JICA海外協力隊の世界日記

コロンビア共和国便り

【地質から見るコロンビア①】美しい公園の下に眠るもの ― ボゴタという都市の正体

初めまして。
コロンビアの首都ボゴタで活動している堤大耀です。
現在はIGAC(コロンビア地理統計院)という日本で言う国土地理院のような機関で土壌の分析や品質・管理システムの改善に携わっています。

日本では鉱物を専門にしていたこともあり、地形や地質といった視点から、今暮らしているボゴタやコロンビアの姿を見ています。
この連載では「なぜこの国はこうなっているのか?」をテーマに、身近な話からこの国を少しずつ紐解いていければと思います。

標高2600mの高地にあるコロンビアの首都ボゴタ
そんな高地にありながらボゴタの街中には不思議なほど大きな公園が多く、緑が生い茂り、池や湖が点在する人々の憩いの場となっている。
赤道付近に位置していることから年間を通じて気温は10~20℃前後と安定し、降水量も多く湿度が高い。こうした条件は植物の成長に適しており、街中に豊かな緑を生み出している。

しかし、気候以外にもこのような公園が多い理由がある。
これはボゴタの地形、地質の歴史に深く関係しており、私の職場であるIGAC(コロンビア地理統計院)の地形データでも、この事実が裏付けられている。

ここからはボゴタの地形の歴史

1万年程前までボゴタはもともと大きな盆地で巨大な湖(Lago Humboldt)と湿地だった。

その後、氷期が終わり氷河が融解していくと大きな滝(Salto del Tequendama)などの形成により、湖の水が排水されていった。

湖が急速に縮小していくとそこに湿地や沼、氾濫原が広がる平原となり、サバナ・デ・ボゴタが形成されていく。
こうした湿地と共存する社会が2000年以上前から存在していたという研究結果もある。

その後もスペイン到来まで広大な湿地が広がっており、20世紀半ばまではまだ湿地だらけだった。

そして都市開発が始まり埋め立てることにより、1940年ごろまで約15万haあった湿地がわずか10年程で約5万haまで減少、現在では数%しか残っていない状態となっている。
つまり、今ある池や湖がある大きな公園は昔湿地だった名残なのである。

こうした背景と降水量が多いことからボゴタでは洪水がよく起こり、ニュースでもよく水没しているのを見ることが多い。
大雨の後には道路が冠水し、車が立ち往生する光景も珍しくない。

大まかにみると、ボゴタの東側は山地で元から安定した地盤を持つ。
一方で中央はかつての湖底、西側は湿地や氾濫原にあたる。
そのため現在でも、西に行くほど洪水が発生しやすい傾向がある。

また、もともと湿地だった場所を埋め立てて都市が形成されているため、いわばスポンジの上に都市を作っている状態であり、地盤沈下の問題も起きている。
家のシャワー室の床に流れ切らない水が残っているのはこれが原因で傾いているんじゃないかと疑っている。

何気なく歩く公園の池や緑も、かつては広大な湖の一部だった。
そう思うと、ボゴタの風景の見え方は少し変わってくる。
この街は、美しさの裏側に自然の歴史とリスクを抱えながら、今も広がり続けている。

都市の見た目は整備されていても、その土地の成り立ちは変わらない。
ボゴタに限らず、どんな街でも「昔その場所が何だったのか」を知ることは、リスクを理解するうえで意外と重要かもしれない。

2024年2次隊 コロンビア 品質管理・生産性向上 堤大耀

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