JICA海外協力隊の世界日記

パプアニューギニア便り

道に残る赤い跡の正体

こんにちは。PNGコミュニティ開発隊員の小林です。ミルンベイ州政府コミュニティ開発局にて活動しています。

こちらで生活を始めると、いろいろな発見があります。

パプアニューギニアに来て、街を歩き始めた頃、道に赤いシミがあるのをよく見かけました。

「路上に血液が!」と、少し驚いたのを覚えています。

よく見ると、口の中が真っ赤になっている人もいる。いったい何なのだろうと思っていました。

それは、パプアニューギニアで広く親しまれている「ブアイ(buai)」と呼ばれるビートルナッツでした。

ビートルナッツは、アレカナッツとも呼ばれ、南アジアから東南アジア、メラネシア、ミクロネシアなど、インド太平洋の広い地域で見られる文化の一つです。台湾などでは「ビンロウ」と呼ばれています。

パプアニューギニアでは、単なる嗜好品というだけではありません。

老若男女を問わず、多くの人が日常的にブアイを噛んでいます。ビートルナッツに、ライムと呼ばれる石灰や、マスタードの実などを組み合わせて噛むのが一般的です。

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●
ビートルナッツとマスタードと石灰と

噛むことで、気分が高揚したり、覚醒感を得たりすることがあります。一方で、依存性があり、健康への影響も指摘されています。特に、長期的な摂取は口腔粘膜下線維症や口腔がんなどとの関連が明らかになっており、IARC(国際がん研究機関)はアレカナッツを「ヒトに対して発がん性がある」と分類しています。

もちろん、現地の人たちも、体に良いものではないということは知っているようです。

それでも、ブアイは生活の中にあります。

そして、ブアイを噛むと、口の中の唾液が赤くなります。

アレカナッツと石灰などを一緒に噛むことで化学的な変化が起こり、赤色が生じます。そのため、噛んだ後の赤い唾液を吐き出すことになります。

街を歩いていると、道路に赤いシミがある。

公共施設に行けば、「BUAI PROHIBITED(ブアイ禁止)」といった看板を見かけることもあります。

屋内で噛んだ後に赤い唾液を吐き出すことが、施設を汚す原因になるためです。

日本から来た私にとっては、なかなか印象的な光景です。

もしこれからパプアニューギニアに来ることがあれば、少し驚くかもしれません。でも、知っておいてほしい文化の一つです。

面白いのは、ブアイに対する人々の捉え方もさまざまだということです。

ある人は「コーヒーみたいなもの」と言いました。

毎日の生活の中で口にするもの、ということなのでしょう。

●写真


別の人は「ビールみたいなもの」と言いました。

そして、中には「ドラッグみたいなもの」と表現する人もいました。

少し極端な表現にも聞こえますが、それだけ人によって感じ方や捉え方が違うということなのだと思います。

実際、時々、道端でブアイを噛んで、少し酔っ払っているように見える人を見かけることもあります。

一方で、ブアイはコミュニケーションの道具にもなっています。

ある人から聞いた言葉に、「Buai first」というものがありました。

まずはブアイ。

名前を聞いたり、仕事の話をしたりする前に、まずブアイを一緒に噛む。

それくらい、人と人との距離を縮めるものなのだそうです。

実際に、ブアイを分け合いながら会話をする姿は、ここで暮らしているとよく目にします。

私も一度、試してみました。

渋い。苦い。

そして、しばらくすると汗が出てきて、少し酔ったような感覚になりました。

「これを毎日のように噛むのか」と、少しだけ分かったような気がしました。

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●道に散乱するビートルナッツの殻

もちろん、ブアイを噛むこと自体は違法ではありません。

子どもが使用しているのを見かけることもあります。一方で、学校などでは禁止されていることが多いようです。また、仕事中に噛んでいる人もいます。

それが仕事にどのような影響を与えているのか。

集中力や気分、人とのコミュニケーションなど、良い面も悪い面も含めて、もう少し見ていきたいと思っています。

ブアイには、健康上の問題があります。

一方で、ブアイを単純に「悪いもの」と考えてしまうと、そこにある文化や、人と人とのつながりを見落としてしまう気もします。

その土地で暮らす人たちにとって、当たり前の日常の中にあるもの、習慣。

外から来た私には驚きに感じることでも、その土地で育まれてきた歴史や、人との関係が、そこにはあります。

だから、まずは知ること。

なぜ人々はブアイを噛むのか。

なぜ人とのコミュニケーションに使われるのか。

そして、健康や仕事、地域の生活にどのような影響を与えているのか。良くも悪くも。

パプアニューギニアに来て、まだそれほど長くありません。

だからこそ、知ったつもり、わかったつもりにならずに、こうした日常の一つひとつを、自分の目で見ていきたいと思います。

次にこの活動を引き継ぐのは、あなたかもしれません。

パプアニューギニアでは、2026年秋募集(受付期間:9月2日~10月2日)の要請案件を募集中です。
保健医療、教育、コミュニティ開発など様々な分野で、現地の仲間とともに地域課題の解決に取り組むことができます。

●教育関連の案件はこちら
小学校教育(指導経験 2年以上/教諭免許(校種・教科不問)★現地の小学校の子供達に算数を教えます。
青少年活動(教員免許があると望ましい)★現地の小学校での活動です 
体育(教員経験3年以上、競技経験2年以上/教諭免許(校種・教科不問)★体育の教員養成を行います。

●医療関連の案件はこちら
医療機器(実務経験5年以上)★州立病院で活動します。

●環境関連の案件はこちら
環境教育(環境関連活動の経験や知識があると望ましい)★地元の小学校を巡回しながら環境教育を行います。

「自分も挑戦してみたい」と感じた方は、ぜひ募集要項をご覧ください。

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