JICA海外協力隊の世界日記

カンボジア便り

電子工学/技術・文化の交流で将来を担う若い技術者の育成を!

 コロナ禍によるステイホームを経て、2022年10月にカンボジアの首都プノンペンにあるNational Polytechnic Institute of Cambodia(通称NPIC)へ赴任しました。
 学校はプノンペン郊外にあり、広いキャンパスのとてもきれいな学校です。最近は学校周辺にも開発の波が押し寄せてきたとはいうものの、周囲には白やピンクのハスの花が咲き乱れ、水牛が闊歩し、アヒルが走り回るようなところでもあります。
 Polytechnic Instituteの名のとおり、電気・電子・機械といった一般的な工学系の学科の他に、ホスピタリティー学科(調理・旅行など)や自動車学科(自動車修理・整備)、オプティクス学科(眼鏡士を養成)などもあります。

私の活動を紹介する前に、カンボジアの様子を簡単に紹介しておきましょう。

*カフェ・バイク・スマートフォン
 街中のごく普通の食堂で出されるクメール料理の味は、日本人の口にも合っています。また、コーヒー豆の大生産国であるカンボジアでは街中にカフェが溢れています。カフェや食堂ではフリーwifiが当たり前で、多くの人がスマートフォンを手放せない生活をしています。街の通りには新品・中古のスマートフォンを扱う店が軒を連ねています。
 庶民の移動手段は三輪タクシー(通称トクトク)と通りを埋め尽くすように走っているバイクです。カフェと同じようにバイクショップも驚くほどたくさんの店が軒を連ねていて、店頭にずらりとバイクが並べられている様子は壮観です。

*進むインフラ整備と教育熱
 インフラ整備が急ピッチで進められており、特に道路整備は主要一般道の整備に加えて、プノンペンーシアヌークビル間の高速道路なども開通しています。シェムリアップの新空港開港、プノンペン新空港の建設など大きなプロジェクトが、外国資本の援助で矢継ぎ早に進められています。また、大型ショッピングモールも次々とオープンしています。
 教育に関しては、親の子供への期待が大きく、よりよい教育を受けさせたいとのことから、私立の"インターナショナルスクール"に人気があり、高額な授業料にもかかわらず多くの子供を通わせています。

私の活動
*通信技術者の育成
 赴任先NPICの電子工学科電気通信コースに所属しています。
 カウンターパートと協力して実践的な通信技術実習として比較的費用のかからないアマチュア無線を教材として導入しています。発電から宇宙通信まで電気・電子・通信などのあらゆる分野を、実際に通信機器を操作しながら学ぶことができるため、教材として最適です。
 カンボジアにはアマチュア無線資格試験の制度が有りません。そのため私たち試験官の資格を持つ日・米・カンボジアの無線家チームによって、アメリカの資格試験をNPICで定期的に実施しています。電波に声をのせ、世界各地のアマチュア無線家と交信することは、知識や技術の修得だけでなく、実習室に居ながら世界に触れることで、学生たちとって大変良い刺激になっています。

*技術・文化の国際交流を目指して
 赴任先のNPICをはじめ、カンボジアの人々の日本や日本人に対する認識は、”優れた技術”と同時に"災害からの復興力"を持ち合わせた国であり人間であるというところが大きいようです。また、カンボジアへの技術協力や経済協力の手法についても、継続的でありカンボジアの自立に貢献するものであると理解されています。
 NPICの先生も学生たちも日本の技術や文化などに興味津々です。そこでより具体的に実際の日本の技術と文化を学んでもらおうと、赴任校やJICA事務所の協力を得て、先生たちの日本への研修を企画し実行することができました。また、JICA事務所の紹介でNPICに見学に来られたのがきっかけで、電子工学科の先生と協力して技術と文化の交流プログラムを考え、日本の大学とNPICの学生間の定期的な交流を続けています。
 
 70歳にして、カンボジアの将来を担う若い技術者の育成や、日本-カンボジア両国の交流にかかわれたことは、JICA海外協力隊に参加したからこその経験だと言えます。まもなく任期満了となりますが、この経験を無駄にせず社会に還元したいと思います。

木村 千良 2022-2次隊 電子工学

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