JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_54 〜Training Camp in Iyo〜

 JICA海外協力隊の隊員は、海外派遣前に訓練を受けています。私自身、もしこの訓練経験がなければ、今の協力隊活動は成り立っていないであろう、と考えています。読者の皆さんの中には、JICA海外協力隊を志す方がおられるかもしれませんので、今回と次回の2回に渡って、私が参加した2つの訓練について、お話をさせて頂きたいと思います。参考にして下さいね。日記としてはふさわしくないと感じられるかもしれませんが、私は海外滞在中に幾度もこれらの訓練のことを反芻しており、心の拠り所となっているのです。私自身のためにも、ぜひ世界日記として綴っておこうと思います。

 私が参加した訓練は、愛媛県伊予市での75日間のグローカル・プログラム(希望参加)と、長野県駒ヶ根市での73日間の派遣前訓練(全員参加)、の2つです。このうち、今回は、まずグローカル・プログラム(GP)についてお話をしましょう。「グローカル」とはグローバルとローカルを合わせた造語であり、「Think Globally, Act Locally!」(地球規模の問題意識をもちつつ、地域の実情に合わせて行動しよう!)という示唆に富む金言が、あまりにも有名です。GPの目的は、「地域課題を解決しようとする活動に参加することで、地域活性化に関する知識と経験を習得する」「途上国への派遣中に必要なコミュニケーション能力や、PDCAサイクルの実践経験を積む」の2つです。JICA海外協力隊の派遣予定者のうち希望者57名が、全国17箇所の自治体に散らばって、地域おこしの活動を積み重ねました。そして、私は、4名の2024年度2次隊の仲間と共に、愛媛県伊予市で、かけがえのない75日間を過ごしたのです。

 伊予市は、伊予灘に沈む夕陽が美しく、山が海岸線に迫っています。ビューポイントまで登れば、息をのむほどの絶景が広がっているのです。セントルシアも、カリブ海に沈む夕陽が美しく、丘に登りさえすれば、素敵な景色を独り占めすることができます。伊予市とセントルシアを単純に比べることはできませんが、共通点がいくつかあるのです。私が、セントルシア滞在中に、何度もGPのことを思い出す由縁となっています。

 さて、伊予市が抱える課題は、人口減少問題です。魅力的なまちだからこそ、移住者を増やすことで課題解決の道を探ろうとしています。しかし、事業所にとっては、労働者不足が、事業を継続する上で深刻な問題となっています。外国人労働者によって、不足を補おうとしますが、住民として受け入れる態勢が地域コミュニティーに整っておらず、課題が山積しているのです。社長が孤軍奮闘しているのですが、私がお話を聞きに行った際には、「途上国を助けるのも良いんだろうけど、うちの会社も助けて欲しい。」とはっきり言われました。私は、返す言葉がありませんでした。

 そんな中で、日本で働くことを希望するインドネシア人に対して、現地で日本語教室を開講し、渡航手続きから、伊予市周辺での住居探し、仕事探し、そしてコミュニティーに溶け込むところまで、全てをワンストップで、責任をもって面倒見る会社の社長に出会いました。そして、私のカウンターパートも移住を世話する団体の代表者で、移住を検討している人に対して、東京・大阪で移住相談会を開催し、移住体験会の開催から、移住手続き、住居探し、仕事探し、そして地域コミュニティーの一員となるところまでをワンストップでしっかりとサポートをしていたのです。

 地域おこしに活躍する人々のお話を聞く中で、「ワンストップ」の他にも、「地域づくりは人づくり」、「本によるまちづくり」、「移住者による地域おこしのサポート」など、未来への夢や希望を抱くことのできる、手がかりを得ることができました。よそ者としてコミュニティーに入り込むのは、初めての体験でしたが、対話スキルに少し自信をもつことができたのではないかと感じています。

 私にとって、GPで身につけることのできたもう1つのものは、一人暮らしのスキルです。今、読者の皆さんの失笑を買っているのかもしれませんが、海外で2年間の一人暮らしが強いられる隊員にとっては、これは死活問題なのです。実は、私は、大阪生まれ、大阪育ち、大学も大阪、就職も大阪、結婚後も大阪住まいでしたので、一人暮らしをする必要が全くなかったのです。GPで、生まれて初めて、75日間の一人暮らしを経験しました、もちろん、4名の仲間と同じマンスリー・マンション暮らしですので、卵を切らしたり、トイレットペーパーを切らしたりしても、簡単に借用することは可能です。しかし、カウンターパートから「(地域の課題が見えるように)市民の皆さんと同じ目線で生活しよう!」という声かけがありました。私は「一人暮らしも訓練だ!」と考えを改め、トレーニングに励むことにしたのです。

 対話スキル、一人暮らしスキルの幾らかの上達と、4名の仲間との絆を糧に、いよいよ長野県のJICA駒ヶ根青年海外協力隊訓練所での派遣前訓練に乗り込むことになります。

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