2025/06/02 Mon
生活
Selekaのファーム(農場)


Dumerang! ボツワナの首都近郊の村で、小学校教員として働いている井口昭夫です。今回は、私の家のオーナーであるSelekaのファーム(農場)を紹介します。
彼女は私の2つ下。現在62歳です。コロナ禍で最愛の旦那様を失い、とても辛い経験をしています。昨年度まで小学校の校長として働き、定年を迎えました。65歳まで校長として働く事もできたそうですが、今、第2の人生のスタートとして、2人の息子達と2年前から農場経営に挑戦しています。「65歳まで働いたら、農場を始めるというエネルギーがなくなってしまうかもしれないから」と今、動いているのだそうです。一家の大黒柱を失くしても、その時の夢を子ども達と追い続けている彼女の生きざまはとても素敵でした。


農場は、自宅から2時間あまり車で移動した距離にあります。現在は、長男が住み込みで働いています。4人の労働者もいました。彼女自身も2週間から3週間は、その農場で働きながら暮らします。そして家にもどり、2~3日過ごしては、また農場にでかけるサイクルで暮らしています。
妻が日本から私に会いに来てくれたので、Selekaが先日私たちを、農場に招待してくれました。遠く自宅から離れ、農場に来てみると、そこは思った以上に広く、整備されていて驚かされました。敷地面積はなんと20ha!東京ドームのおよそ4.3倍もあります。誰も希望しなかった土地をおじさんからもらったそうです。
まず、立派なゲートがあり、そこを抜けて進むと小さな木の小屋とセメントの小屋がありました。中はベッドだけの自分たちの仮の宿泊所です。20m離れて、トイレと炊事場、水のタンクが設置されています。ちょうど西部劇の開拓小屋みたいです。水は地下から汲み上げているそうです。その電力はソーラー発電でまかなっています。ウォーターパイプを畑に張り巡らし、3日に1度、育てている野菜や果物に水をあげるのだそうです。野菜や果物もたくさんの種類を育てていました。トマト、キャベツ、豆、スイカ、オレンジ、桃、など区割りをしながら栽培されていました。野菜や果物の他にも、肉牛や羊、ニワトリを飼育しています。肉牛は販売用で現在20頭くらい。羊も20頭くらいです。羊は自分たちの食料として飼育しているそうです。ニワトリは250羽。生まれたばかりの10プラ(100円)のヒヨコを6週間飼育し、75プラ(750円)で販売するのだそうです。ただ、それまでの飼育過程がなかなか大変だそうです。夜、寒くならないように火を小屋に入れたり、ニワトリの体調に気を配ったりなど、寝ている暇がないほどだとか!!


Selekaは、これからの農場の夢を語ってくれました。数年のうちに仮小屋の隣に、素敵な平屋の家を建て、その前に広々とした芝生の庭園を造るのだそうです。今の様子からは、想像もつかない計画です。庭園予定地では、ロバ3頭が尻を人夫に叩かれながら、伐採された木材を運んでいました。5年後にもう一度、Selekaの農場を見に来る約束をしました。きっとその時まで、Selekaと息子たちは力を合わせて農場を拡張し、充実した施設にしていくことでしょう。BBQをご馳走になりながら、農場で一番大変なことと、楽しいことを聞いてみました。大変なことは、畑の開墾作業だそうです。スコップで腰をまげながら延々と続ける作業は、想像するだけでも大変そうです。特にSelekaは、右ひざを痛めているので辛そうです。一番楽しいことは、シンプルな生活を送ることができることだとか。何もない生活だからこそ、シンプルな生活ができます。目の前の仕事以外に心を奪われることがないからです。1つのことを淡々と続ける楽しさがあるのでしょう。
今回、始めたばかりの農場に連れてきてもらい、自然の中で生活できる素晴らしさと大変さを多少なりとも実感できました。また、定年後の自分の夢を形にしていくSelekaの思いを知ることができました。お互い、同じくらいの年齢なので私も負けていられないなぁという思いが強くなりました。5年後、必ずまたSelekaの農場を妻と訪れたいと思います。
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