2025/12/20 Sat
文化 自然
隊員Gのセントルシア日記_53 〜Light & Renewal〜

セントルシアでは、毎年12月13日がNational Day(国民の祝日)となっています。国名にもなっている守護聖人ルチアを讃える日であり、スウェーデンやイタリアでもSaint Lucia’s Day などとして祝祭が行われます。聖人ルチアは、迫害されるキリスト教徒に光をもたらしたと伝えられており、光の象徴となっています。「光が闇を照らす」伝説が、植民地時代の奴隷制度や、奴隷解放後の黒人差別など、厳しい時代を乗り越えて、独立を果たしたセントルシアの歴史に、重ねられているのでしょうね。また、毎年12月21日または22日にやってくる冬至は、(北半球において)昼がもっとも短く、夜がもっとも長い日であり、もっとも深い闇を象徴している、と言うことができます。従って、12月13日聖人ルチア祭や、12月25日クリスマスは、このもっとも深い闇を乗り越え、再び光をとりもどしていくことを寿ぐ日でもあるのです。セントルシアでは、12月13日の国民の祝日を「Light & Renewal」(光と再生)というテーマを掲げてお祝いをしています。2月22日の独立記念日 や、8月1日の奴隷解放記念日とは趣が異なり、国名が、宗教、歴史、太陽暦と共鳴する、とても味わい深い祝祭日なのです。

この「Light & Renewal」は、前日12月12日の夜(闇)から、イルミネーション点灯や花火などのお祝いイベントが始まります。私自身は、居宅の大家さんに誘われて、「Beach Lime」という粋な夜の野外Potluck(持ち寄りパーティー)を楽しみました。大家さんのエクササイズ仲間が、10名ほど集まって、飲んで、喋って、踊っての宴を、ビーチの闇の中、小さな灯火を頼りに繰り広げます。私は、先輩隊員から譲り受けたたこ焼き器を使って「オクトパス・ボール」を作り、持ち寄ることにしました。現地調達ですので、日本なら簡単に手に入る材料(たこ焼きソースなど)が中々入手できません。レシピをそのまま実現することはできませんでしたが、なんとか代替材料を工夫して、日本のB級グルメを味わって頂くことができたようです。ほっと胸を撫で下ろしました。さて、この「Beach Lime」、私は今回はじめて耳にしたのですが、カリブではよく使われる表現のようです。「ビーチに集まって、のんびり過ごす(Hang Out)」「ビーチで仲間と、まったりする(Chill)」などの意味で使われています。日本人の感覚では「何もしない=無駄」とすぐに結論づけたくなります。しかし、ここカリブでは、「急がない」ことに価値が見出されており、共に何もしない時間が、関係性を育てる良い時間になり得る、と考えられているのです。セントルシア在住、まもなく一年を迎える私ですが、「急がない」ことの良さを、今、少しだけ理解できるような気がしています。

さて、最後にセントルシアの冬至(今年は12月21日)について、お話をしておきましょう。セントルシアは北緯14度に位置しますので、地軸の傾きを23.4度とすると、この日の太陽の南中高度は、90度―(14度+23.4度)=52.6度となります。これは、新潟県長岡市(北緯37.4度)の秋分の日(春分の日)の太陽の南中高度に相当します。日本には「暑さ(寒さ)も彼岸まで」という表現がありますが、セントルシアの太陽は、言わば、秋のお彼岸の地点で折り返して、再び高く、すなわち再び暑くなり始めるのです。どうりで一年中暑いはずですよね。そして、国民の皆さんは、この日を境に闇が再び光をとりもどすことを共に喜び、国名Saint Lucia、守護聖人ルチア、そして自由と独立を勝ち取った歴史への誇りを、共に分かちあうのです。
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