JICA海外協力隊の世界日記

ブータン便り

標高4,000m超の3泊4日トレッキング

Kuzuzanpola! 隊員の岩井です。

JICA海外協力隊は現在約70カ国に派遣されており、派遣国独自の様々な楽しみ方があります。例えば島国に派遣されればスキューバダイビング、アフリカのサバンナ地帯であればゾウやキリンといった野生動物を見ることができます。
さて、ここブータンでは何がチョイスされるかというと登山です。ブータンはヒマラヤ山脈の東側に位置しており、7,000m級の山々も聳えています。ちなみに人類の最高未踏峰はブータンにあるガンカー・プンスム7,570mです。
今回はブータン滞在の醍醐味とも言える登山、特に宿泊を伴うトレッキングに関しての記事です。

2024921~24日にかけて34日のトレッキングを先輩隊員3名と行ってきました。ルートはDruk Pathという私の任地でもあるパロと首都ティンプーを繋ぐものです。”Druk”というのはブータンの公用語であるゾンカ語でブータンのという意味です。なのでDruk Pathを直訳するとブータンの道ということでブータンを代表するトレッキングコースのようです。

# 準備

トレッキングに行くとなってもおいそれと簡単に行けるわけではありません。まずはきちんとした情報収集です。どのようなルートなのか、宿泊地の標高は何mなのかなどを調べます。Druk Pathはメジャーなルートなのでこの辺りの情報は検索すれば見つけられます。
例: https://www.trekking-in-bhutan.com/druk-path-trek/
ルート情報やガイドさん情報などをJICA事務所に申請し、許可が降りてからようやくトレッキングに行けることになります。
続いてはJICA事務所での事前オリエンテーションです。ブータンでのトレッキングは往々にして富士山よりも高い場所まで行くので高山病のリスクがあります。オリエンテーションでは高山病の症状やその対策、実際にトレッキング参加者が高山病になってしまった場合のシミュレーションなどを行います。その中の一つでガモウバッグの練習があります。急性高山病に陥ってしまい、尚且つ直ぐに下山できない時はこの赤いガモウバッグに入り、中の気圧を高めることによって高山病の症状を緩和させるというものです。説明書曰く、標高を2,000m下げるのと同等の能力があるとのことです。
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ここからは実際のトレッキングの様子をお届けします。

# 1日目

早朝に車が家までピックアップしにきてくれたので荷物を積みます。我々の荷物は以下の通りです。
- 登山中のリュック(20L程度)
- 馬に預ける荷物(40L程度)
- ウレタンマット、毛布(テント内での睡眠を少しでも快適にするため)
ヒマラヤ山脈での登山と聞くと数十kgの荷物を担ぐポーターを想像するかもしれませんが、ブータンでは馬に荷物を持ってもらいます。これに加えてテント大2つ、テント中1つ、テント小2つ、水、食料、ガス、調理器具などなど3泊4日を生き抜くあらゆるものを積みます。
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30分ほどでスタート地点に到着し、いよいよトレッキング開始。
最初のチェックポイントはジェラゾン(Jela Dzong)。”ゾン”は昔は要塞として機能しており、現在は寺院として主に使用されています。なお各県の主要なゾンは寺院としてだけでなく省庁の機能も備えています。写真奥がジェラゾンで、手前に映るのは頼もしくてイケメンなガイドさん。ここまでおよそ2時間。
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途中我々の荷物を積んだ馬さん達に抜かされました。前述の荷物全てを持ってくれる馬さん達に感謝。
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その後1時間ほど歩いて昼食です。白米とおかず3品、美味しかったです。
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ここから先は雨も降り雷が鳴る中歩きました。近くに落雷したらどうしようとビビりながら歩いてました。

ようやく初日のキャンプ地に到着。右の青色テントには女性先輩隊員2人、真ん中のテントには私、左のテントは男性先輩隊員1人が利用しました。
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お待ちかねの晩御飯。全部美味でした。
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# 2日目

前日は後半から雨だったため気づかなかったのですが、キャンプ地の前には壮大な草原が広がっていました。
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二日目の序盤は急激な上り坂。標高は4,000m近くで血中酸素濃度も下がっているため、肺に圧をかけるようなゆっくりした呼吸で登ります。ルンタを見ると「あ、誰か他にも歩いたんだ」と思いホッとします。
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小さい岩がゴロゴロしていたり、ちょっとした川になっていたりと歩きづらい箇所も多々。
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この稜線の左側がティンプー、右側がパロです。
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写真中央にあるのは本日のキャンプ地ジミランツォ!”ツォ(tsho)”はゾンカ語で湖を意味します。標高3,800mにある湖なんてすごいですね。
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# 3日目

二本松訓練所の修了式でもらった菊松くんをお馬さん達と湖をバックにパシャリ。 #世界の果てまで菊松くん
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鏡張りとなったキャンプ地の湖をあとに三日目スタート。
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我々の荷物をせっせと運ぶ馬さん達。
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綺麗な湖としばらく我々と同行する黒犬さん。
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前日余分に歩いた分、昼頃にはキャンプ地に到着!
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昼ごはんを欲しがる白犬さん。
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キャンプ地前の湖は石が積み重なっていてスピリチュアルな雰囲気でした。
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# 4日目

最終日。この日の朝が一番辛かったです。前夜にうまく寝付けず、睡眠不足で体も重く、私のリュックはガイドさんに持ってもらうことにしました。

キャンプ地から30分ほど歩いて今回のトレッキングでの最高地点4,210mに到達。願い事を込めてルンタという5色の正方形の布が連なる旗をかけます。
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大自然の中を歩いていきます。
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ティンプーのホワイトチョルテンに着きました。チョルテンはチベット語で仏塔を意味します。前日に昼ごはんを欲しがっていた白犬さんもよく見るといます。
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ここからはひたすら降り。ティンプーの街並みが見えて一安心。
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パジョディン寺院で食べた最後のランチ。いつもいつまでも美味。
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降ること約1時間、ようやくゴールに到着!

# 総括

まずは人生初のトレッキングを無事に終えられたことにホッとしています。といってもこれは決して私1人で達成できたものではなく、周りの方々のサポートで成し遂げられたものです。

カバンを持ってくれ私の歩調をサポートしてくれたイケメンガイド、毎食美味しい料理を提供してくれる敏腕シェフ、ランチを届けてくれるポーター、重い荷物を運んでくれるお馬様方&馬使い。常に明るく話題を提供してくれるG先輩、私が足が痛んだ時に瞬時に診察してくれた理学療法士N先輩、そして悲観的な私に常にポジティブな声をかけてくれたS先輩、感謝の思いでいっぱいです。

ブータン隊員は12月から3月の冬季期間トレッキングは禁止されています。4月に入りトレッキングも可能になったので、安全第一で今後も楽しんでいきたいです。

なお今回のログはYAMAPで取ってあるので、今後DrukPathに挑戦する方の参考になれば幸いです。

Druk Path / atsukiさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ

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