2025/05/19 Mon
活動
職種;品質管理・生産性向上/ 海外経験のない定年おじさんの奮闘記


65歳で2度目の定年退職をした後、海外駐在経験もない私が思ってもみなかった海外協力隊に参加することになり、一年前に不安だらけの気持ちでカンボジアにやって来ました。職種は「品質管理・生産性向上」で、5S、KAIZEN活動をカンボジア国立技能専門学校(NPIC)の土木工学部に広めるというミッションです。工場生産で行われる5S、KAIZEN活動を学校教育現場でどう広めるか、少し工夫しながら進める必要がある活動になります。
本ミッションの最大の課題は、私自身のコミュニケーション力の弱さです。先生方には基本的に英語で説明をしますが、私は説明した後に確認のため英語訳とクメール語訳をSNSで送るようにしています。機械翻訳や生成AIを使って、日本語→英語→クメール語→日本語(確認)と多段階で翻訳・確認してから送ります。
カンボジアではSNSはLINEよりもTELEGRAMがよく使われており、この活動のために先生方向けの2つのTELEGRAMグループ(①学部内の全先生向け、②活動の幹部の先生方向け)を作ってもらいました。この2つのグループサイトは、(1)必要事項の掲示の場所、(2)KAIZENリーダーさん達の報告の場所、(3)その他情報提供の場所として機能しており、この活動における私のコミュニケーションの要(かなめ)となっています。
①機械翻訳、②生成AI、③TELEGRAMの3種の神器が、海外経験のない定年退職おじさん隊員にとっての強力な味方になっています。


Seiri(整理)、Seiton(整頓)、Seisou(清掃)、Seiketsu(清潔)、Sitsuke(躾け)の5つの言葉の頭文字による「5S」、K・A・I・Z・E・Nは、これも日本語の「改善」と、アカデミックさが感じられない日本的なネーミングの5S、KAIZEN活動ですが、この活動が日本の生産現場で広く使われて日本製品の品質と生産性を大きく高めてきました。
学校教育の場における品質の向上、生産性の向上とは何なのか?5S、KAIZEN活動の目的・目標はどうあるべきか?
その結論として、学校内に無駄がなく、使いやすく、美しい状態であり続けることをベースに、教育内容を常に充実させ、安全で環境に配慮された状態を維持し続けることとしました。さらに、この精神が学生たちに自然と身につく(=マインドセットされる)ことも目的としています。活動方法は、職場の小集団活動を中心として、トップダウンではなくボトムアップ型の進め方で展開しています。
活動を確実に管理するために、PDCAサイクル(Plan, Do, Check, Actionを繰り返すことで継続的改善を図る手法)を活用しています。学校(NPIC)ではすでに品質管理システム(ISO9001)の認証を受けて活動していることから、先生たちにも馴染みやすいISO管理マニュアルを参考にした「5S、KAIZEN活動マニュアル」を策定し、運用しています。学期ごとにPDCAサイクルをまわし、現在は3巡目の活動に入っています。


本ミッションの最大課題(コミュニケーション)に対してはどうでしょう?
ここプノンペンには日本の大型ショッピングモールなどもあり、定年退職おじさんでも意外と快適に生活できます。活動も、上記のようにここまでは予定通り進んでいます。ただ本音としては、それぞれの小集団活動にもっと入り込んで、より活発に活動を進めたいところですが、少しそのあたりに自分のコミュニケーション力不足の影響が出ているかもしれません。
そんな中で、活動の中でひとつ嬉しく思っているのは、全先生向けTELEGRAMに週1回ほど「トピック」を投稿するようにしたことです。日本で経験してきた長年の苦労話などを、カンボジアの若い先生方に伝えられる場ができたことが嬉しいです。「発展著しいカンボジアの建設技術者の卵たちに、日本での経験をいろいろ伝えられたら嬉しい」という、こちらに来る前からの願いが、TELEGRAMを通して先生方、そして学生たち(技術者の卵たち)へ伝わっていくのではと期待しています。
今後ですが、要請項目の4つ目に「同様のサポートを他学部にもすること」とあります。これはやり方によってはかなりの大仕事になります。副学長とは一度お話はしましたが、どこまで広げるのか、学校と相談しながら進めていきたいと思っています。
日本の海外経験のない定年退職のおじさん達!!
ぜひ一歩、踏み出してみてください!
2023年度4次隊
西川和也
品質管理・生産性向上
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