2026/04/19 Sun
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持続可能なコミュニティ・ベースド・ツーリズムとは(#3 小坂けいと/観光)
私の活動地ハマオ・アル・ノルテは、ドミニカ共和国北部にある人口約8,000人の小さな町。ハマオ川の北という意味を持つ名の通り、澄んだ川、そして美しい丘に囲まれた緑豊かな地域です。
ハマオから北へ車で30分ほど進むと大西洋に接し、海沿いに続くビーチリゾートへは一年を通して世界中からたくさんの観光客が訪れます。観光はドミニカ共和国の主要産業ですが、その多くは欧米企業によって運営・出資されていることやホテルの多くがオールインクルーシブ型(宿泊・食事・アクティビティが一体となった形態)を採用しているため、利益が十分に地元へ還元されにくいという課題があります。そのため、観光産業が拡大するほど、地域住民との経済格差が広がってしまう懸念もあります。
そこで推進されているのが、コミュニティ・ベースド・ツーリズム。地域住民が主体となってその土地の文化や自然を活かすことで、資源を守りながら経済活性化を目指します。私の活動先では、「持続可能なコミュニティ・ベースド・ツーリズム」というプロジェクトのもと活動を進め、畜産だけで生計を立てていた町から少しずつ観光地へと変化しつつあります。
私の配属先は町の発展のために有志が集まってできた団体で、学校教師や市長、医者、食料品店店主などそれぞれが本職を持っています。彼らは川のアクティビティを提供するツアー会社を運営しており、カヤックやチュービング、川のハイキング、キャンプ、乗馬などを体験できます。アクティビティの後には昔ながらのかまどを使って作ったドミニカの家庭料理を食べることがセットになっており、五感をフル動員してハマオを知っていただけるような流れになっています。
また、川や町のゴミ拾いや植林活動も行っており、これまで彼ら主導で行なってきたイベントが先日初めて住民主催で行われたことを嬉しそうに話してくれました。
彼らがこの町で観光を始めようと思ったのは、ある1人のメンバーがFacebookに一枚の写真をあげたことがきっかけ。その写真に、“素敵!そこはどこ?”と知らない人からコメントがつき、後にその方が町を訪れてくれたことから、もしかしたらもっと多くの人に来てもらえるかもしれないと思い、仲間を集め、アクティビティができる環境を整え、今に至るそうです。

私は彼らから、観光客や外国人の視点での意見をよく求められます。立ち上げから10年以上が経ち、同じ地元のメンバーで地元を見続けていると、思わぬうちに考えが凝り固まってしまうという気持ちがあるそうです。外国人観光客も増える中で、手作り感あふれる現状から少しずつグローバルスタンダードにサービスの質や安全管理の意識を合わせていかなければと思いながらも、地元の本来の姿を知っているからこそ不用意に整備することは好まない。画一された景色に近づいてしまう懸念と品質向上とのせめぎ合いを感じます。
どれだけ自然に手をかけるかを迷うのは、どの国も同じ。日本の里山文化とも通じる部分があると思います。持続的な自然共生社会のモデルとして国際的にも知られているSATOYAMA(里山)ですが、人間の営みを優先しすぎないようストップをかけることも、“持続可能”という目標においては必要な選択です。
近所の14歳の女の子にこの町をどう思っているかと尋ねたら、「好きだけど未来はない」と随分バッサリとした答えが返ってきました。詳しく聞けば、うわさ話が回るのは早いし、良い働き口も少ないから将来は大学に行って大きな街で暮らしたいという話だったのですが、少女の冷静な話ぶりから、都会と地方の関係性もまた、国が変わっても同じなのだなと痛感しました。日本の少子高齢化に比べれば働き盛りの年代層が多い人口構成のドミニカ共和国ですが、地方から都市へ人が出て行ってしまうことへの悩みは同じです。一方で、きちんとしたレベルの学力を持った人が地方にもっと必要と考えると、一度は外に学びに出すことも必要と思うのだとか。若者が戻ってきたいと思える場所にするためにも、観光で町の可能性を広げていくことに力が入ります。
今メインとなって活動しているメンバーは皆もう十年選手で、高い熱量で活動を拡大し続けているエネルギーと団結力に心から尊敬するとともに、側から見ていると組織としての持続可能性を心配したくもなります。物語を繋いでいくこと。環境を守ること。どちらも幅広い年齢層と多様な目線があってこそ、意志を受け継ぎながら未来を考え続けることができるのではないでしょうか。わずかな時間ではありますが、よそ者だからこその客観的な視点を持って私もそこに参画していきたいと思います。
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