2024/11/26 Tue
活動
妊産婦さん・赤ちゃんの健康のための『母子保健フェア』を開催しました!
はじめまして。
ブータンにて理学療法士隊員として、母子病院にて主に妊婦体操や産後ケアの活動を行っていました、田辺和です。
去る9月7日、私の配属先であるゲルツェン・ジツェン・ペマ母子病院の前で母子保健イベントが行われました。このイベントは、保健省とJICAが共催し、母子保健に特化したものとして、ブータンで初めて実施されました。ブータンの人々に母子保健に対する正しい知識を知ってもらおうという内容です。
以下の5つのブースに分かれてイベントが行われました。
1.受付・スタンプブース
来場者が受付をし、スタンプカードを受け取ります。それぞれのブースで説明を聞いたり体験をしたりするとスタンプをもらうことができ、すべて集めると小さなギフト(ノンカフェインのミントティー)と交換できます。
2.iCTGブース
JICAが支援している遠隔医療のためのモバイル分娩監視装置を実際に体験できるブースです。小さな機械を使って胎児の心拍をモニタリングすることができ、ブータンにも導入されていますが、首都では使用したことがない人も多いため、来場された妊婦さんに試していただきました。
3.離乳食ブース
生後6か月から開始される離乳食について、離乳食のレシピを配布し、理想的な離乳食の進め方を理解し実践してもらうために行われました。実際にそのレシピに記載されているバナナパンケーキを試食していただきました。
4.妊婦の栄養ブース
妊婦が積極的に摂った方が良い栄養を知っていただき、妊婦胎児ともに健康な出産ができるように促しました。レシピの配布とともに、緑の野菜を炒めたものと、キヌアのスープを試食として提供しました。
5.妊婦体験ブース
妊婦の家族に対して、妊娠に伴う身体の変化を知っていただくため、手工芸隊員の協力により作製したお腹と胸に合計7キロの重りの入った妊婦体験スーツを体験していただきました。特に腰に負担がかかることを知ることで、自宅で妊婦を支援できるようアドバイスを行いました。
3~5のブースは看護師、栄養士、理学療法士の隊員が計画しリーダーとして動きましたが、すべてのブースで病院の同僚や職員、また附属の医療専門学校から学生のボランティアを依頼し、現地のみなさんと作り上げたイベントでした。
当日は400人以上の来場者がいらっしゃり、大盛況でした。スタンプカードを設けたことで、すべてのブースで来場者がしっかりと説明を聞くきっかけとなったのも良い試みだったと思います。
私は5番目の妊婦体験ブースを担当しました。
この妊婦体験ブースは、JICAの現地業務費の制度を使用し、手工芸隊員にお世話になりながら作製したものです。日本では見たことがある方も多いと思われる妊婦体験スーツですが、試作段階でブータンの同僚に見せた際には「素晴らしいアイディアだ、こんなものが作れるなんてすごい。」と新鮮な反応を示していました。ブータンの布や材料を使用し、地元のテイラーに依頼し、今では14着を各地方病院に配布し活用いただいています。配属先には3着を寄付し、妊婦体操に訪れた際に父親となる方々に体験していただいているものです。
今回のイベントでは、父親になる予定の方々はもちろんですが、医療従事者や学生さんなどたくさんの方々に体験していただき、妊婦さんが楽な姿勢や難しいことをわかっていただくことで日常生活の中で妊婦さんに出会ったとき、あるいは自分や家族が妊婦になったときにその後の行動を少しでも変化させられることができることが狙いでした。
当日体験していただいた方には感想を書いていただいたのですが、その中のいくつかを抜粋して紹介します。
・とても貴重な体験となった。すべての父親がこれを体験し、妊婦がどのような苦労をするかを知るべきである。
・妊婦には身体的、精神的サポートが常に必要であると感じた。
・父親が母親と同様に責任を担うべきである。
・妊婦体験は初めてであった。このようなEdu-tainment(楽しみながら学ぶ)機会がもっと増えるといいと思う。
このように、たくさんの良いフィードバックをいただくことができました。
ブータンには保健の授業がありません。病院の職員がアウトリーチプログラムとして学校への訪問などを行い、保健の知識を伝えていますが、すべての内容を網羅することは困難です。
妊娠や子育てに関しても、妊娠中にお酒を飲んではいけない、タバコを吸ってはいけないということですら、知らない方が多くいます。
イベントを通して、少しでも多くの人に正しい知識を知っていただくことや、正しい知識を得ることに興味を持っていただけたのではないかと感じました。今後も母子保健に限らずこのような活動が頻繁に行われるとよいと思います。
私は既に日本に帰国してしまったため、ブータンでこのようなイベントを企画・参加することはもうできませんが、今回のイベントでは協力隊仲間だけでなく、私の同僚と指導していた学生に一緒にブースの運営をしてもらった他、その他の同僚たちも実際に参加者として来ていただいたため、今後も同様のイベントがあれば継続して行えるという確信があります。
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