JICA海外協力隊の世界日記

ドミニカ共和国便り

消防署のなかった町で考える、まちづくりの優先順位 (#2 小坂けいと/観光)

ある日、同僚の市役所職員から「消防署ができるからセレモニーに行こう」とお誘いを受けました。
消防署ができる?できた、でもなくできる?いや、そもそもなかったの?、と?(ハテナ)が頭の中を駆け巡ったように、私はこれまでこの町に消防署が無いことに気が付いていませんでした。きっと町の基本装備だという認識がどこかにあったのだと思います。この町に住み始めて、自分にとっての当たり前がここの当たり前じゃないということに気付かされる瞬間がしばしばありますが、消防署がないならばもちろん消防車もないし消防士もいない。これまではどうしていたのだろうと考えながら、起工式に向かいました。

起工式とは、建物の工事を始める前に土地の神様を祀って、工事の安全と繁栄を願う儀式。町の外れにある少し開けた建築予定地に白いテントが張られ、町の大人たちが集まります。知事や協賛関係者が登場し、式がスタート。まずは神父様が聖書を読み上げ、聖水を撒いて安全を願います。その後、市長による起工に至るまでの物語と町の益々の繁栄を見据えた力強いお話があり、最後に鍬入れ。土地に初めて手を入れる儀式で、盛り土に鍬が振り下ろされました。当たり前のように予定より1時間以上遅れて式が始まったこと(笑)以外は、日本とそう変わらないしきたりかなと思います。

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開催を知らせる広告には日時と会場の記載がありましたが、まだ無い建物の場所を伝えるにあたって記載されていた文言は住所ではなく、「葬儀場の隣」でした。この町には葬儀場の方が先に存在しているのか、何か順番が逆じゃないかという考えがよぎりましたが、それもまた、何かを未然に防ぐための仕組みを当たり前に捉えていることの表れなのでしょう。生涯を終える形は様々あり、その供養ための場所の方が先に作られることも別の見方からすると当たり前なのかもしれません。

市役所に席を置き活動していると、どこでどのような工事が行われているのかがわかります。住民としても分かりやすく目に入るのは、道の整備。町の中心(と言っても500mほどの一本道)から外れると大通りこそ舗装されていても、離れれば離れるほど道の状態は悪くなります。山の麓かつ川に沿って町が作られているため、大雨が降ると舗装されていない道はぐちゃぐちゃに。川が増水すると行き手を阻まれる道も少なくなく、橋の建設もあちこちで行われています。地域内の結びつきや経済の活性化を目指す取り組みも“まちづくり”と語られますが、より物理的な、生活に密接した土台づくりとしての“まちづくり”を目の当たりにしています。

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まちづくりと聞いて思い浮かぶのは、幼い頃夢中になっていたビデオゲーム。『The Sims』『どうぶつの森』『街ingメーカー』などのシミュレーションゲームが好きでした。特に『街ingメーカー』は、住民の要望に応えながら交通網を整えたり、施設や店舗、住宅を建てて街が発展することでより多くの住民が集まってくるというとてもリアルなゲームで、子供ながらに何をどこに配置したらより良い街になるのか考えをめぐらしていたことを思い出します。

ただ実際のまちづくりは、当たり前ながら一人の意思のもとに進める訳にはいかず、建設を決めた数秒後に建物が出来上がっているなんてこともあり得ません。今回の消防署のように、建設を決めるまでに長い物語があり、工事を始める式をして、実際に稼働するまでにはまだまだ時間がかかります。自然に近い町だからこそ必要となる安全の確保と便利な生活の追求との間で、そして限られた予算の中で、優先順位をつけることの難しさを近くで見ていて強く感じます。

有事の際には隣町からの応援を待つことしかできない現状から、数ヶ月後には自分たちの手で自分たちの町を守れるようになる。きっと大きな一歩だと思います。国全体が猛スピードで発展するドミニカ共和国。引き続き、たくさんの変化を見つめていきたいです。

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