JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ便り

Is your husband sleeping?

名 前:大石 春草
隊 次:2023年度2次隊
職 種:小学校教育
配属先:カブトゥ小学校
出身地:静岡県

“Mamuna ali gone.”
マラウイにお住まいのみなさん、このチェワ語をどのように解釈しますか?

11月末で私が任地のンサルに赴任して1年が経ちました。赴任当初はンサルの人々から自分はどのように見えていてどう思われているのだろうと考えるとネガティブになってしまい、家に引きこもりがちでした。私の任地ンサルは農村で、人々の生活は地方都市の暮らしより低水準です。私の生活は隊員の中ではどちらかというと厳しいものと認識していますが、実は私の家はンサルでは5番目に入るくらいの立派な家です。したがって突然やってきたアズングがボランティアと言いつつどうしてあんなに立派な家に住んでいて、チェワ語もままならないのに何をしにきたのだろう?と思う方もおられるだろうなと思い、あまり人々の目に自分の姿を晒したくないという気持ちがありました。だから学校へ行くのも朝6時10分。マラウイの人は朝から活動するので、できる限り人の目に触れないこの時間に家を出るようにしていました。(今は人に見られたくないという理由ではなく習慣になったのでこの時間に家を出ています(笑))

今回はその引きこもりだった頃の心に残っているエピソードについて書きたいと思います。ある週末、いつも通り午前中に一通りの家事を済ませ、お昼を食べて、のんびりとひとり時間を過ごしていました。15時頃、ひとり時間にも飽きてきたのでコンパウンドの外に出てみました。引きこもりの私がそう思うほどなのでよほど暇だったのでしょう。コンパウンドを出てすぐのところで座って休憩しているアマイがいたので挨拶をしました。そのアマイとは初対面でしたが、彼女が話しかけてきてくれたので少しチェワ語で話をしました。彼女は英語を話しません。記憶は曖昧ですが、私たちはたしかお昼に何を食べたか、といった他愛もない話をしていました。するとアマイが突然 “Mamuna ali gone?” と私に聞いてきました。直訳するならば “Is your husband sleeping?” ですよね。当時の私は “Mamuna” (夫)という単語を覚えたばかりだったので、自信ありげに Ndilibe mamuna.” “(I don’t have a husband.)と答えました。彼女は私に「結婚はしているのか?夫はいるのか?」というニュアンスのことを聞きたいのだと思ったからです。すると彼女は顔をしかめて “Ayi.” (NO~.)と言いました。その後も何度か “Ndilibe mamuna.”と言いましたが、彼女の反応は変わりません。 私が“In English?” と聞くと、アマイは困った様子で首を横に振りました。 「“Mamuna”は “husband”で、 “gona”は “sleep”でしょ?」と私は心の中で思いながら、彼女とうまくコミュニケーションが取れていないことにもやもやしました。
二人でいてもどうにもこうにもならないので、私は近くにいたご近所さんたちに聞くことにしました。 “ Mamuna ali gone chiyani?” (What do you mean by Mamuna ali gone?) と聞くとそこにいたご近所さんたちはニヤッと笑いながら “Mamuna ali gone chizungu chiya?” (How can we translate mamuna ali gone into English?) と話し合いを始めました。彼女たちもギブアップでした。しかし彼女たちと話して、Mamuna ali goneは只者ではないという感じがしました。なぜならもしその訳が “Is your husband sleeping?” ならば、英語をある程度話せる彼女たちならすぐにそう教えてくれるはずだからです。
最終的に、私はある男性のところに行きつきました。(彼もご近所さんの一人です。) “Mamuna ali gone”について聞いてみると、彼も困惑した様子で少し笑いながら “Haruna, I don’t know how to say it in English, but that’s a kind of plant and I’ve never tasted it.” と言いました。アマイは “Mamuna ali gone”という植物(シマのおかずとして食べるものらしいです。しかし私調べだと、それを食べたことも目にしたこともないというマラウイアンもいました。)のことを話したかったのだということがやっとわかった瞬間でした。
しかしなぜ植物の名前が “Mamuna ali gone”なのでしょう?その男性も由来についてはわからないとのことでした。後日学校のマダムたちにも聞いてみましたが、彼女たちも途方に暮れていました。いまだにその由来は謎に包まれていますが、マラウイアンが“Mamuna ali gone” と聞いて私のように “Is your husband sleeping?” あるいは “My husband is sleeping.” と解釈するのではなく、まず共通認識としてある特定の植物を思い浮かべるところが興味深いと感じました。

結論、私がこの日記で強調したいことは「あの日、外に出てみてよかった」ということです。コンパウンドの外にでてアマイと話をしたことで、 “Mamuna ali gone” というチェワ語の面白い言葉に出会えました。そしてその言葉をきっかけにいろんな人と話ができたことがうれしかったからです。冒頭に書いた通り、赴任当初の私は住民との付き合い方がわからず、勝手に人々の心のうちを想像して自分の存在意義についてネガティブに考えてしまうことが多かったように感じます。それが引きこもりの原因になっていました。しかしあの日外にでて、マラウイアンと一緒に悩んだり笑ったりして楽しい時間を過ごしたことで、この2年という限られた時間を家に引きこもって過ごすのはもったいないのではないか、と感じさせられました。それからというもの、マラウイアンと話したい!というマインドを持つことができるようになりました。この国にアズングとしているからこそ、知らないことばかりだからこそ、人々と話すと新しい発見があっておもしろいです。そして住民の方と話すと、私はこの村の人たちに受け入れられているという感覚もなんとなく感じられるようになりました。私に話しかけてくれたアマイ、ありがとう。 “Is your husband sleeping?” ちょっとヘンテコな名前の植物、素晴らしいきっかけを作ってくれてありがとう。

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