実施するのに忙しく、すっかり連絡を取らないままになってしまっていました。
2月のうちこそできるだけ早いうちにと思い、災害対応計画のつくり方を考えていたのですが、気持ちが入りすぎていたのでしょうか。
できあがった資料には自分でもどうかと思う、以下のような文字が大きく書かれていました。


<参加型ワークショップを6時間やって、本当に災害が起こった時に学校の先生方が実際に運用できる計画をつくりましょう>


もし自分がジャマイカの学校の先生で、こんなのをもらったら驚き呆れてしまうこと間違いなし。
とはいえ、活動の成果ではあるので、配属先の上司に見せたところ、


「いいじゃないか! 予算を引っ張ってきてセント・アン教区中の小学校から先生方を招待して、泊付のワークショップを観光ホテルでやろう!」


と、予想外の反応が返ってきて、目が点になりました。


折しも年度の終わり際。
そんな予算を配属先に捻出してもらうのはどう考えても不可能。
(ジャマイカも日本と同じで、年度は4月始まりの3月終わりです。)


「予算が取れたらですよね?」


と、逃げを打ったところで、話は一度保留に。


小学校側にも、校長先生に会いに行き、資料を渡すだけ渡しました。


「6時間を1度にするのは非現実的なので、何回かに分けてやりたいです。1回あたり40分で実施したいので、時間をいただける目途が経ったら改めてご連絡ください」


校長先生からの返事も、


「うーん、しばらくは無理そうかな。年度末で忙しいし」


と、歯切れの悪いものでした。


そりゃあ、ただでさえ忙しい中、6回もワークショップの時間はなかなかとれないだろうなあ、と苦笑いしつつ、自分の中で今回の話は計画倒れとなったのでした。

ところが、ありがたいことにというか何というか、校長先生の中では計画倒れになっていなかったようでした。


すっかり日差しが夏らしくなってきた4月中旬の午後、校長先生から電話があったので出たところ、


「明日、正午から先生たちだけの会議があるので、そこで30分間災害対応計画の話をしてね」


と、ありがたいお言葉をいただきました。


参加者は何人になるのか確認したところ、全部で26人とのこと。
考えていたよりも多い人数で、嬉しい驚きでした。


早速、話の内容を決めようとしたのですが、災害対応計画づくりのワークショップにつなげる話なのか、それともワークショップそのものの一部を実施すべきなのかで、迷ってしまいました。

災害対応計画に必要な項目について一方的に話して、


「だからワークショップをやらせてもらえませんか?」


という話し方もできると言えばできます。

しかしながら、次にいつ時間をもらえるかわからない中、それだけを話すのはもったいないようにも。
いろいろと考えた末、ワークショップの内容を触りだけやってしまうことにしました。

ちなみに、笹森が考えたワークショップの内容は以下のとおりです。


①災害発生時の役割の明確化と分担
②災害発生時に備えたチームづくり
③災害発生時の連絡手段の準備
④避難計画づくり
⑤行動基準づくり
⑥不測事態対応計画づくり


この内容を考えるにあたり、東日本大震災以降、必要性が叫ばれている事業継続計画(BCP)を意識しました。

また、ジャマイカの防災対応機関の災害準備・緊急管理局(ODPEM)が、国連児童基金(UNICEF)と共同で普及を推進しているEmergency
Preparedness and Response Plan(EPRP)も参考にしました。


EPRPは日本語に訳すと<緊急準備対応計画>。

2009年頃まで、UNICEFの自然災害対策の要として、世界各地の学校を対象に導入が図られたものです。

ジャマイカでは2009年以降も活用されており、2014年には学校が計画を策定するのを促進するために計画策定コンテストが実施されています。


校長先生から聞くところ、以前に災害対応のための計画を作成したことがないということだったので、ワークショップを通じてEPRPの作成に必要な情報を集められるように配慮しました。


<EPRPに加えて個別の学校の事情に特化した実用に耐えうる計画、2つの成果物ができるとなれば、計6時間のワークショップにも前向きになってもらえるかもしれない。>

そんな狙いも盛り込みながら準備を進めました。

翌日、お昼前に小学校へ到着。
未だに私のことを他のJICAボランティアさんと間違えている子どもさんに声をかけられながら、校長先生が指定した待ち合わせ場所へ。


教室棟の2階、南北に窓の設けられたコンピュータ室に入ると、既に先生が数人待っていらっしゃいます。
校長先生が他の先生方と一緒にPCとプロジェクターを立ち上げているうちに、段々と集まってくる参加者のみなさん。
事前に伺っていた通り、先生方と学校職員、計26人集まります。
全員の視線が集中すると結構なプレッシャーです。


「今回させてもらうのは、この学校のみなさん自身が災害発生時に実際に活用できる対応計画をつくるためのワークショップの最初の一部分です。
全体のワークショップは、6時間くらいかけて計画をつくることを目的にしていますが、今回いただけた時間は30分です。
可能であれば今後何度かこうした機会をいただいて、みなさんと一緒に、学校独自の災害対応計画を作成させてもらいたいと思っています」


校長先生からの紹介を受けて早速ワークショップを始めたのですが、緊張のため、ここまで話すのに軽く10回は言葉を噛んでしまいました。

JICAボランティア派遣前訓練での語学クラスでのプレゼンテーションでも似たようなことがあったなと思い出しつつ、言葉を継いでいきます。


「1月末にこちらの学校で地震・津波対応訓練をさせていただきました。
その節はご協力ありがとうございました。
訓練の後に、先生方にアンケートをさせていただきましたが、その結果、『実際に地震が起きた時にどう対応すればいいのかわからずに不安だ』、と思っておられる先生方が何人かおられるのがわかりました。
そこで、今回いただいた30分を使って、災害発生時に先生方が担う役割をみんなで考え直してみたいと思います」


不安だらけのスタートでしたが、実際にグループで話し合ってもらうと、意外なほど活発な議論がそこかしこで起こります。
目安として設けていた制限時間以降も話し続けようとする先生方の注意を引きつけて、各グループの意見を聞いていくと、非常に真っ当なアイデアばかり。


上の写真のとおりホワイトボードにまとめたのですが、JICAボランティア派遣前訓練でも指摘された私のホワイトボードの扱いの下手さを差し引いても、適確なアイデアばかりで書ききれませんでした。


さらに驚かされたのは、すべてのグループから聞き取りが終わった後。
教えてもらった役割を誰が担うのかを尋ねてみると、


「あれは学校のセキュリティ担当のあの人だね」
「この学年はあの先生、あっちの学年はあの先生で決まりだ」
「簡易無線4台を持つ先生が決まっているんだから、その先生たちが担当でいいんじゃない?」


と、非常に明確な答えが返ってきました。


役割が明確に決まっていること自体は非常によいことなのですが、災害が起こった時に全員が学校内にいるとは限りません。


担当者の不在は十分に起こり得ることなので、3人くらいは担当する方を決めておくのがお薦めだと伝えると、先生方から感嘆の声をいただくことができました。


そうこうするうちに、30分間はあっという間に過ぎていったのでした。


「次はいつ呼んでもらえますか?」


帰り際、校長先生に聞くと、


「今すぐいつとは言えないけど、また近いうちに電話する」


との返事。


また前日になって突然電話をもらうことになるのかもしれないという懸念はあるものの、校長先生のポジティブな反応に一安心することができました。


迷い・緊張・不安と、心配なことが多かったものの、振り返ってみれば、想像以上に実りの多いワークショップとなりました。


残りの任期はあと6か月。
その間に続きを何回やれるのか。
次回のワークショップが少しだけ楽しみです。

<参考>


ODPEM / UNICEF -EMERGENCY PREPAREDNESS RESPONSE PLAN
http://www.odpem.org.jm/Portals/0/EPRP.pdf
(2018年4月23日閲覧)