2026/06/29 Mon
医療 活動
島を越えて、学びをつなぐ。コスラエ州での保健医療隊員研修

隊員たちで企画した、コスラエ州での研修
ミクロネシア連邦は、ヤップ州、チューク州、ポンペイ州、コスラエ州の4つの州からなる島嶼国です。600以上の島々が広い海(端から端までの距離は北海道から沖縄以上)に点在しており、同じ国の中で生活していても、他州へ気軽に行けるわけではありません。
私たちJICA海外協力隊の保健医療分野の隊員も、それぞれの州に分かれて活動しています。普段はオンラインで連絡を取り合うことはあっても、実際に顔を合わせて、現場を見ながら話し合う機会は多くありません。活動地で一人ひとりが課題に向き合う中で、時には孤独を感じることもあります。その孤独は、単に一人で活動しているという意味だけではありません。目の前の課題を本当に正しく捉えられているのか、自分の活動が現地にとって意味のあるものになっているのか、迷いながら進むこともあります。
そこで今回、保健医療隊員が主体となって、コスラエ州で国内研修を企画しました。2026年2月3日から5日までの3日間、看護師、理学療法士、家政・生活改善(栄養士)、薬剤師の4名が集まり、コスラエ州の医療や健康活動について学びました。
見て、聞いて、考える研修
今回の研修では、Kosrae State Hospital(州内唯一の病院)、Kosrae Community Health Center(KCHC: 3か所の診療所、1つの歯科医院)、Sansrik ECE(小学校に上がる前の幼児が通う教育施設)、そしてWalung地区(州内で最も医療へのアクセスが難しい地域)を訪問しました。
州立病院やKCHCでは、医療体制や設備について現地スタッフから説明を受け、診療所、薬局、公衆衛生分野の活動などを見学しました。限られた人員や資源の中でも、地域の人々の健康を支えるために、現場ではさまざまな工夫が重ねられていました。
Sansrik ECEでは、子どもたちの生活習慣や隊員が栄養教育に関わる活動を見学しました。病気になってから医療につながるだけでなく、子どもの頃から健康的な習慣を身につけることの大切さを改めて感じました。
また、Walung地区では、道路事情などによりアクセスが難しい地域の暮らしを見学しました。医療へのアクセスは、病院や診療所の中だけで決まるものではありません。道路、交通手段、生活環境、地域のつながり。その一つひとつが、住民の健康に深く関わっていることを実感しました。

写真左から KCHC薬局の様子、Walung地区の生活路を進んでいく隊員たち、州立病院スタッフより説明を受けている様子、ECEにて隊員による栄養教育の活動の見学
隊員同士で話すから、見えてくること
研修では、それぞれの隊員が自分の配属先や活動内容を紹介し合いました。職種が違えば、見えている課題も異なります。看護師の視点、理学療法士の視点、栄養士の視点、薬剤師の視点。それぞれの話を聞くことで、自分一人では気づけなかった現場の見方を学ぶことができました。
一方で、共通する課題も見えてきました。NCDs、つまり生活習慣病への対策、健康教育、職員教育、施設環境の改善、そして5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけを通じて職場環境を改善する取り組み)です。
5Sは、単なる整理整頓ではありません。物が探しやすくなること、清潔な環境を保つこと、作業の流れを整えることは、患者さんの安全やスタッフの働きやすさにもつながります。今回の研修では、4州で共通して使える視点を持ちながら、それぞれの州の状況に合わせてどのように活動を進められるかを話し合いました。

現地職員との学び合い
研修中には、コスラエ州立病院やCHCの職員の方々にも参加していただき、ランチョンミーティングと健康教育ミニワークショップを行いました。
JICAや海外協力隊の活動について紹介した後、各隊員が自分の専門性を活かしたミニワークショップを実施しました。BMIやジュースに含まれる砂糖、腰痛予防、創部ケアなど、現場で実際に関わるテーマについて、現地職員の方々と一緒に考える時間となりました。
もちろん、この1回の研修ですぐに大きな変化が起こるわけではありません。それでも、互いの活動を知り、意見を交わし、「次に何ができるか」を考えるきっかけになったことは、今後の活動につながる大切な一歩だったと思います。

ひとりの活動から、チームの活動へ
保健医療分野の隊員は、それぞれの専門性を活かして活動しています。看護、リハビリテーション、栄養、薬など、入口はそれぞれ違います。
しかし、現場で向き合う課題は、専門分野の中だけで完結するものではありません。
たとえば、生活習慣病を予防したいと思っても、そこには食事、運動、家族の習慣、教育、交通、収入、地域の文化など、さまざまな背景があります。さらに人員や予算、物資の供給、組織の仕組みなど、自分ひとりでは簡単に変えられない課題にも直面します。
住民や現地スタッフと関わる中で、「自分は本当に課題を正しく見られているのだろうか」「今やろうとしていることは、本当に効果があるのだろうか」と迷うこともあります。専門職としてできることを考えながらも、その専門性だけでは答えを出しきれない場面に出会うことがあります。
だからこそ、今回の研修で隊員同士が集まり、それぞれの現場で見ていること、悩んでいること、試していることを共有できたことは大きな意味がありました。
普段の活動は、配属先での個人の取り組みが中心になりがちですが、JICA海外協力隊には、州や職種を越えてつながれる強みがあります。
ミクロネシアの各州の異なる課題と強みを理解し、よい取り組みを共有しながら、それぞれの現場に合った形で活かしていくことや、「支援する側」として何かを教えるだけではなく、現場から学び、人と人、州と州をつなげていく役割の大切さを学びました。
これからも、ミクロネシアの各州で活動する隊員同士がゆるやかにつながりながら、現地の人々とともに、よりよい健康活動を考えていきたいと思います。

左から順に 荒木隊員(家政・生活改善(栄養士))、瀬川隊員(看護師)、小間隊員(薬剤師)、塚田隊員(理学療法士)
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