JICA海外協力隊の世界日記

パプアニューギニア便り

パプアニューギニア 東ハイランド州で農業の力を育てるVol.1  ~課題の発掘と整理 ― 集落のシステムを知ることから始まった私の活動 ~

 APO(やあ:東ハイランド州方言)。パプアニューギニア・東ハイランド州ゴロカの州農畜産局(DAL)で活動している、JOCV 2024年1次隊・原 大です。これまでの活動を事務所内で共有したところ、「他地域の隊員や、今後協力隊を目指す方々にも役立つ」との依頼をいただき、全5回シリーズとして記録することにしました。

 画像1.png

 全国の部族が伝統衣装で踊りを披露する「ゴロカショー」 PNG文化を象徴する一大イベントです

派遣直後に取り組んだこと

 着任後に最初に行ったのは、所属長およびカウンターパートに対し、自分が支援できる技術分野を明確に示すことでした。農業は多様な技術を組み合わせる総合分野であり、派遣前研修で準備した資料が初期段階でのコミュニケーションに大きく役立ちました。

このプロセスを経て、最初の主要活動として 「地域農家が抱える課題を、現場の声から把握すること」 を目標に掲げました。

画像2.png

   ネギの定植作業の様子。多くの農家ではいまも手作業が中心です 

農家リーダーとの聞き取り調査

ゴロカには、地域農業を支える「農家リーダー」がいます。彼らは作物栽培、市場の状況、家族経営、集落の治安まで幅広く把握しており、DAL職員と共に畑を巡回し、課題・悩み・経験を丁寧に聞き取りました。 時には持参した軽食を分けながら話すこともあり、生活・役割分担・労働力確保など、農業に限らない多様な情報を得ることができました。

農家リーダーとのアンケート調査 〜集落構造の把握〜.jpg

   ゴロカ郊外の集落で行った聞き取り調査の様子

浮かび上がった課題

聞き取りと現場観察を通じ、以下の課題が明らかになりました。

・主要作物(いも類・果菜類・葉菜類)の収量が伸びない

・果菜類では品質のばらつきや廃棄が多い

・同一科による連作で土壌病害が発生しやすい

特に印象的だったのは、農家リーダーが 農業だけでなく、集落の治安維持にも深く関わっていること でした。農作業や出荷作業を共同で行い、収益を分け合うことで、地域全体の安定につながっている場面をいくつも見てきました。

データを“見える化”する文化づくり

ゴロカの農家は観察力に優れていますが、課題を数値化し、整理する文化は十分に広がっていません。そこで以下のデータを簡易に記録し、グラフ化して可視化を進めました。

・収量

・栽培経費

・販売額

数字で整理することで農家自身の理解が深まり、「なぜ品質が安定しないのか」「どこに労力を投じれば収益が改善するのか」といった点が、地域全体で共有されていきました。

Vol.1のまとめ

この「課題の発掘と整理」は、今後の

・緑肥導入

・技術実証試験

・採種技術の改善

といった活動へつながる、重要な基盤となりました。 DAL職員、農家リーダーとともに、地域農業の未来を形にする第一歩が、このVol.1です。

次回予告

Vol.2:「緑肥導入までのプロセス ― PNGの土地に合う方法を探して ―」

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ