JICA海外協力隊の世界日記

パプアニューギニア便り

パプアニューギニア 東ハイランド州で農業の力を育てるVol.3 ~試験ほ場での緑肥の特性確認~

1.播種の日は、静かに動き始めた。

 8月に輸入できた3品種の緑肥種子(クリムソンクローバー、クロタラリア、カラシナ)。DAL(州農畜産局)スタッフと議論を重ねた結果、まずは州本部敷地内に小さな試験ほ場を設け、自分たちの手で確かめることから スタートしました。机上の資料と現地の土が、同じ顔をしているとは限らないからです。

2.それぞれの品種が「答え」を返してくる

播種後、観察と記録が始まりました。最初に変化を見せたのはカラシナでした。

(1)マスタードは花をつけたが、生育が止まった
→ 後で土壌分析と照合したところ、窒素不足の影響 が示唆されました。
(2)クロタラリアは花芽を持ち、結莢も確認
→ 根を掘り上げると、根粒菌が確認 できました。

写真1 試験圃内での生育経過 播種から開花(刈取り時期)まで約45日と、温帯に比べ2週間ほど早い反応

3. 一方、クリムソンクローバーは発芽直後に虫害

 毎年9月頃に害虫が発生するため、この時期の播種は避けるべきと学びました。さらに文献によると花芽分化には、ゴロカよりも「低い気温が必要な可能性」もありました。「この品種は隣州のシンブ(標高2,000m~)の方が向いているかもしれないね」DALスタッフのこんな一言が印象的でした。 そこで、ウィリヘルム山麓の農家へ種子を提供し、栽培を依頼することにしました。品種ごとに「適地が違う」という事実が、目の前で明らかになった瞬間でした。試験圃の役割は、演示や成果を誇ることではありません。職員が初めて緑肥に触れ、考えるための場所でした。

・なぜ伸びたのか
・なぜ止まったのか
・肥料? 土? 気温? 品種?

 答えを探す会話が少しずつ増え、技術が「自分たちのもの」になり始めていると感じました。机上の知識は便利ですが、PNGの土が返してくる声は、より深く響きます。

4.適地が異なる可能性の発見と、次の動き

今回見えてきたこと:
・クロタラリアとカラシナは ゴロカでも十分育つ
・ただし 種子採りには土壌養分の蓄積が必要
・クリムソンクローバーは 温度条件を再検証する必要がある

 つまり、「品種は輸入できても、普及には適地選定が必要」という現実です。この点は、文献の時点では見えていなかったことでした。

図1 ゴロカ市内とシンブ州農家圃場の気温の比較 ※ゴロカは月平均、シンブ州は 91618日の平均値

5.次号予告:展示圃へ普及の舞台が動き出す

試験圃は終点ではなく、入り口でした。
この理解を基に、州本部や地区DALスタッフを巻き込み、展示圃(普及のステージ)の準備が始まります。

次号では、
・地区DALとの打ち合わせ
・展示圃の設置
・職員が発言し始めた瞬間
・現地で生まれた反応

など、地域全体で進む「普及の立ち上がり」を紹介していきます。

Vol 2はこちら

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ