2026/10/07 Wed
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【地質から見るコロンビア⑲】海が消えた町 ― 化石が語るビジャ・デ・レイバ1億年前の世界
ボゴタからバスで北へ3~4時間。アンデスの山間に、美しい石畳と白壁の家々が並ぶコロニアル都市、ビジャ・デ・レイバ(Villa de Leyva)が現れる。
街を少し離れると、乾いた大地の中に鮮やかな青色だけが浮かび上がる幻想的な池「ポソス・アスレス(Pozos Azules)」。
他にも巨大な土の家「カサ・テラコタ」が建ち、周囲にはブドウ畑やトマト畑が広がる。
一見すると何の関係もなく見えるこれらの場所は、「太古の海が残した地質」という1つの線で綺麗に繋がっていた。
この大地の下には今から約1億年前、本物の海が広がっていた証拠が数えきれないほど眠っている。
鮮やかな青に染まる水をたたえた池、家を丸ごと焼き上げることができるほど良質な粘土質の土。そして、かつての海底に降り積もったミネラルたっぷりの土壌が育む、弾けるようなトマトと豊かな香りのワイン。
アンデスに隆起した「太古の海底」を、見て、触れて、そして味わう。大地の成分を五感で楽しむビジャ・デ・レイバの記録をお届けしたい。
そもそも、なぜ標高2000mを超えるこの高山地帯が「海」だったと分かるのか。その証拠は、私たちの足元にごく当たり前のように転がっている。
ビジャ・デ・レイバの中心部にある巨大な広場や、美しい路地を歩きながら石畳に目を落とすと、ぐるぐると渦を巻いた「アンモナイトの化石」がそのまま建材として埋め込まれている。さらに郊外の化石博物館に足を運べば、全長10mを超える巨大な海生爬虫類、クロノサウルスの化石まで保存されている。
今から約1億年前の「白亜紀」と呼ばれる時代、この地域には浅くて温暖な海が広がっていた。アンモナイトや巨大な海生爬虫類たちは、その豊かな海を悠々と泳ぎまわっていたのである。
しかしその後、南米大陸の西側では海洋プレートの沈み込みが続き、その力によって大地は徐々に変形し、海底だった地層は少しずつ押し上げられていった。
こうして誕生したのが巨大なアンデス山脈だ。
つまり、かつての海底がそのまま数千mの高さまで持ち上げられ、当時の泥や砂と一緒に、そこに生きた海の生き物たちを丸ごとタイムカプセルの様にパッキングしたのが、現在のビジャ・デ・レイバという土地なのである。
そして今回、まず足を運んだ「ポソス・アスレス」は、乾いた大地に突如として現れる幻想的スポットだ。元々は人工的に掘られたため池なのだが、蓄えられた水は鮮やかなエメラルドブルーに染まっている。
この色は、単純に「青い水」が湧いているからではない。水に含まれる鉱物成分や微粒子、そして光の散乱・反射など、様々な要素が重なって生まれると考えられている。
太古の海が残した地層を通り抜けた地下水が、大地の中の鉱物を少しずつ溶かし込み、乾燥した土地に姿を現す。そう考えると、この人工的な池でさえ、この土地の地質と無関係ではないように思えてくる。
次に、訪れた「カサ・テラコタ」は、大地の成分をダイレクトに「触感」で楽しむ場所だ。世界最大の陶器とも呼ばれるこの建物は、地元の土(粘土)だけを使って形を作り、窯の様に丸ごと焼き上げて作られている。
白亜紀の海底で気の遠くなるような時間をかけて静かに沈殿したきめ細かな泥は、やがて良質な粘土層へと変わった。その粘土を人間が練り上げ、焼き固めることで、巨大な住居へと昇華させた。
そして、この地質の魅力は味覚までに届いている。
ビジャ・デ・レイバ周辺の土壌には、かつての海底に堆積した岩石や堆積物を起源とする、石灰質の地質が広く分布している。隣町スタマルチャンで開催される熱狂的な「トマト祭り」で投げ合われる真っ赤なトマトも、この土地を代表する農産物の一つだ。豊かな日射と、この土地特有の土壌環境の下で育つトマトは、鮮やかな色と濃厚な味わいを持つ。
さらに、その大地の恵みをグラスの中に表現しているのがこの地域に多くあるワイナリーだ。
標高2100mを超える高地でのワインづくりは世界的にも珍しい。標高の高さによる強い日射と、昼夜の大きな寒暖差、そしてこの地域の地質・土壌環境。こうした条件が重なり、この土地ならではのブドウを育てている。
一杯のワインを口に含んだ時広がる芳醇な風味は、まさに1億年前の海が仕込んだテロワール(土壌の個性)を飲んでいるようだった。
街を歩けば石畳のあちこちにアンモナイトの化石が覗き、池を見つめれば海底の鉱物が青く輝き、建物を見上げれば海底の泥が形を成し、グラスを傾ければ大地のミネラルが喉を潤す。
ビジャ・デ・レイバはただ「古い街並みが綺麗」なだけの観光地ではない。太古の海が残した大地を、五感で味わうことのできる場所だった。
2024年度2次隊 コロンビア 品質管理・生産性向上 堤大耀
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