JICA海外協力隊の世界日記

セントルシア便り

隊員Gのセントルシア日記_93 〜Under the Sea〜

 長期派遣(任期2年)のJICA海外協力隊員を対象とした、私事目的任国外旅行の制度(年間20日以内)があります。多くの隊員は、私費を投じて任国外旅行を計画し、見聞を広めて、自らの活動に活かしています。私も、今年2月、娘の結婚式に参列するために日本に一時帰国し、12日間任国を離れました。しかし、大好きなセントルシアのことを、より多く知りたいという思いは強く、任国外ではなく、任国内に集中して探究を深めることにしました。1年目は、レイン・フォレストやピトン・トレイルを散策したり、最北端の地を探訪したりしました。また、遠く離れたローカル・コミュニティーを訪れることもありました。セントルシア島の宝島感を、たっぷりと味わうことができたと思っています。2年目は、セントルシア島で未踏の領域であった、カリブ海を探究の舞台としました。第92話でお話しした「Rat IslandへのOpen Water Swim」も、その冒険のひとつです。また、漁船に乗り込んで、ボトム・フィッシングにも挑戦しました。そして、スキューバ・ダイビングの「Open Water Diving Certificate」を取得し、カリブの海深く潜る夢を描いたのです。

 60代からの新しい挑戦ですので、スタートラインに立つまでに、ひとつ乗り越えなければならない壁がありました。医師に処方された薬を服用している場合は、ダイビング講習を始めてもよいかどうかの判断を、当該医師に求める必要があったのです。最初は、正直「少し面倒な手続き」という印象がありました。しかし、謙虚に「医師のゴーサインがあることで、安心して潜ることができる。」とポジテイブに考えることにしました。

 ダイビングのライセンスを取るための講習は、知識や理論を習得するためのE-Learning講習と、海での実技講習に分かれています。E-Learning講習で、特に印象に残っているのは、体内にある気体に関する解説です。副鼻腔内の空気だけでなく、お腹の中に溜まるガスや、虫歯治療の詰めものの経年劣化によってできる空洞についても言及していたのです。それらの気体が、水深が10m増すごとに圧力が1気圧ずつ高まり、それに伴って体積が減少するというのです。従って、副鼻腔内の空気については、鼻をつまんで息を送り、体積を調整する必要があります。(Equalization)また、お腹のガスについては、ダイビング前はガスの発生しやすい食べ物を避けるべきであること。そして、虫歯治療に由来する空洞については、心配であれば歯科医に相談すること、と事細かにアドバイスをしてくれました。

 さて、海での実技講習です。のべ3〜4日のセッションがあります。実技4日目には、Soufriere近くの海で、水深12mのダイビングに挑戦することになりました。Soufriere周辺の地形は、世界遺産であるPetit PitonやGros Pitonをはじめ、火山活動による隆起によって出来上がっています。そして、海底にも、その火山性隆起の延長となる、深さ300mの断崖が広がっています。今回は、水深12mあたりを断崖に沿いながら泳いで、ダイビングの世界を楽しみました。色とりどりの熱帯魚の群れや、不思議な形をした美しい珊瑚はもちろんのこと、なんとウミガメの親子にも出会うことができたんですよ。巨大な水槽を持つ水族館を訪れた経験は何度もありますが、それら全ての記憶を置き去りにするほどの「絵にも描けない美しさ」が、そこには広がっていました。海中でマスクを外して泳ぐ、中性浮力を作り出すために浮力調整具に口から空気を送り込む、バディーのオクトパス(予備の空気源)を使って呼吸する、空気が出続ける(機能不全を想定した)セカンドステージ(空気源)を使って呼吸する、浮力調整具のベストを海中で着脱する、など様々なミッションに、泣きべそをかきながら取り組んできましたが、全てが報われた感じがしました。

 カリブの海深く潜る冒険は、まだまだ発展途上です。安全を第一に考えながら、ダイビングの知識と技能を磨いて、未知なる海の豊かさを愛でる日に備えたいと思います。

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