2025/04/29 Tue
文化 自然
隊員Gのセントルシア日記_11 〜Hummingbird & St. Lucia Parrot〜


南の島は鳥たちにとっても楽園です。朝、鳥の鳴き声で目が覚めた日は、何か良いことが起こりそうな予感がするくらい、気持ちの良い1日の始まりになります。美しい鳥たちが心地よさそうに、風の中を自由に飛びまわる姿を見ていると、「次に生まれ変わるときは、鳥でもいいんじゃない?」とついつい大人の空想を膨らませてしまいます。私は、日本にいる奥さんと、毎日欠かさずに、ビデオ通話で生存確認をしています。時差が13時間あることを考慮して、セントルシア時間の毎朝8時(日本時間の夜9時)にビデオ通話を開始するのですが、若い隊員からは「毎日、よくそんなに喋ることがありますね。」と言われます。(どうやら、彼らが遠く離れたステディと連絡を取るのは、週に一度か二度くらいのようです。しかし、一回あたりが1時間、2時間と続くのです。「よくそんなに喋ることがあるね。」はこちらのセリフですよね。)ビデオ通話ですので、私は奥さんに、喋るというよりは、鳥の鳴き声や、太陽の眩しさ、海の青さ、木々のたくましさを楽しんでもらっています。スマートフォンの小さな画面ですので、視覚よりも、やはり聴覚に訴える方が効果的なようで、「鳥の鳴き声が、綺麗ね!」と満足げなレスポンスを、いつも返してくれます。鳥たちは、南の島らしさを地球の裏側まで届けてくれるのです。日本の夏であれば、蝉時雨が暑い夏をより暑くしてくれるのですが、常夏の国・セントルシアに(蝉はいるようですが)蝉時雨はありません。美しい鳥のさえずりが、蝉のあふれる生命力にかき消されることはないのです。ご心配は無用ですので、念のために申し添えておきます。


Pigeon やHeron やBlack Birdなどを、特に数多く見かけますが、その中でも私のお気に入りは、Hummingbirdです。日本では「ハチドリ」と呼ばれており、ハチのようにブンブンと羽根を高速で動かして、ホバリングしながら花の蜜を吸う鳥です。その、空中で軽々と静止し、甘い蜜にくちばしを伸ばす姿が、なんとも愛らしく、かつ美しいのです。もちろん、Hummingとはハミングのことですので、ネイティブには羽音が鼻歌のように聞こえているのかもしれません。敏捷性があり、花から花へと瞬時に動き回りますので、素人には写真撮影をすることがとても難しい鳥です。しかし、出会った一人のセントルシアンは、「手にもったパンを、Hummingbird がつつきにくる」と言うではありませんか。なんともまぁ、羨ましい話です。私の居宅の庭にも、Hummingbird がやってきますので、2年の任期の間になんとか手なづけたいものです。成功したら、またレポートしますね。
私がこの鳥に心を奪われる理由が、もう一つあります。私が青年時代を過ごした昭和後期には、まだカラオケがなく、仲間が集まって歌を唄う際にはギターによる生伴奏がつきものでした。もちろん、多くの若者の例に漏れず、私もギターを購入して、練習を始めました。そして、その当時、ピックガードにハチドリが描かれているYAMAHAのHummingbird というギターがあり、とてもおしゃれで、私たちの憧れの的になっていたのです。日本では見ることの難しいHummingbird に、このセントルシアで出会って、一心にギター練習に励んだ日々の情熱を、思い出そうとしているのかもしれません。(ハチドリの画像はフリー素材です)


セントルシアの国鳥は、St. Lucia Parrotであり、山岳地域の熱帯雨林に生息しています。乱獲やハリケーン被害の影響で、1970年代半ばには絶滅の危機に瀕したこともあったようですが、現在は保存意識の高まりと法整備によって、生息数が300まで回復したとのことです。ただし、依然として絶滅危惧種であることに変わりはありませんので、今後も教育プログラムなど、更なる取り組みが期待されるところです。基本的に緑色の鳥なのですが、頭や顔は青、首の前部分は赤、翼は赤味がかったスペクトラム、尻尾は黄色、下半身は黄色っぽい緑で、胸の辺りは黄金色といった具合に、カリビアンに愛されること間違いなしの、とてもカラフルな色合いをしています。
国章には2羽のSt. Lucia Parrotが描かれており、国のモットーである「The Land・The People・The Light」をサポートする象徴としての役割が与えられています。南の島・セントルシアにしか生息しない鳥・St. Lucia Parrot が、国民の誇りとなって、人々を結びつけているのです。西アフリカやインドなど、様々なルーツをもつ人々が、オンリーワンの存在に誇りを感じ、自らの励みとする。ノーベル賞受賞者や金メダリストが、国民の誇りとなり、力となっている文化と同じ香りを感じます。(セントルシアパロットの画像はウィキペディアのフリー素材です)
SHARE