2026/06/24 Wed
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【地質から見るコロンビア⑨】大地の色でできた街 ― ボゴタを染める赤いレンガ
飛行機がエルドラド空港(ボゴタの国際空港)に着陸する直前、窓の外に広がる景色を眺めると、ボゴタは改めて大きな都市だと気づかされる。
あるいは、モンセラーテの丘(ボゴタの東の山の上にある教会)の上から街を見下ろした時も同じだ。
ただ、大きいということ以外にあることに気づく人もいるのではないだろうか。
新しい建物も、古い建物も、住宅も、オフィスもどこか似たような色合いをしている。
目に入る建物の多くが赤いレンガでできているのだ。
もちろん、「そういう街なんだ」と思えばそれまでだ。
実際、私自身も最初は特に深く考えることはなく、ボゴタらしい景観の一つとしてなんとなく受け入れていた。
しかし、よくよく考えてみると少し不思議でもある。
なぜこれほどまでにレンガの建物が多いのか。
これは、単なるデザインの好みではなく、この街の足元に眠る「太古の記憶」と、理にかなった実利的な理由が隠されている。
その第一の理由は、これまでの記事で述べてきたボゴタの特異な成り立ちにある。
ボゴタが位置するこの広大な平原は大昔は巨大な湖だったと述べてきた。
数百万年という時間をかけて、周囲の山々から削り出された土砂や堆積物が湖の底に積み重なり、現在の平らな大地を形成したのだ。
この「湖底堆積物」こそが、レンガの主原料となる良質な粘土(クレイ)である。
粘土は、水を含むと柔らかく、形を変えやすい。
そして焼くことで固くなり、建材として使えるようになる。
つまり、ボゴタの地下には「レンガの材料」がもともと豊富に存在していたということだ。
さらに、この土地の粘土には鉄分が多く含まれている。
この鉄分が焼かれることで酸化し、あの特徴的な赤い色が生まれる。
街中に広がる赤いレンガの正体は、特別な塗料でも、外から運ばれてきた素材でもなく、この土地の土そのものなのである。
そしてもう一つ見逃せないのが、この国の気候だ。
前回の記事で見たように、ボゴタは一年を通して雨が多く、湿度も高い環境にある。
このような条件では、木材は腐食しやすく、耐久性に課題がある。
その点、レンガは水に強く、湿気の多い環境でも安定した強度を保つことができる。
また、レンガには「熱容量が大きい」という特性があり、日中のわずかな太陽の熱を蓄え、夜にゆっくりと放熱してくれる。この天然の「蓄熱暖房」のような効果が、冷涼なボゴタの暮らしにマッチしているのである。
つまり、ボゴタでレンガが多く使われている理由は、単に「材料が手に入りやすい」だけではない。その土地の気候条件に対しても、非常に理にかなった選択だったのである。
こうして見ていくと、街の景観は偶然決まったものではないことがわかる。
足元の土壌、過去の地形、そして現在の気候。
それらすべてが積み重なった結果として、今のボゴタの「赤い街並み」が生まれているのだ。
この赤いレンガの街並みは、美しさのために統一されたわけでも、誰かが意図的にデザインした結果でもない。
足元にある材料を使い、この気候に耐え、そして人が暮らしやすい形を選び続けた結果として、今の姿に落ち着いたものである。
ボゴタの街並みは決して偶然でも装飾でもなく、「この場所に暮らすための最適解」の一つなのだと見えてくる。
2024年度2次隊 コロンビア 品質管理・生産性向上 堤大耀
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