JICA海外協力隊の世界日記

エクアドル便り

No. 25 一口で、驚きが広がる‐エクアドル・ロハのスペシャルティコーヒー

表紙写真:プロジェクトスタートのイベントにて

こんにちは。JICAコミュニティ開発隊員のともこといいます。
私は、エクアドル最南部ロハ県で「スペシャルティコーヒー」の魅力を広める活動をしています。コーヒーの品質を評価するカッパー(鑑定士)として、生産者とともに品質評価やマーケティングのプロジェクトに取り組んでいます。
日々、生産者から預かったサンプル豆を焙煎し、「カッピング」と呼ばれる品質チェックを行いながら、風味を高めるためのアイデアを共有しています。

写真:品質をみるカッピングの様子、小型のコーヒー焙煎機

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ロハ県は、エクアドル最南部、アンデス山脈の中に広がる高地に位置しています。面積はほぼ日本の秋田県くらいの大きさで、標高は走ると息が切れそうな約2.000m。
この冷涼な気候と火山性の豊かな土壌に恵まれ、ここで育つコーヒーには、他にない風味が宿ります。ベリーやリンゴのような果実味、そして花のように清涼感のある香り。「これがコーヒーなの!?」と驚かれることもしばしばです。

写真:景色

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現在、私が携わっているのは「Ruta del Café(コーヒールート)」というプロジェクト。ロハ県全域のカフェテリアや農園を観光ルートで結び、コーヒーを通じた地域ブランディングを進めています。
とっておきのカフェテリアを巡る、特典付きの「コーヒーパスポート」もそのひとつ。バリスタによるコーヒーのストーリーを聴きながら最高の1杯が味わえる体験をチームで開発しました。訪問者にとって発見や学びの瞬間を生み出し、経済的なインパクトにも繋げています。

写真:15.000部配布予定のパスポート、訪問スタンプを押すカフェテリアオーナー

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さて、そのコーヒーをつくるロハの生産者たちは、まさに研究者のようです。フルーティーな酸味を生み出す発酵の工程では、微生物やpHが細かく管理されています。自家培養の酵母を用いて風味の変化を試みるなど、科学的なアプローチが欠かせません。これらのステップが、自分の農作物に付加価値を生みだしてくれるからです。

写真:微生物の状態を確認する生産者、測定器

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出会ってきた生産者の中には、国内外で語学や農学、マーケティングを学び、世界的な品評会で入賞を果たした方もいます。驚くことに特に若い世代の生産者たちは、互いに研修を開催したりサンプルを評価し合ったりなど、学び合う文化が根づいています。

またプロジェクトの観光農園フェーズでは、選出された生産者たちとスペシャルティコーヒーツアーを開発しています。栽培・収穫、加工、焙煎、そして抽出に至るまでの工程を実際に体験できるコンテンツの開発の真最中。まさに、“一本の木からカップまで”の流れを、自らの五感でたどることができる仕掛けです。 農園では、生産者自らが案内役となり、コーヒーの育て方や精製の工夫、地域ごとの味わいの違いなどを丁寧に説明してくれます。 日常ではなかなか見られない作業のひとつひとつが、1杯のコーヒーへの理解と愛着を深めてくれます。

写真:農園視察の様子

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現在は任期の半分が過ぎました。ロハ県全域の農園を巡りながら進めるプロジェクトは決して容易ではありませんが、地域の方々と連携し、少しずつ形になっていくことに大きなやりがいを感じています。
私が今住んでいる家には日々届いたコーヒーサンプルが積み上がり、帰宅時ドアを開けると、部屋いっぱいに甘くフルーティーな香りが出迎えてくれます。この国の魅力は、香りからも伝わってくるのだと、毎日実感しています。

日本にも、ロハをはじめとするエクアドルの魅力的なコーヒーが、もっと広く届くように。これからも現場の一員として、地道に活動を重ねていきたいと思います。

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