2025/12/24 Wed
活動
隊員Gのセントルシア日記_55 〜Training Camp in Komagane〜

私たち2024年度2次隊は、福島県・二本松訓練所と長野県・駒ヶ根訓練所に分かれて、派遣前訓練を受けました。そして、私は、世界37カ国に派遣される184名の仲間と共に、JICA駒ヶ根青年海外協力隊訓練所(KTC)にて73日間の訓練生としての日々を過ごしたのです。派遣前訓練の目的は、「隊員経験を通じて向上する資質・能力(社会人基礎力・外国語でのコミュニケーション能力・異文化理解と活用力・現場力・リスクマネジメント力・へこたれない力・自己肯定感・社会貢献意識)の開発」です。JICA海外協力隊の目的である「途上国の発展・復興への寄与」「異文化理解の深化と共生」「帰国後の社会還元」を実現するために必要な資質と能力を開発することが謳われています。
KTCでの語学授業は、スペイン語(12教室)、英語(10教室)、ポルトガル語(2教室)、フランス語(4教室)、ヒンディー語(1教室)、シンハラ語(1教室)、キルギス語(1教室)、ロシア語(2教室)、ウズベク語(1教室)で行われました。大まかに説明すると、月曜から金曜までの週5日、毎日5時間の語学授業が、9週間続きました。しかも、どの教室も訓練生は6名以下で、言語によっては1名、2名の教室もありました。集中的かつ効率的なレッスンの様子を想像して頂けるのではないでしょうか。私は、KTCでの英語授業において、計5回の模擬授業を行いました。1回の授業準備に、指導案作成、英語Cue_Sheetづくり、通し練習など、ほぼ丸1週間を費やす苦しい日々が続きました。しかし、PDCAサイクルの中で、先生やクラスメートにフィードバックをもらいながら、何とか私なりに、英語での授業スタイルを確立することができたと思っています。やはり、苦しいところを乗り越えないと、成長はありませんね。
入所当初、退所間際、そして日々の語学授業終了後の時間を利用して、オリエンテーションをはじめ、安全対策、健康管理、異文化理解などの講義が行われました。特に、「無事帰国」を念入りに「すりこみ(Imprinting)」して頂いたような印象を、私自身は強くもっています。JICA海外協力隊派遣60年の歴史の中で、過去の悲しい出来事を教訓として、再発防止の安全対策を積み重ねてきた軌跡の尊さが忍ばれます。私は、身の引き締まる思いで、「無事帰国」のバトンを受け取りました。

訓練所での生活は、いわゆる合宿生活です。一人一人に個室は割り当てられていますが、基本形は共同生活なのです。私は長年、教員として指導する立場にありましたので、共同生活のメリットや注意すべき点を心得ているつもりです。しかし、73日間となると話は別で、私にとっても未体験ゾーンなのです。ワクワク感とドキドキ感が入り混じる中で、合宿生活に突入することになりました。年代が違えば、出身地も異なり、キャリアも様々、その上利害関係が全くない、そんな仲間たちとの共同生活は、とても新鮮でした。しかも、全国から海外協力隊を志して集まってきているので、一人一人が輝いており、刺激的な共同体なのです。日々の語学授業における悩みから、将来の海外派遣に対する不安まで、様々な事柄について、じっくりと話し合うことができました。そして、実の息子や娘より若い訓練生と、友だちになることさえ実現したのです。正直、仲間がいたからこそ、頑張り通すことのできた73日間ではなかったか、と思います。
そんな同期の仲間たちが今、世界各地に散って、協力隊活動に汗を流していることを思うと、自ずと奮い立ちます。現代は、SNSのおかげで、各国で時差はあるものの、仲間たちの活躍の様子を手にとるように見守ることができます。それは、間違いなく自分自身の励みとなっているのですが、実は、ピンチの時に相談できる安心感にもつながっているのではないかと思います。私にとって、かけがえのない隊員仲間なのです。

修了式において、「皆さんは、今から、訓練生ではなく、隊員と呼ばれることになります。」と祝辞を頂いた時の感慨を、私は今も忘れることができません。確かに語学授業に苦しんだ日々もありましたが、手にしたものの豊かさを思うとき、達成感が全てを満たしてくれるのです。入所前は、73日間も頑張れるかどうか不安でしたが、修了時点では、あと100日でも、200日でも、過ごしたいという気持ちになっていました。おそらく、食堂スタッフの皆さんが一日三度心を込めて提供してくださる食事が、毎回とてもおいしかったからでしょう。また、清潔で開放感のある大浴場のお湯が、毎日とても気持ち良かったからでしょう。そして、正直に言うならば、食事の支度や後片付け、そして風呂掃除を、73日間も全くする必要がなかったのです。もう少しで、スポイルされてしまうところでした。居心地が良いのは、当たり前ですよね。感謝あるのみ。
JICA駒ヶ根青年海外協力隊訓練所は、私たちにとって聖地です。今も後輩の皆さんが訓練に励んでいることを思うと、胸が熱くなります。
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