JICA海外協力隊の世界日記

モザンビーク便り

私の愛しいMozambique「なんで一人でいるの?」

 すっかり間が空いてしまいました。気が付いたら、モザンビークに来てから、1年と8か月が経過しています。自分でも信じられないという思い半分と、イベントが盛りだくさんなこのモザンライフに対して、確かに18か月たったな。。。もしくは3年くらいたったんじゃないか。そんなボリューム感を感じます。残りの任期は短くなりましたが、今のうちにリアルな世界を綴っていこうと思います。

 さて、今回のテーマは「家族」です。私、偶然が重なり、2度の引っ越しをしました。今は3軒目の家になります。有難いことに、いつも温かいモザンビークの家族に囲まれた生活を送っています。そんな彼らと過ごして感じたことと自分の変容ぶりを今回は綴ろうと思います。

 記念すべきモザンライフの1軒目の家は、大家さん家族の家の敷地の一角にありました。敷地の一角と言っても、もうすぐそこ!私の玄関の扉から「おはよう~!」といえば、余裕で声は届くのです。この大家さん一家は、大家さんママ、娘さん2人(社会人1人と高校3年生)で過ごしていました。

 いざ、迎える朝ですが…鶏の鳴き声と共に私はこの家族の声で目が覚めることが日常でした。モザンビークの朝は、早いんです。朝5時くらいに起きて、家の中と家の外回りの掃除が始まります。私はというと...いや寝たい。しかしながら、窓のすぐそこでは、もう家族や近所の人たちが現地語で元気に挨拶して、大家さんママが子どもを叱って、お姉さんが妹を怒って...はい、ここには日本と変わらない日常にありふれた家族の景色がありました。ただ、まだモザンビークに来て1か月しか経っていない当時は、なかなかに抵抗がありました。だって私にとっては、まだよく知らない現地の人たちが、朝から窓のすぐ側で何かを始める、いざ扉を開けたら全く知らない人がいる(後々、近所の人だとわかる)、隣の家の若い男の子が、塀を乗り越えながらここの家族と話している。。。プライベートスペースとはどこに...そして何より、受け入れがたかったことが、家族から常に聞かれる「部屋で一人で何してるの?なんで、一人でいるの?」という質問。こちらからしたら、「なんで?普通のことでしょ?」という想いでいっぱい。まるで一人でいることを否定されている気持ちでした。

 日本にいた頃の私は、一人暮らしも数年していたし、常に誰かといるというよりは、時々自分の時間をとってバランスを保つような生活スタイルでした。そんな私がモザンビークに来たら、常に他者がいる生活がスタートしたのです。任地に行った頃は、家の外で感じるストレスは大きく、家が唯一自分と向き合える憩いの場になるはずでしたが..私の忍耐力も限界に達し、もうやってられない!と思った夜が何度かありました。ただ、少しずつこの家族のことを知るうちに、言葉だけではなく、私のことを気にかけてくれている優しさが伝わってきました。何気ない私の表情から、気持ちを汲み取ってくれるのです。配属先でうまくいかなかった時、私の話を聞いてくれたのは、大家さんママ。私が一人で暇をしていると、必ず何かしようと誘ってくれたのは娘さん達。お腹が空いていれば、モザンビークのご飯を一緒に食べてくれて。真夏にクーラーもないし、みんなで「床が一番気持ちがいいね」と気が付いたら昼寝をして...いつも間にか、一緒に過ごすのが自然な生活になり、私にとって心の拠り所になっていました。そんな頃、私はやっと始めの頃によく聞かれた質問の意図が、なんとなくわかるようになりました。きっとここの人たちは、人と過ごすことが当たり前で、一人の時間とは「孤独」そのものなのだと思います。人と共に生きることが彼らには染み込んでいて、呼吸くらい自然な在り様であり、だからこそ一人でいた「私」は彼らにとっては、奇妙な姿として映っていたのでしょう。誰かと過ごすことで、心が安らぐ。なんて健全で、人間らしいのだろうと。すっかり私も誰かとべらべらと話して、自分の家に辿り着くまで時間がかかる人間になっていました。

 2軒目は、少々イレギュラーでして。省略します。

 そして、今の3軒目。こちらは、大家さん家族が隣の家になりました。正直なところ、誰かがすぐそばにいることが当たり前になっていた私にとっては、完全な一人暮らしに少々恐れを感じていました(笑)しかし不安とは裏腹に、新たに温かい家族との出会いがありました。今度の家族は、両親と子ども4人の6人暮らし。一番下の子たちは双子で、まだ小学生です。○○は食べたことある?○○には、もう行った?一人は寂しくない?たくさんの質問が飛び交います。私は心の中で、あー、なんだかこの質問も、あの頃に感じていた苛立ちや、もどかしさも懐かしいなと思い出します。長女の彼女は、一日働いて帰ってきて、下の子たちにご飯を食べさせて宿題を見ています。仕事で疲れていても、弟たちに愛情たっぷりで関わる姿は、私の心も温まります。双子の2人は、運動が大好きです。職種が体育の私は、このために呼ばれたのではないかと言わんばかり。おかげで、家に帰ってからも、補習授業のようにアクティビティが続いています。大家さんママは、外国人とあまり話したことがなかったようで、私にとても興味を持ってくれます。気が付いたら、週の半分は彼らとご飯を一緒に食べたり、遊んだりするのが日常になりつつあります。

 きっとこの距離感が、任期の始めの頃だったら、少し鬱陶しく感じていたと思います。我が家のように、おはよう~とかただいま~とか。ご飯食べるよ~とか。一緒にくつろいだり、気づいたら眠っていたり、今の私にはそれが普通になっています。この心の近さとか、温もりとかがとても心地よく、愛おしいのです。私にとっての「普通」もコロコロ変わるものだなと思うモザンライフです。

 さて、次回はとにかく振り回されてきた彼らの「冗談」について、綴りたいと思います。日本は暑くなってきた頃でしょうか?夏バテにはお気をつけて。どうしても暑い時は、床も涼しいですよ(笑)

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