JICA海外協力隊の世界日記

コロンビア共和国便り

【地質から見るコロンビア⑦】1つの国に4つの季節 ― 標高が作るコロンビアの垂直世界

ボゴタは冷涼な気候で1年中過ごしやすい。
ただ、日本のような四季があるわけではないので、月日の流れを感じにくく、ふと今何月か忘れることがある。
また、ボゴタの市場やスーパーに足を運ぶと多種多様なフルーツが並び、それらは特定の季節に限らず、ほぼ1年中手に入る。
日本のように「旬」を強く意識する必要がない。
なぜこの国では、これほど多様なフルーツが、季節に関係なく存在しているのだろうか。
その答えは、この国の”横”ではなく”縦”に広がる地形の中にある。

コロンビアでは、標高によって気温や植生が大きく変わる。
低地では熱帯の強い日差しが降り注ぎ、気温は30℃を超える。一方で、標高を上げていくと次第に気温は下がり、穏やかな気候へと変わり、さらに高地に行けば朝晩は肌寒さを感じるほどになる。

こうした「高さによる気候の違い」はスペイン語でピソス・テルミコス(Pisos térmicos)と呼ばれている。
直訳すれば「温度の階層」。つまりこの国では、標高に応じて気候が階段のように変化していくのである。

赤道直下に位置するこの国では、緯度による気温の変化はほとんどない。その代わりに、アンデス山脈が作り出した高低差が、垂直方向に「四季」を並べてしまったのだ。物理学的な法則により、標高が100m上がるごとに、気温は平均して約0.6℃下がる。
この単純な法則が、コロンビアの大地を階層状の「パラレルワールド」へと変えている。

ボゴタから車を2時間も走らせれば、景色は劇的に変わる。標高を下げるごとに私たちはカレンダーをめくるように異なる季節へと足を踏み入れていく。
一般的にはこのピソス・テルミコスは大きくいくつかの区分に分けられる。

・寒冷帯(Tierra Fría / 標高2000~3000m)
ボゴタが位置するこの階層は、いわば「永続する秋」。ジャガイモ、イチゴやブラックベリー(モラ)、そして栄養価の高いウチュバなどが、涼しい風の中でじっくりと育つ。

・温帯(Tierra Templada / 標高1000~2000m)
「常春」の世界。コーヒーが最も好むこの標高では、アボカドや柑橘類、そしてルロといったコロンビア特有のフルーツがたわわに実る。

・熱帯(Tierra Caliente / 標高1000m以下)
1年中「夏」のエリア。バナナ、マンゴー、パパイヤ、パイナップルといった、太陽をたっぷり浴びた濃厚な甘みのフルーツが支配する場所である。

日本のような四季がある国では、冬が来れば植物は活動を止め、収穫は途絶える。しかし、赤道の垂直世界には「冬」という概念がない。
それぞれの標高において、気候は1年中一定に保たれている。つまり、それぞれのフルーツにとって「最高の旬」が、365日ずっとどこかの標高で維持されているのだ。
ある場所では真夏のような暑さの中でマンゴーが実っている一方で、別の場所では春や秋のような気候の中でコーヒーが育ち、さらにその上では肌寒い空気の中でジャガイモが収穫されている。

市場に並ぶ多種多様なフルーツは、アンデスの異なる高さから届いた「それぞれの季節の収穫物」が一堂に会したものだ。私たちが1つの市場で、完熟のマンゴーと新鮮なイチゴを同時に手に取れるのは、この国がすべての季節を「並行」して走らせているからに他ならない。
ただ、正直なところ、コロンビアにあるフルーツの種類はあまりにも多すぎて、現地の人に新たに紹介されても、もう到底覚えきれない。
見たこともないトゲトゲしたものや、不思議な色をした実、あるいは名前を聞いても翌日には忘れてしまうようなマイナーな果物たち。

ボゴタで肌寒さを感じたとき、標高の低い街へ下りることで、眩しい太陽と、滴るほどに熟した南国のフルーツが待っている。
カレンダーをめくるのではなく、坂道を下ることで季節を変える。
このダイナミックな「垂直な旅」ができることこそ、アンデスが作り出した巨大な階段とそれぞれの段で命を育む土壌が共作した、この国だけの贅沢な贈り物なのである。

2024年度2次隊 コロンビア 品質管理・生産性向上 堤大耀

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