JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_94 〜Relearning Arithmetic〜

 ある日、計算の学び直しのためのワークショップを実施する機会に恵まれました。「計算を学び直したい」という意欲は、事前に伝わってきたのですが、参加者がどれくらいの計算スキルをもっているかは、不明でした。従って、当日は、参加者の計算力を手探りしながら進めるワークショップになります。そこで、幅広いスキルを盛り込んだ教材を用意し、参加者の計算力に合わせて、実施当日に取捨選択しつつ、ワークショップを進行することにしました。
 もっとも大切なことは、その日が初対面となる参加者を、いかにワークショップに引き込むかです。従って、アイス・ブレイクの時間に重きを置きました。驚かれるかもしれませんが、名前や国籍や身分を自己紹介する前に、いきなり雰囲気づくりのゲームを始めたんですよ。2人で対戦する形式で、交互に1から21までの数をカウントしていき、最後に21をカウントした方が負けとなる、単純なゲームです。ただし、単一の数か、連続する2数か、連続する3数か、一度に数え上げる個数を各自が選択しながら進める、というルールを設けました。同期の教育隊員に教えてもらった、とても単純なゲームなのですが、どうやらゲームは、ルールが簡単な方が盛り上がるようですね。

 さて、計算の学び直しのステップは、「九九の表」を確認するところから始めました。「2×2」は、英語では「2times 2」(2が二回)ですので、左手で指2本、右手で指2本を示して、抽象概念を具体的な事象に落とし込みました。「4×2」は、「4times2」(2が四回)ですので、もうひとり助っ人に登場してもらって、ふたりで指2本を4つ用意して、数の概念を象徴的に表現しました。参加者は「2×2=4」「4×2=8」と全く問題なく答えていましたが、抽象概念へのマインズ・オンは貴重な体験ですので、時間をとって視覚に訴えることにしました。さて、ここから先は、アナロジーとして類推する力が期待されます。嬉しいことに、参加者は「5×2(5times2)」(2が五回)や、「6×2(6times2)」(2が六回)についても、頭の中でイメージを膨らませることができたようでした。無事に、第一関門がクリアされたことになります。
 次は、「九九の表」をランダムに出題する、フラッシュ・カードのアプリを自作していましたので、これを使って腕試しです。「教室は、失敗するところだよ。失敗を恐れず、積極的にチャレンジしてね。」「皆さんの脳は、一日一日、どんどん賢くなっているよ。計算で脳を使って、より賢い脳をつくってね。」と、モチベーションを上げる励ましのメッセージを送りつつ、出題への解答を求めました。「4×3」など簡単なものは、遠い記憶の彼方から、何とか呼び戻すことができたようです。ところが、「6×9」あたりになると、やはり苦戦していました。「6times9」(9が六回)と前述のアナロジーとして、イメージできるように助け舟を出すと、見事に正解に辿り着くことができました。もちろん、しっかりと褒めてあげましたよ。

 そして、「2桁に1桁を足し算」「2桁から1桁を引き算」へと進んでいきます。もちろん、「32+6」や「28-4」は、桁上がりや、繰り下げがありませんので、全く問題がありませんでした。ところが、例えば「58+7」は、少し混乱があり、「7を2と5に分け、まず58+2=60とし、その後に5を足す」手法を解説する必要がありました。また、「32-9」についても、「9を2と7に分け、まず32-2=30とし、その後に7を引く」と声かけをする必要がありました。  ところが、不思議なことに、「2桁に2桁を足し算」「2桁から2桁を引き算」の段階になって、筆算を使う場面になると、参加者の記憶ははっきりと蘇ったようです。筆算は、英語圏ではVertical Calculation あるいはColumn Calculationと呼ばれていますが、永く記憶に留まる、とても優秀な計算手続きのようです。前述の「58+7」や「32-9」についても、筆算を使って、桁上がりや、繰り下がりを説明すべきだった、ととても有益なフィード・バックを手にすることができました。  最後に、もうひとつ。「計算を楽しんで欲しい」という思いがありましたので、自作のフラッシュ・カードのアプリには、彼らが明るくなれるような音楽を盛り込むことにしました。義務感や徒労感の中で計算を強いられるのは、健康的じゃないですよね。笑顔あふれる、若者らしい計算ワークショップとなったことを、とても感謝しています。そして、何よりも、「計算を学び直したい」という彼らの尊い想いに、心を打たれました。学び続ける姿、カッコイイよ!

【参考】フラッシュ・カード(自作アプリ)のご紹介

「九九の表」:https://mac-nishiura.github.io/index.html

「2桁+1桁」:https://mac-nishiura.github.io/index1.html

「2桁-1桁」:https://mac-nishiura.github.io/index2.html

「2桁+2桁」:https://mac-nishiura.github.io/index11.html

「2桁―2桁」:https://mac-nishiura.github.io/index22.html

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