2026/01/05 Mon
スポーツ 人 活動
カンボジア × パラスポーツ × 理学療法
私は2025年4月からカンボジア国立障がい者センター(NCPWD Techo Sen)、カンボジア国内パラリンピック委員会(NPCC)で理学療法士として活動しています。
これまでに学んだカンボジアのパラスポーツの歴史と、私の活動について少しご紹介します。
1. 配属先の歴史
障がい者の社会的包摂(Social Inclusion)の促進を担う組織として、1997年に当時National Center of Disabled Persons(NCDP)という名前で現配属先が設立され、同年にNPCCも併設されました。
設立初期は障がい者の就労支援を目的とした手工芸の技術研修や工芸品の作成・販売、地域の障がい者支援施設への設備寄贈活動などを行い、同時にNPCCとしてパラスポーツの普及活動・競技力強化にも着手されました。はじめはパラ陸上、パラ水泳の2競技から開始し、2017年にKorea International Cooperation Agency(KOICA)等の支援のもと10競技を新たに追加、現在は13競技を統括するまでに至ります。
2023年にはNPCCが中心となって11のASEAN加盟国が参加する国際大会(12th ASEAN Para Games)を自国開催し、国民の熱狂を生みました。その際に日本から審判団をはじめ多くのボランティアスタッフの方々が派遣され、同大会の運営を支えました。
2014年に現在地へオフィスが建てられた時の写真を見せてもらいましたが、当時周りには他の建物がなかったそうで、約10年間でここまで景色が変わったなんて想像もつきませんでした。カンボジアの発展スピードの速さを実感する瞬間でした。
NCDP設立当初の写真
現在のNCPWD Techo Sen
2. 隊員としての主な活動
理学療法士として主に配属先に求められている事は、理学療法・スポーツ医科学に関する現地スタッフとの知識共有と、それらを活用したサポート活動の実践です。現在は日常的にパラスポーツ代表選手の身体の痛みやその他の不調に対する評価治療・セルフケア方法の指導を現地の理学療法士とともに行っています。またいくつかの代表チームで選手の体力測定を行い、他の国の代表チームと結果を比べながら自チームの強みと課題を把握して、より良いウォーミングアップやトレーニングメニューの考案・実践に繋げています。
カンボジアでは理学療法士を「マッサージをする人」と誤認している人が多い、と施設長のYi Veasnaさんは言います。「病気・障がいを持つ方々やスポーツ選手など、あらゆる人が自立してより健康になるための手助けができる専門職」なのだという認識を広め、カンボジアで理学療法士が人々のためにより良く専門性を活かせるよう、日々の活動を通して周りの皆さんの理解度向上にも繋がるよう努めています。
現地スタッフの皆さんと一緒に考えた取り組みを行うことで自然と現場の方々とのコミュニケーションの機会が増え、その積み重ねで徐々に信頼関係が構築されていく感覚を実感しています。
パラスポーツ選手の身体症状に対する対応
初級コーチ研修会でのウォーミングアップ基礎実践セッション
車椅子バスケットボール代表チームでの体力測定
シッティングバレーボール代表チームでの体力測定
3. 文化交流(食事、言語コミュニケーション)
昼食は毎日スタッフの皆さんと一緒に食べています。スタッフの方が作ってくださる骨付き肉の入ったスープやマンゴーサラダ、ナンプラーを使った肉野菜炒めなどは現地のレストランよりも美味しく感じられるほど大好きです。スタッフの皆さんはとにかくたくさん食べてもらいたい、というおもてなしの心から私におかわりを勧めてくれます。施設長のVeasnaさんから「3杯のご飯を食べ切れたら午後の仕事は休んでいいよ」と冗談半分で言われますが、私は食べ切れたことはなく、午後もしっかりと仕事を頑張っています。笑
選手の皆さんとはまだ拙いクメール語で何とかやりとりしていますが、最近は私のクメール語が上達したというより、選手たちが私の人となりを理解してくれたことでさらにコミュニケーションが取りやすくなったように感じています。いつも意図を汲み取ってくれる選手・スタッフの皆さんに感謝です。
また選手たちから日本語も教えてほしいとよく言われるので、いくつかの言葉をシェアして言いあっています。「かっこいい」「ありがとう」「また明日」「お腹がすいた」など語彙が徐々に増えていっており、また上手く言えた時はお互いに喜び合います。


4. 今後の展望(2026年アジアパラ大会、2029年自国開催のAYPG)
現在もパラスポーツ選手たちは日々努力を重ね、成長しています。2025年11月には車いすバスケットボール女子代表チームがアジアオセアニア地域の大会で好成績を収め、2026年10月に日本(名古屋市)で行われる第5回アジアパラ競技大会への出場資格を獲得しました。また2025年12月にドバイで行われたユース年代のアジアパラ競技大会(AYPG)では代表選手団が4つの金メダルを含む過去最高の成績を収めました。2029年にはカンボジアがAYPG開催国となる予定であり、更なるユース選手の活躍と国内での盛り上がりが期待されます。
カンボジアのパラスポーツは更なる発展が楽しみな分野だと強く感じますし、そのような国を背負って立つ代表選手たちの成長を間近で見る機会を頂いていることは大変光栄で嬉しいことです。私も配属先の皆さんと共に成長し、活動に貢献できるよう全力を尽くしていく所存です。
第5回アジアパラ競技大会(in 名古屋)に出場される車いすバスケットボール女子代表チームの皆さん
5. 終わりに
私はここでの活動を通して、パラスポーツは障がいを持った方々が同じ経験を持つ仲間と出会い、やりがいを見つけ、社会に参加するきっかけを提供できるものだと日々実感しています。
理学療法士として、パラスポーツを通じた生活の質の向上、Social Inclusionの推進にこれからも貢献していきたいです。
今回の日記投稿が少しでも日本の皆さんの気づきや興味、活力などに繋がったら嬉しいなと思っています。
カンボジアのパラスポーツの歴史に興味がある方は、まず以下の動画やFacebookページを見てみてください。
【カンボジア国内パラリンピック委員会(NPC Cambodia) 公式Facebook】
https://www.facebook.com/share/17eDYLK1WP/?mibextid=wwXIfr
【車いすバスケットボール女子代表チーム ドキュメンタリー動画|National Geographic】
https://youtu.be/k9jZseMZ5Ig?si=Ncuxx8uOocIGIO9X
2024年度9次隊(理学療法士) 宮下啓介
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