JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ便り

マラウイの人達の寛容さ

名 前:上山 結子
隊 次:2023年度1次隊
職 種:看護師
配属先:サリマ県病院
出身地:兵庫県

私は今、マラウイのサリマ県というところに住んでいます。サリマ県は人口50万人程度の中規模の県で、首都に行かないと買えないものが多々ある中、最低限の暮らしに必要な物はすべてここでそろえることができます。私の家は県の中心地から約5km離れていますが、ブランタイヤというマラウイ第2の都市へ向かうための道がある交差点から近いところにあるので、自宅の周辺はともかく、それなりに賑わいのある地域が自宅の近くにあります。
ある夜、自宅からおそらく1㎞程度離れたところあたりで、一晩中町の人が大騒ぎしていました。そのため、私は一睡もできませんでした。自宅周辺の家で、大音量で音楽が鳴ることは特に週末を中心によくあることなのですが、それでもだいたい夜中の2時くらいには収まるので、そこから就寝することができていました。しかしその時は一晩中大騒ぎの声が聞こえていたので、ほとんど眠れませんでした。そのことを家のセキュリティガードマンに伝えたところ、とある部族のお祭りだったそうで、それが君の睡眠を妨げたか?と問われましたが、その時は苦笑して何も言いませんでした。
またある日、自宅の前の家に大きなスピーカーが出されているのを見ました。金曜日だったので、今日も音楽が大音量でなるんだなぁと思いながら、ただ、もうそのくらいでは眠ることができるようになっていたので、特に気にせず過ごしていました。が、なんと、自宅の前で、サマーフェスティバルのライブが行われているのではないかというくらいの音楽と、人々の叫び声が一晩中続いたのです。自宅の周りには塀があるので、窓から何が起こっているのかを知ることはできません。そしてそれにはさすがにびっくりして、眠気もありましたが全く眠ることができませんでした。翌日、敷地内の同居人に「何があったのか?あなたは眠れたか?」とチェワ語で尋ねたところ、彼女も眠れず苦笑しているように見えましたが、「ダサンガララ」と言いました。サンガララとは幸せ、Happyという意味で、彼女は「私は幸せだよ」と言ったことになります。それ以上詳しくチェワ語が話せないので、セキュリティガードマンにあらためて尋ねると、どうも結婚式があったようです。家の外に出ると、知らない人もたくさん来られていました。
その時、たとえ睡眠を妨害されたとしてもそれはたった1日や2日の事。そんなことより、誰かの幸せな一日をお祝いできるって本当に素晴らしいことだなと感じました。
ここ数年の日本は、誰かの楽しみや幸せより、誰かの迷惑にならない生活が要求されているように思います。例えば、ずっと小学校で行われていた毎年恒例の夏祭り、子どもたちや関係者はとても楽しみにしています。しかし、地域の人達すべてがそれを歓迎しているわけではない結果、お祭りの音量が周辺住民への迷惑になるということで、祭りの規模を縮小するやら、祭りを行う場所を変えなければいけないやら、です。人の迷惑にならないようにという日本人の考え方はとても大切で、尊重されるべきものだと思いますが、その一方で寛容さがどんどん失われていっているのではないかと思います。そして代わりに出てきた言葉が多様性なのではないかと。いろんな人がいる、多様性のある社会。寛容性が失われつつある中、多様性のある社会を推進する。寛容さがあれば、多様性も自然に受け入れられるのでは?と思いました。
おそらくこの寛容性はマラウイだけではなく、アフリカ全体にあるのだろうと想像します。アフリカ全土には、国に関係なくたくさんの部族が入り混じっているということを知りました。マラウイの主な部族はチェワ族・ヤオ族・トゥンブーカ族・ンゴニ族(ほかにも40程度の部族があるそうです)ですが、例えばチェワ族は中央アフリカから南アフリカにかけて住む部族と言われています。国が分かれてしまっているので、使用言語は違いますが、部族としては一緒のようで、チェワ族の王様は現在ケニアにいると教えてもらいました。そして一つの国にいろんな部族がいるということは、いろんな文化があり、それをみんなで受け入れながら暮らしているということになります。

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アフリカの民族分布 source Harvard University
People’s Atlas of Africa. ed. Marc Leo Felixjpg
いろんな色はそれぞれの部族が暮らしているところを指す。

ここに来て、日本がどれだけ素晴らしい国か、改めて感動する部分もたくさんありましたが、その一方で、日本のちょっとした窮屈さを感じる機会となりました。
いまだ小さなことにいらいらするときもありますが、日本にいたときと比べると、「まぁいっか、何とかなるか」と思うことも多くなったように思います。それがよいことなのか悪いことなのか、そういうことではないのかはよくわかりませんが、寛容であることの素晴らしさに触れることができる機会でした。

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ンゴニ族のお祭り衣装  souce: Tourism Malawi

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チェワ族のお祭り衣装  souce: Travel Malawi Guide

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