JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_51 〜My Students〜

 前話(第50話)で私の教育観をお話ししましたので、今回は私の学生観を書き綴りたいと思います。私の配属先のSir Arthur Lewis Community College には、7年間(5歳〜12歳)の初等教育と、5年間(12歳〜17歳)の中等教育を修了した学生が入学しますので、年齢は主として17歳、18歳、19歳。セントルシアでは新年度が9月に始まりますので、日本の高校2年生(2学期・3学期)、3年生(1学期・2学期・3学期)、大学1年生(1学期)に相当する青年が学んでいることになります。4年制大学への編入を目指す一般教養課程をはじめ、教員養成、看護師養成、エンジニアリング、ビジネス、農業など様々な職業教育課程に分かれて、2年間で準学士号の学位を取得することを目指しています。

 お気づきかもしれませんが、セントルシアの初等教育は、日本よりも2年早く始まり、1年早く終ります。中等教育(中学・高校)も、1年早く始まり、2年早く終っています。アカデミックな方向に進み将来は海外大学等に進学する道を選ぶのか、それとも早くから職業訓練を受ける道を選択するのかが、17歳以降、はっきりと分かれていくのです。この教育制度は、階級社会である旧宗主国・イギリスの影響を受けています。中には、TVET(Technical and Vocational Education and Training)教育と称して、中等教育段階から、職業訓練や技術教育に特化するセカンダリー・スクールもあります。また、コンプリヘンシブ・セカンダリーでは、一般教育(アカデミック)と職業教育(TVET)の両方が提供されているのです。

 従って、学生たちのライフ・プランは、とてもしっかりとしています。海外大学に進学して医師を志す、よりレベルの高い教員免許を取る、看護師ライセンスを取得する、技術を学んで農業に従事する、ホスピタリティーを身につけて接客業に就く等々。日本の17歳(高校2年生)と言えば、進路選択の意識がやっと芽生えだす頃。3年生になっても中々進路が決まらない高校生が数多く、中には大学生になっても「失敗したくない」「チャレンジしたくない」と、自らの将来像を積極的に描けない若者さえいるのです。言葉を替えて言うならば、国が成長しつつあるセントルシアの学生は、未来への夢や希望にあふれているのです。これに対して、日本は、特に人口減少問題が深刻で、かつて英国が経験した「斜陽」を迎えつつあるのかも知れません。若者が、将来に対して夢や希望をもちにくい状況に陥っているのです。

 とは言うものの、若者は若者。古今東西を問わず、おしゃれには敏感です。私の活動は、まず学生の名前を覚えるところから始まります。しかし、日本人にとって、イングリッシュ・ネームはとても覚えにくいのです。トムやベンばかりであれば簡単なのですが、KershellやNakimmaなど、工夫を凝らしたモダン・ネームが容赦なく目白押しなのです。私は学生の名前を覚える術として、教室に着席している学生達の全体写真を撮影することにしました。(お化粧を整えずに)写真を撮られることを嫌がる女子大生がいるかも知れないと思いましたので、「名前を覚えるために写真を撮るけど、個人情報だから、嫌な人は顔を覆ってもいいよ。」と事前に声をかけました。すると、案の定、2、3名の女子が手で顔を隠していました。これでは、何の足しにもなりません。また、しっかりと笑顔で映ってくれた女子大生も、数日後には、エクステンションを新調し、お化粧を変えて、完璧にイメージチェンジしているではありませんか。これでは、誰が誰だか、全く分からなくなってしまいます。結論として、写真で名前を覚える作戦は失敗し、これまで通り一人一人、リフレクションを繰り返しながら地道に覚えるしかありませんでした。

 ところが、徐々に関係性が構築されて、愛情を注ぎだすと、モダン・ネームも忘れなくなります。不思議なものですね。夢と希望にあふれる学生ではありますが、もちろん失敗を繰り返し、三歩進んで二歩下がりながら目標に近づいていきます。学生達の、そんなワクワク感とドキドキ感が、たまらなく愛おしい毎日です。

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